ぼっちな僕
視えないはずの彼女が僕にも視えなくなってから、数日が過ぎた。
……と、考えたところで、僕は思わず皮肉に口元を歪めてしまう。
僕は、何を当たり前のことを考えているんだろうか。
視えないものが視えないということがそうであるように。
彼女が視えない……隣にいない。
そんな日々こそが、僕にとっての日常だったはずだ。
彼女と過ごした時間は、半年にも満たない、わずか数ヶ月の間。
たったそれだけの時間のはずなのに。
いつのまにか僕にとって――彼女は、かけがえのない存在になっていたようだ。
誰のことも必要とせず、誰にも必要とされない。
そんな、一人ぼっちな僕だったけれど。
彼女と関わることで――良くも悪くも、変わってしまったのだと思う。
客観的に考えると、なんと間の抜けた響きだろうと苦笑してしまうが……。
彼女は、所謂『幽霊』だった。
常に明るく、朗らかで。
幽霊に対してこう表現するのは不適切なのだろうが。
彼女は、いつも生き生きとした表情で、笑うのだった。
そんな彼女が、僕にも、誰にも視えなくなって、数日が経過していた。
いま彼女がどこにいて、どうなっているのか、僕には何も分からない。
無事に成仏し、あるのかどうかもわからない天国へ行ったのか。
はたまた単に僕の前から消えただけなのか、それ以外の理由があるのか――本当に、何も分からない。
ただ、彼女ほどの善人が、地獄に行くようなことはないはずだと、僕はその点についてだけは確信している。
そして――僕は、自分自身の気持ちをなんと言い表せば良いのかも、分からないでいる。
僕の前から、或いは隣からいなくなってくれと願っていた彼女の喪失を、喜んでいないことだけは確かだ。
だから。
僕は自身の気持ちと向き合うために。
この感情から、目を背けないために。
彼女と過ごした日々を、僕はこれから思い返そう。
一人ぼっちな僕と、その隣に佇んでいた幽霊彼女の過ごした日々を――。




