4話 出発
今回はだいぶ短いです。
アラン家の話し合いがあった翌日。
まだ太陽も昇りきっておらず、西の空はまだ少し夜をまとっている。
ローターマウンテンの洞窟“ロルシカ”の入口に立つ男の子が一人。
「俺だって…できるんだから」
小さく呟いたウィズの目には強い意志が感じられる。
まとう空気も少し変わったように思える。
よし、入るぞと意気込み一歩を踏み出そうとした時、
『ウィズ、行くのか』
後ろから声がして足をとめた。
振り返るとサリヌアとシルベスがいた。
二匹はウィズのことが心配で着いてきたのだ。
サリヌアは小さな羽を羽ばたかせ、ウィズの前に来た。
『本当に行くの?彼女だって本気じゃなかったかもしれないのに…』
サリヌアは涙目になりながらウィズを見つめる。
その後ろで心配そうな目をしたシルベスもウィズを見つめる。
今すぐにでも泣いて止めようと考えていそうな二匹のドラゴンにウィズは小さく頭を横に振り言った。
「俺はドラゴンマスターになりたい。ずっと言ってるからわかってると思うけど。だから、これはその第一歩なんだ。二人が心配してくれているのは嬉しいし、母さんが本気じゃなかったとしても俺は行くよ。夢のために」
そう言うウィズの目には内に秘めた炎を燃やしているかのように見え、サリヌアとシルベスはそれ以上は何も言わず、絶対に帰ってきてとだけ伝え、村へと戻って行った。
一人になったウィズはもう一度気合を入れ直し、洞窟へと足を踏み入れたのだった。