第4章~サンガンピュール、誕生~
スタッフ「待って下さい、Kさん!危険です!」
病院スタッフの警告を無視し、Kは銃声が聞こえた方へ走っていった。雨はかなり強くなっていた。見知らぬ土地で、周囲がどうなっているのか全く分からなかった。マリーはどこへ消えたのか。考えている矢先、男の悲鳴が聞こえた。Kはまさかと思いつつ、その近くへ行ってみた。そこは、大通りから少し外れた箇所であったが、ついにKはマリーを見つけた。だがKが目撃したのは、あまりにもおぞましい光景だった。
K「ど・・・どういうことだ・・・」
丸っこい身体に変形したマリーは茶色の服を身に着け、右手には拳銃を握りしめ、男たちと対峙していた。Kは急いで駆け寄った。
K「やめろ!今すぐここから逃げるんだ!!」
すると、
マリー「それはこっちの台詞よ!来ないで!」
逆に一喝された。どういう状況なのか。
ギャングのエース「なんだ、ド素人は引っ込んでな」
Kが確認したところ、ギャングは10人のグループだ。リーダー格は自分のことを「エース」と言っていた。うち、1人はうずくまって倒れている。こいつがさっき悲鳴を上げた男らしい。残りの9人が拳銃やダガーナイフなどで武装している。
K「マリー、君は一体・・・」
マリー「説明は後よ!」
かなり危険なことに首を突っ込んでしまったとKは思った。今は事態の成り行きを見守るしかない。
3分ほど経過した時、事態が急展開した。彼女は拳銃を捨て、一つの銀の筒を出した。
エース「クッハハハハ・・・何なんだよ、嬢ちゃん・・・笑わせんじゃねえよ」
だがその銀の筒が彼女のとっておきの武器だった。彼女は筒にあるスイッチを押した。すると炎のような赤い棒が出てきた。まるで「スターウォーズ」に出てくるライトセーバーそのものだ。
エース「おもちゃかよ、楽勝だな」
エース率いる10人組のギャングは油断してみせた。うずくまっていた1人も起き上がってきた。だが彼らに対して彼女は本気の本気だった。彼女はやり投げのような感覚でライトセーバーをギャングの方へ放り投げた。
エース「危ねぇじゃんかよ!」
マリー「『危ない』のはどっちよ!自分たちのやったこと、後悔しなさい!!」
マリーはギャングの一味目掛けて突撃した。
エース「やれ!」
ギャングが容赦なく拳銃を発砲させた。だがマリーは身長120cmしかないであろう小柄な身体をいかし、上手にかわしていった。そしてあっという間にギャング集団の真ん中に滑り込んでいき、自分のライトセーバーを再び握りしめた。
マリー「・・・これで終わりよ」
次の瞬間、彼女は赤い刃を出したままの剣を振り回した。実におぞましい光景だった。拳銃やダガーナイフを握っているギャングの手首が次々とライトセーバーで切断されていった。他にも胸を切り刻まれた者もいた。いずれも出血多量。もう助からないだろう。
ギャングの一人「ば・・・化け物!」
と、言い放った彼には拳銃を一発ブチこんだ。彼は硬直していて何もできずに死んでいった。
マリー「さぁ、後はあんただけよ」
仲間を全員死なせてしまうことになるエースは、追い詰められた。
エース「ここで逃げたら、仲間にも申し訳ない・・・もうごめんだ!!」
エースが彼女に向けて数発を発砲するも、もう勝負ありだった。エースの心臓にライトセーバーが入り込み、大量出血で死に至らせた。一瞬の出来事だった。
K「お・・・おい、君のやったことは殺人だよ!!・・・怖いよ」
マリー「・・・そう。その程度のことなのね」
K「マリー、君は一体・・・」
恐れおののいているKに対し、マリーは告白した。
マリー「私はもうマリー・ヴァランタンじゃないわ。・・・私の新しい名前は・・・、サンガンピュール」
K「サ・・・サンガン・・・ピュール・・・?」
何のことだか、Kにはさっぱり分からなかった。