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綺麗なお姉さん襲来

 強制主従契約保護法、これは行き過ぎてしまった男尊女卑の結果が生み出した女性の為の女性による女尊男卑の法律である。


 この法律が制定されたのは数日前の話で、現総理大臣でもある何とかって人が強行で推し進めたという話だった様な……気がする。


 え?総理大臣の名前を知らないとか、政治に興味がなさ過ぎるって?

 この国が抱える老後問題を苦慮したら、政治よりも他にやらなければならない事はたくさんあるだろう……。某サイトに動画を上げるとか…はたまた別の某サイトに小説を投稿するとか。

 社畜になって使い潰される人生なんてまっぴらごめんだ。とにかく俺は忙しいのだ、政治になんか全く関心がないといい。


 少し話が脱線してしまったが、冒頭の胡散臭い法律の話に戻ろう。この法律で結ばれた男女は、国により強制的に主従関係を結ばされてしまうらしい。

 この場合の主人は女性であり従者は男性となるらしいが正直そんな法律はこのご時世にいかがなものだろうかと思う。


 え?何故政治に関心のない俺が真面目に語っているかだと?


 今、俺が握っている紙きれがまさにそのふざけた法律を遂行しろという通知書に他ならないからだよ!!


『津鷲雅弘、貴殿をこの度羽山美月の従者として認定する。尚、主人の命令は絶対でありそれに逆らえば処罰される事となる。他の細かな規則に関しては割愛するが貴殿の人生が素晴らしきものとなる事を祈っている』


 書かれているのはたったそれだけ……。細かな規則は割愛って書いてるけど、国の文書がこんな手抜きでいいのか?いや、いいわけないだろう……とツッコミを入れてしまったのが少し前の話。


 状況を整理してみたのだが、俺はこの名前すら聞き覚えのない女の下僕になれって国から命令されたって理解でいいんだよな。

 そうかそれなら仕方な……んなわけあるか!!思わず受け入れてしまいそうになった自分にツッコミを入れてその紙を地面に叩きつける。空気抵抗の加減で、紙が一度くるりと回転する演出が腹立たしかった。


 だいたいこの羽山美月って誰だよ?こんなふざけた制度に選ばれる時点で、どうせ俺と同じ様にパッとしない奴なんだろう。

 自分で言って切なくなるが、俺は別に容姿に優れているわけでも、家が金持ちなわけでもない。 

 そんな俺が選ばれた理由は分からないが、どうにか回避できないものだろうか……。

 そんな風に考えていると家のチャイムが鳴った。


 玄関ドアの覗き穴から外を見ると、そこには誰も居なかった。

 怖い話とかに出てきそうな展開だが、今は真昼間なのでその心配は必要ないだろう。

 だが怪しすぎる……正直ここは無視をするのに限るのだろうが、この溢れ出る好奇心を抑える事は出来るのか?答えは否である!!


 俺は念の為にドアチェーンを掛けて、ゆっくりとドアを開く。すると、ドアが凄い勢いで開かれチェーンが千切れんばかりにピンと張った。


「ちっ、ドアチェーンとか小賢しい真似をしやがって」


 一応言っておくと、こんな汚い言葉遣いだがドアの向こうから聞こえてくるのは女の声である。


「ごほん。観念して早くここを開けなさい。津鷲雅弘、あなたを迎えに来ました。3秒以内にここを開けなさい。3・2・1…はい、時間切れ。造反の意思有りとみなし今より強制突入をします」


 ドアの向こうの女はそれだけ言うと、ドアの隙間に木材を通して閉まらない様にすると、チェーンを工具で瞬く間に切断した。その間5秒とかかっていない。間違いない、これはプロの技だと瞬間的に悟った。

 開かれる我が家のドア。その流れる様な展開に何が起きたのか理解できない。


「まったく……手間かけさせるんじゃないわよ、潰すわよ?」


 開いたドアの先には……綺麗なお姉さんが、こちらを睨みながら仁王立ちしていた。どこをとは言ってないが、『潰す』のパワーワードもそのあまりの迫力にマイサンがキュッとした。大切なものを隠す様に、手を当てて前屈みになる。


「あの……どちら様でしょうか?」


 少し情けない格好ではあるが、このまま会話を続けよう。


「はぁ?この顔見てなんで気付かないのよ。家にテレビはないの?って今点いてるじゃない」


 そう言って無遠慮に玄関から部屋の中を覗いてくる。距離が縮まり、良い匂いが鼻をくすぐる。香水の香りだろうか?


