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本物であったのかっ



「姫様っ」

とアローナの従者一行の先頭にいた、若く可愛らしい侍女がアローナに駆け寄る。


 玄関ホールで抱き合って再会を喜ぶ二人を見ながら、ジンは、


 なんと。

 本物のアローナ姫であったのか、と思っていた。


 さすが高級娼婦は違う。


 まるで深窓の姫のようだと思っていたのだが。


 ほんとうに姫だったとは……。


「ご無事でよかったっ、姫様っ。

 ほんとうに申し訳ございませんっ。


 私が目を離した隙にっ」

とアローナにしがみ付いた侍女が泣き、アローナは微笑んでその背を軽く叩いてやっている。


 ほんとうにアローナ姫なのか。


 ……だとすると、少し困ったことがあるな、とジンは思っていた。


 アローナは一応、父の許に嫁いできている。


 実質権力を失ってはいるのだが。


 大丈夫だろうか。

 アローナが要るとか言い出さないだろうか。


 アローナが父に、ではなく、『メディフィスの王』に嫁いできたというのなら問題はないのだが。


「姫を保護していただきありがとうございます」

とその侍女は城のみんなに頭を下げたあとで、


「で、この方は?」

とこちらを見て、アローナに問う。


「あ、メディフィスの新しい王様、ジン様よ」


 そうアローナに教えられた侍女は、

「そうですか。

 この方が今のメディフィスの王……」

とアローナに向けていたのとはまったく違う、鋭い瞳でこちらを見る。


 その辺の間者より油断ならない顔つきに、ビクリとしたとき、


「お見受けしたところ、いささか頼りないような雰囲気ですが、大丈夫ですか?」

と侍女は突然、アローナに向かい、言い放った。


 侍女、毒舌っ!

とフェルナンと二人、衝撃を受ける。


 うちの国なら、切って捨てられているっ!


 いや、かなりの毒舌なフェルナンが野放しなので、うちも似たようなものかもしれないが。


 ともかく、我が身にかえてもアローナ姫を守ろうという気概が感じられるのは良いことだ、と罵られながらもジンは思っていた。


 まあそのわりに姫と似て、抜けているところがあるらしく、盗賊に姫を連れ去られたりもしているようだが……。


「姫様がお世話になりました」

と一応、こちらに頭を下げたあとで、侍女は、


「でも、よく考えたら、姫様は前王に嫁がれたのですから、ジン様がどのような方だろうと関係なかったですね。


 代替わりしてしまったのなら、此処に用はないですし。

 帰りましょうか」

と言うと、ささ、と手を引き、アローナを連れていってしまおうとする。


「ま、待てっ」

とジンは思わず、アローナの手をつかんでしまい、侍女に睨まれた。


「アローナはメディフィスの王の許に嫁いだのだろう。

 このまま此処にいればいいではないか」


「前王に嫁いだのです。

 条件が変わりました。


 今、待っている間に、新しい王様は人格者で理不尽なことはなさらないと伺いました。


 非道な王でないのなら、攻め入られないよう、姫を人質花嫁として差し出さなくてもいいわけですし」


「で、では、私は非道な王となり、姫にも理不尽なことをしよう」

と思わず、アローナの腕をつかんだまま言って、アローナに、ええっ!? という顔をされてしまった。


「ほら、姫様も嫌がっておりますので、連れて帰りますね」

と本当に帰ろうとするので、思わず、


「待てっ」

とまたジンは叫んでいた。


「何故ですか」

と侍女に問われ、うっ、とつまる。


 何故と問われると困るな、と思いながらも、ジンは言った。


「……メ、メディフィスとアッサンドラの友好のために、この結婚は進めるべきだ」


「人質取って友好はおかしいと思います。

 少なくとも、条件が変わったことをアッサンドラの王にお伝えし、判断いただく必要はあると思いますが。


 メディフィスの前王は御存命なのでしょう?


 そちらに嫁ぐよう言われるかもしれませんし」


 信頼する侍女のその言葉に、ひっ、とアローナが怯える。


「なんだと?

 私より、あのエロ大魔王のジジイの方がアローナにふさわしいと言うのかっ」


「それ、あなたのお父様ですよね~。

 エロ大魔王……」

とフェルナンが後ろで呟いていた。





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