表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

ぼっちな僕

 視えないはずの彼女が僕にも視えなくなってから、数日が過ぎた。


 ……と、考えたところで、僕は思わず皮肉に口元を歪めてしまう。

 僕は、何を当たり前のことを考えているんだろうか。

 視えないものが視えないということがそうであるように。

 彼女が視えない……隣にいない。

 そんな日々こそが、僕にとっての日常だったはずだ。


 彼女と過ごした時間は、半年にも満たない、わずか数ヶ月の間。

 たったそれだけの時間のはずなのに。

 いつのまにか僕にとって――彼女は、かけがえのない存在になっていたようだ。


 誰のことも必要とせず、誰にも必要とされない。

 そんな、一人ぼっちな僕だったけれど。

 彼女と関わることで――良くも悪くも、変わってしまったのだと思う。


 客観的に考えると、なんと間の抜けた響きだろうと苦笑してしまうが……。

 彼女は、所謂『幽霊』だった。


 常に明るく、朗らかで。

 幽霊に対してこう表現するのは不適切なのだろうが。

 彼女は、いつも生き生きとした表情で、笑うのだった。


 そんな彼女が、僕にも、誰にも視えなくなって、数日が経過していた。


 いま彼女がどこにいて、どうなっているのか、僕には何も分からない。

 無事に成仏し、あるのかどうかもわからない天国へ行ったのか。

 はたまた単に僕の前から消えただけなのか、それ以外の理由があるのか――本当に、何も分からない。

 ただ、彼女ほどの善人が、地獄に行くようなことはないはずだと、僕はその点についてだけは確信している。


 そして――僕は、自分自身の気持ちをなんと言い表せば良いのかも、分からないでいる。

 僕の前から、或いは隣からいなくなってくれと願っていた彼女の喪失を、喜んでいないことだけは確かだ。


 だから。

 僕は自身の気持ちと向き合うために。

 この感情から、目を背けないために。


 彼女と過ごした日々を、僕はこれから思い返そう。


 一人ぼっちな僕と、その隣に佇んでいた幽霊彼女の過ごした日々を――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