 少し落ち着きを取り戻した俺はお姉さんをマジマジと観察する。

 肩まで伸びた真っ直ぐな黒髪、特徴的な猫目はしっかりとした二重で少しだけつり上がっている。

 少しだけキツくも見えるが、その瞳がこちらを睨んでいる姿にゾクッとしてしまった。


 一言で表現するなら美人。少し複雑に言うなら目も覚める様な美人といったところだろうか。複雑に言えたかどうか自信はないが、まぁそういう感じだ。


「それはまぁ……テレビぐらいはウチにもありますけど……」


ポリポリと頬を掻きながら、質問に答えたのだけど、これがまた彼女の逆鱗に触れたらしい。


「ガキがいちいち口答えするんじゃないわよ。本当に潰されたい様ね」


そう言って手に持っていた工具を開いたり閉じたりする。こめちゃくちゃ怖いんですけど。

 そもそも今の俺の発言にそんなに怒る要素あったか!?


「アンタのせいで話が全く進まないじゃない。それで政府からの通達書はもう見たかしら?見てないとかふざけた事を言ったら潰す」


 潰す以外に言う事ないのだろうか?脅し以外なんでもないですよね、それ……。


「えっと、一応目は通しましたけど」


「それなら話は早いわね。最低限どうしても持っていきたい物だけ纏めて3分後に家を出る準備をしなさい。残った荷物はこちらで処分するわ。始めっ!!」


「ちょっと!?いきなりそんな事を言われても意味が分からないんですけど!?」


「あと2分50秒……」


ダメだ、この人こちらの話を聞く気がない。


「あと1分30秒……」


 なんか1分近く一気に削られた!?さっきから思ってたけど、この人せっかち過ぎるだろ!!

 俺は持っていかないといけない物を取りに部屋に戻る。


「えっと…通帳と印鑑と…あとなんだ…?親父から貰った時計も持っていかないと……」


「時間よ。行くわよ」


「いや、まだ3分は絶対に経ってないかと……」


「私が時間と言えば時間なの。もうここには二度と戻って来れないわ。私も鬼じゃないから最後にこの光景目に焼き付ける時間を与えるわ……はい、終わり。行くわよ」


 いや、あなた言ってる事めちゃくちゃですからね?鬼じゃないではなく、あなたは間違いなく鬼だ!!と内心で思うものの、怖くて声に出す事は出来なかった。


そしてそのまま車に乗せられて連行されるのだが道中で大切な事を思い出してしまった。


急いでいたから学校の制服を忘れた。今更取りに帰りたいとは言い出す事も出来ず、隣で目を閉じて座っているお姉さんに気づかれない様に、俺は小さく溜息を吐いた。



連行された先は、見上げる程高いタワーマンションだった。これ何階まであるんだ?


「すげえ……」


「別に大した事はないわ。行くわよ」


 そう言ってエントランスホールに向かうお姉さん。俺はその後を小走りで追いかけた。


 そのままエレベーターの方に向かって歩き出すのかと思えば、向かう先に違和感を覚える。

 どうやら防火扉の方に向かっているが、あっちには何があるのだろうか?黙って後を追うのだが扉を開けた瞬間、俺は言葉を失う。


 階段だと……!?俺が驚いている事などお構いなしにお姉さんはそのまま階段を上っていく。

 ここ、タワーマンションだったよな。せっかちなのはもう理解したけど流石に階段で上るのは流石にやり過ぎだろう。

 どれだけ上るつもりだと戦々恐々としたが、それは杞憂に終わる事となる。


 お姉さんの部屋はまさかの2階でした。

 普通ですよ?タワーマンションって言えば眺望を楽しむ為に買ったりするもんじゃないですか……。

 高層階をイメージするし、めっちゃ期待してしちゃうのは不可抗力でしょ?俺は少しだけガッカリした表情かおを浮かべお姉さんの部屋へ続く廊下を歩いた……。


読んでくださってありがとうございます。こちらはまったり更新予定の作品となります。

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