俺は掘ら◯る趣味も掘◯趣味もない
間違った拷問の知識を正した後、出会って二日目にしてようやくマトモな語らいの時間が訪れた。
「それで美月さんは何をしてる人なんですか?」
「もしかして姉さんの事知らないの!?」
柚月が驚きの声を上げるが、お前には聞いてないとばかりに無視をする。
「自分で言うのは少し気恥ずかしいな」
「あ、じゃいいです」
そう言って俺はスマホでヤ◯ーを開き、羽山美月と入れて検索した。
「今言おうとしてただろう!?少しぐらい待つのが礼儀だろう!!」
「内閣総理大臣……だと……!?」
美月さんが何かを言っているが、耳に入ってこない。それよりも衝撃の事実に驚愕した。へー、24歳なんだ……。若いとは思ってたがこの歳で総理ってこの人どんだけ優秀なんだ!?って話だよな。
「呆れましたわ……その反応本当に知らなかったのですね」
「うるさい、黙れ。部外者は口を挟まないでくれ」
「なっ!?」
「お前ら、私の前でイチャイチャするとはいい度胸だな……潰すぞ?」
柚月をぞんざいに扱っているだけなのだが、美月さんの目にはそうは映らなかったらしい。
納得いかなかったが無視すると面倒くさくなりそうだと思い、とりあえず形だけの謝罪をしておいた。
ここに来てようやく気になっていた事を質問する機会に恵まれた。このチャンスを逃す手はない。
「美月さん、今日学校あるんだけど……」
ここぞとばかりに早速切り出した。
「流石にここからは通えないだろう?申し訳ないが転校してもらうつもりだ」
別に仲の良い友達や彼女が居たわけでもないので特に問題はない。だが、どこに通う事になるのだろうか?
「それで俺はどこに通う予定?」
「一応、近くの共学の私立高校を予定している。ただ、一つ確認したい事がある。前の学校では告白されたりはしてないよな?」
「え?普通にされた事あるけど……?とは言っても、先輩からばかりで同級生はなかったな……」
告白してきてくれる先輩に、可愛い子が居なかったんだよな……。過去の出来事に想いを馳せていると、鋭い殺気を感じた。
見ると、美月さんが目を細めていた。そして非情な決断が言い渡される。
「共学はなしだ。男子校に編入させる」
「な、何だって……」
ふざけるな、目の保養のない学校生活なんて暴挙が罷り通るはずがない!!ここは断固拒否だ!!
「姉さん、私の学校では同性同士で恋愛をする人もいらっしゃいます。和弘さんも可愛らしい顔をしてますから……もしかしたら……」
気色の悪い事を言わないでくれ。男に掘ら◯る趣味も掘◯趣味もないぞ俺は。
だが、予想外の援護に浮き足立つ。柚月いいぞ、もっと言えっ!!俺の役に立てる栄誉を与える、何としても男子校は回避してくれっ!!
「そうか、柚月は詳しいな。よく教えてくれた、礼を言う」
潮目が変わった。俺は勝機を見出した。
「よし、通学回数がほぼない通信にしよう」
ちくしょうぅぅぅぅぅ、勘違いだったぁぁぁぁ〜!!
「姉さん、ナイスアイデアです」
柚月、貴様ぁぁぁぁぁぁぁ〜!?お前の入れ知恵のせいで予想の斜め上に話が進んだだろうが…どうしてくれるんだよこの惨状。俺は親の仇を見る様に柚月を睨むが、そんな俺を見て満足気に笑みを浮かべている。
コイツ性格悪すぎるだろう……。
「美月さん、考え直してくれ。学校生活で友人との間で築かれる人間関係こそが社会に出た時に役に立つと思うんだ。勉強よりも大切な事がある。その機会を俺から奪って良心が傷んだりしないのか!?」
「ふむ、確かに一理あるな……。柚月やっぱり学校に……」
よし、良心の呵責に苛まれた。これは勝てる……勝てるぞ!!
「姉さん、法案通すのに集中して他の事をほったらかしてたでしょ?今からその埋め合わせが待ってると予想されます。そうなるとこれから忙しくなりますでしょ?」
「うっ……」
「通信ってオンライン学習で事足りるから、出張が入っても和弘君に付いてきてもらったり出来るんですよ。どうです?これでも魅力を感じませんか?」
「かー君と一緒……ごくりっ」
美月さんが『お主も悪よのぅ』の代名詞で有名な越後屋よろしくの悪い笑みを浮かべた。
まずいっ!?このままでは意見が翻るかもしれない。何とか手を打たないと……。
考えろ、人生のターニングポイントだぞ俺。お前の頭は飾りか?今使わないでいつ使うと言うのだっ!!追い詰められた俺は己を鼓舞する。
「通信の高校がいいだろ?」
「そうですね…通信がいいです……」
はい、手遅れでした……。人生詰みました、俺氏お疲れ様でした……。
過去の投稿を見直してたら、続きが書きたくて4年ぶりに更新しました。昔読んでくださってた方々の目に留まると嬉しいのですが……。