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そっちを先に言ってくださいっ!



「フェルナン様を書面で脅しているのはアハト様ですよ」

とシャナは言う。


「えっ? そうなんですか?」

とアローナが口の動きで返事をすると、


「フェルナン様は自分が誰に脅されてるのかもご存知ないみたいですけどね。

 ですので、どうか、私にアハト様を殺せとご命じください」

とシャナは言ってくる。


 いや、いきなりか……と思いながら、アローナはシャナに訊いた。

 

「あの、そのフェルナンのいとこさんは今、どうなってるんです?」


「普通にしてると思いますよ」


 はい?


「アハト様は、お前のいとこがどうなってもいいのかと手紙で脅しただけです。

 なにもしていません。


 それでフェルナン様がビビッてなにかしてくれればラッキーくらいの感じみたいです。


 そもそもフェルナン様が王を殺すとも思ってないんじゃないですか?


 ただそれで、王と腹心の部下のフェルナン様の間に亀裂が入ればいいと思ってるだけなのでは?」


「アハト様は、フェルナンのいとこになにかする気はあるんですかね?」


「ないんじゃないですか?」

とシャナはあっさり言った。


「フェルナン様の一族ともめたくはないでしょうから。

 特に今は。


 自分が連れてきたあなたを王がいたくお気に入りですからね。


 むしろ、今、余計なことすんなよ。

 新しい王に気に入られるかもしれないのに、とか思ってそうですよね」


「……じゃあ、アハト様を殺す必要ないんじゃないですか?」


「……ないかもしれませんが。

 仕事ください」

とシャナは言う。


 なにかが切実そうだ。


「あのー、シャナさんは、殺す以外の仕事はできないんですか?」


 そうアローナは訊いてみたが、シャナは少し考えている風に白い天井を見上げたあとで、

「それが私、他の仕事はしたことがないんですよね」

と言ってきた。


「あなたがたがアハト様を殺さないのなら、今にも誰か殺しそうなアハト様に紹介状を書いてください。


 アハト様、王に気に入られたら、今度は、王のために暗躍して、政敵を始末させそうですからね」


 それもどうなんですかね……。


「えーと……。

 ちょっと考えさせてください」

とアローナは言った。


 すぐに断らなかったのは、この人、敵に回ったら怖そうだなと思っていたからだ。


 今も気配もさせずに、この部屋に現れたことだし、と思いながら、ふと気になって、アローナは訊いてみた。


「あの、いつからいたんですか?」


 シャナは小首を傾げたあとで、

「……ジン様があなたの頬に口づけたところは見てないです。

 そのあとくらいからですかね」

と言ってくる。


 見てますよね……。


 気をつかってくださったのでしょうかね、と思うアローナにシャナが言ってきた。


「まあ、お早めにご決断を。

 革新的な考えを持つ、年若き王を疎ましいと思っているのは、アハト様だけではありませんから。


 すでに他の者が雇った刺客が放たれているかもしれません。

 そういえば、さっき、天井裏で顔馴染みの刺客と出会いましたしね」


「そ、それはいつですか?」


「だから、さっき、ジン様がアローナ様の頬にキス……


 したあとですかね?」


 ……前ですかね?


 っていうか、その情報を先に言ってっ、と思いながら、アローナは部屋を飛び出した。


 広い廊下に飛び出すと、見張りに立っていた衛兵がギョッとした顔をする。


 ジン様ーっ!

と叫ぶが声が出ない。


 気がついたら、横をシャナが走っている。


 もっと早く走れるのではないかと思うが、アローナに合わせているようだ。


「雇ってくださったら、代わりに叫んで差し上げてもいいですよ」


 いいっ。

 なにかで音を立てるからっ、とアローナは口をぱくぱくさせて伝える。




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