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「ジン様は王位を継がれて、すぐにお触れを出されました。


 重い税を引き下げ、飢えていたものたちに食料庫から食料を分け与え、望めば誰でもどのような職種にでもつけるよう、命じられたのです」


 朝、そんなことを誇らしげに語ってくれながら、髪をいてくれるのは古参の侍女だ。


 それは立派な王様だな、と思いながら、アローナは聞いていた。


 開け放たれた窓からは心地よい風が入り込み、よく手入れのされた庭が見える。


 部屋くらいの広さがある廊下に出ると、ちょうどアハトがこちらに向かって歩いてくるところだった。


「……アハト様」

とちょっと困りながら言うと、アハトもまた、微妙な感じにこちらを見る。


「しゃべれるようになったのですな」


「そうですね」


 沈黙があった。


「……アッサンドラのアローナ姫だったのですな」


「そうですね」


 二人で向かい合ったまま、また沈黙した。


 やがて、

「……申し訳ございませんでした」

とアハトが詫びてくる。


「いえいえ。

 アハト様はなにもご存知なかったわけですから」


 私がフォロー入れるのも変だなと思いながらも、一応、入れてみた。


「私を恨んでおられるのではないですか? アローナ姫」


 そう問われたが、アローナは、いや~、と苦笑いし、

「よく考えたら、アハト様は私の恩人のような気もしてるんですよね」

と言った。


「恩人?」

と訊き返される。


「あのまま何処へともなく、売られていてもしょうがなかったわけですから。

 そう考えると、此処に連れてきてくださった恩人のような気もしているのです。


 そういえば、屋台でお菓子も買っていただいたことですしね」


 ありがとうございます、とつい、笑いかけると、アハトは困惑したような顔をし、


「いや、礼を言われても困りますな。

 私はただ、遊郭に並んでいた娘の一人を買っただけ。


 八百屋の店先で、じゃがいもひょいとカゴに入れて買ったのと同じですからな」

と言ってくる。


「アハト様、八百屋なんて行かれるんですか?」


 そう思わず問うたとき、

「今の話で気になるの、そこだけですか」

と言う声がした。


 振り向くと、フェルナンが立っていた。


 アローナはちょっと困った顔で二人を見る。


 フェルナンを脅しているのはアハトだという話を思い出したからだ。





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