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第08話 見極め

※かなり久しぶりの更新です。間があいてしまい申し訳ありません!ちゃんと完結まで書ききりますので気長に応援宜しくお願い致します。

「──お前が『死神』か?」



 主要な種族の長が眼前に集まる中、そう問いかけて来たのは赤い顔に長鼻の男。一目でわかる、天狗族だ。山伏の様なその風貌は、俺の思い描いていた天狗その物。樹海上流(上位)の種族でもあるプライドだろうか。些か、態度がデカい様な気もするが。


 チラリと傍らに目を向ける。俺は、キレずに我慢しているジンを見てホッとした。とうやら、さっきの釘が効いている様だ。


「ああ。俺が、真人……『死神』だ。まぁ、自分でそう名乗った事は無いんだけどな」


 若干、中二的な二つ名が照れくさい。すると、天狗の後から小柄な狸耳の少女、クランが姿を現した。


「紅桜、あんたが人間の下に付くなんてね……いよいよ、焼きが回って来たんじゃない?」


 小馬鹿にする様に、フフンと鼻を鳴らしてコンに絡む。そう言えば、コンも以前は『紅桜』と名乗っていたんだったな……。『死神』と言う呼ばれ方に対する気恥ずかしさが、少し和らいだ様な気がする。紅桜(こいつ)に比べたら、まだマシだ。しかし、当のコン(本人)は、意にも介さずにクランに答えた。


「フン! あたしはもう、紅桜(その名)は捨てたんだよ! それにもう、(あんた)なんかは眼中に無い。ご主人様の凄さも理解出来ないなんて、とんだバカ狸もいたもんさね」


「な、なんですってぇ! たかが狐の分際で、この四代目刑部狸(ぎょうぶたぬき)、クラン様を馬鹿にするつもりっ?!」


 鼻にもかけられずに見下され、クランはコンに食ってかかる。しかし、コンは一向に取り合おうとしない。すると、その様子を見ていた天鬼が間に入った。


「これ、大人しくせんか! 今更、お主等(狐と狸)喧嘩(化かし合い)なんぞ見とお無いわ。それに、クラン(お主)等の目的は真人殿(死神)の力を見極める事ぢゃろうが!」


 子供の様に喚き散らすクランを諌め、天鬼は周囲でざわ付く連中までも黙らせた。一気に、辺りを沈黙が包み込む。


 そんな中、最初に口を開いたのは妖精族の族長だった。手の平程の大きさで、羽根の生えた姿は正しく妖精(フェアリー)。パタパタと俺の前を飛び回り、甲高い声で喚き始める。


「私は妖精族の族長、アリスよ! あんたが『死神』ね? 随分、偉そうにしてくれてるじゃない。人間の分際で私達を呼び出すなんてさ! 大体、あんたの実力(ちから)だって本当かどうか分かったもんじゃ──」


「──失礼な羽虫ですね」


「ギャアアアアアア!!」


 言いかけた言葉を遮り、最後まで言い切る事なくアリスと言う妖精は灰になった。勿論、ジンの仕業だ。


「ある程度の無礼は我慢しましょう。しかし、我が主の実力(ちから)を疑う等とは言語道断。決して許される事ではありません」


「……ジン。お前、それ只の方便だろ……」


 恐らく、ジンは単純にキレただけだ。その証拠に、問いかける俺と目を合わせようとしない。まあ、ジン(こいつ)にしては我慢した方か……。実際、俺も少しアリス(こいつ)は鬱陶しかったし。


「な、何と……あのアリス(妖精族の長)を一瞬で……」


「あれが、噂に聞く樹海の『魔神』か……」


「『死神』は『魔神(あれ)』より強いと言うのか……?」


 口々に、目の前で起こった惨劇に驚きの声を上げる、亜人達。皆がやや混乱しそうになる中、一人の亜人が俺の前に立った。後ろに長く伸びた頭の、年老いた亜人。その風貌を見るに、恐らく『ぬらりひょん』。ボアル達に御大とか呼ばれてた、『百鬼夜行』とかいうはぐれ亜人達の長だ。


「ホッホッホッ。お若いの、中々恐ろしい部下をお持ちの様じゃの。儂は、当代の『ぬらりひょん』……名は無い。強いて言うなら、ぬらりひょん(それ)が名じゃ」


 そう言って薄く笑みを浮かべる、ぬらりひょん。年老いた姿と言えど、威厳の様な物が確かにある。ぬらりひょんはその目を鋭く細め、俺に問いかけて来た。


「その、凶暴な『魔神』をも従える程のお主の強さ(ちから)……さぞ、恐ろしい腕の持ち主なのじゃろう。して、お主……それ程の強さ(ちから)を持ちながら、更に、この国に住む亜人達の総力(すべて)を欲しておると聞く。仮に亜人の統一を成し得たとして、お主はその未来(さき)に何を見ておる?」


 禅問答か?


 ぬらりひょんは、真剣な表情で俺に語りかける。大和(この国)の亜人を統一したその後、俺は何をするつもりなのか。


 その目的は?


 何かを企んでいるのか、それとも……。


 その辺りを、俺の回答から見極めるつもりなのだろう。しかし、俺はそんな『ぬらりひょん』の問いを聞いて、即座に決断した。


「ぎぃゃっ!!」


 無言。


 言葉にすら出さず、俺は一瞬でぬらりひょんの首を落とした。足下に奴の首が転がり、遅れてドサリと胴が崩れる。表情すら変えず、俺はその死体を一瞥して、周囲の亜人達に目を向けた。誰もが俺を、固唾を飲んで見つめている。そんな亜人達に対し、敢えて俺は()()()()()()()()()に対する答えを述べた。


「……お前等、バカか? 魔王が攻めて来るって言ってんのに、何眠たい事を言ってるんだ。魔王軍を倒さなきゃ、未来(さき)もクソも無えだろうが。物知り顔で、偉そうに語ってる場合じゃないんだよ」


 有無を言わさず、バッサリとぬらりひょんを切り捨てた俺に、言葉を失う亜人達。そして、傍らで何故か嬉しそうなジンと、誇らしげな顔の、コン。


「クックックッ……流石は我が主。見事な決断です」


「フン。ご主人様と対等に話しようなんて、身の程知らずなんだよ、ジジイ……」


 二人の言葉に、誰も言い返す事が出来ない。そんな張り詰めた空気の中、俺は更に続けた。


「大体、魔王を迎え撃つのに力を貸せと俺は言ったんだ。ちゃんと、うちの使い(やつ)は伝えた筈だぞ。にも関わらず、大物ぶって終わった後の話なんかしやがって。そもそも、今回の話は『お願い』では無い。『命令』だ、『死神(おれ)』からのな。本来なら、力を()()()()()のは、俺の方。お前等だけじゃ、魔王軍に勝てる訳が無いからな。そんな事すらもわからん、視野の狭いバカ(平和ボケ)は要らねえ」



 ──()()()()()のは、俺も同じだ。条件を出され、試された上で仲間に()()()()()なんて冗談じゃない。


 主導権は俺が握る。


 言った筈だ。あるのは『敵』か『味方』のみ。『中立(検討中)』なんて中途半端は認めない、と……。


読んで頂いてありがとうございました。

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