エピローグ
サンガンピュールが土浦に来て1か月ほどが経った。彼女はこの町で暮らすのにも慣れてきた。そして猛勉強の結果、日本語も非常に上手になり、日常会話に支障がない程度にまで達していた。これも「ロンドンで神様から授かった何か」のおかげだろう。
8月10日、金曜日の夜。
K「明日、鹿島灘に行ってバーベキューをするぞ!」
帰宅したKは意気揚々と彼女に報告した。
サンガンピュール「本当!?」
突然の話で驚いたが、土浦以外の町へ遠出するのは彼女にとっては初めてだった。
サンガンピュール「海!海!あたし、見たことないんだ!」
アルプスの麓の大都市・リヨンで育った彼女は、学校の教科書以外で海を見た経験がなかった。
これはMの家族の誘いを受けたものであり、もっとサンガンピュールと交流をしてみたいというM・詩織夫婦の強い希望が実現した形となった。また、Kは明日から15日までお盆休み。2人で過ごせる時間をより大切にしたいという希望があった。これは全員の利害が見事に一致したイベントであった。
鹿島灘海浜公園で行われたバーベキューは、とても和気あいあいとしたものだった。来日してからほとんど口にしていなかった焼肉、野菜、とうもろこし・・・どれもおいしく、とても新鮮味があった。この日は、中でも「いとこ」にあたる稜とは楽しく遊んだ。一人っ子だった彼女にとって、ほぼ同年代の子どもと遊ぶのは実に久しぶりだった。
詩織「良かったですね、Kさん」
K「何がですか?」
詩織「だって、サンガンピュールちゃんのあんな楽しそうな姿を見るの、初めてだから。本来はあんな活発な子だったんだって」
「変わった子」扱いされ続けてきた彼女だが、海岸に来たことによって本来の性格を改めてみんなに見せたと言っていいだろう。
詩織「Kさん、ここからが勝負ですよ。お互いに信頼関係を築ける自信はありますか。あの子のために人生を捧げる覚悟は・・・できてますか?」
Kにとってはどう答えたら良いのか分からない質問だった。
詩織「なんてね」
一時のはったりだったことに、Kは安堵した。
K「だけど・・・、だけど保護した以上は、責任を持って育てなきゃ」
詩織「そうです、その意気です」
Kは改めて気を引き締めた。
実際のところ、サンガンピュールは大満足していた。もしあの時、ロンドンで落雷を受けていなければ、どんな人生を送っていただろうか。超能力と無縁の人生を送っていたのはもちろんである。そしてそれ以上に、自分の使命感や自己有用感に気付かずにいただろう。平凡なフランス人として生活していたのは間違いない。落雷を受けたことで、身体の構造は大きく変わった。だが、平凡な人間でいるよりかは、「変人」と蔑まれてもかまわない。もっと刺激的な人生を送りたい。
彼女は太平洋を臨む砂浜でこう大声を出した。
サンガンピュール「おじさん、大好き!!ずっとついていくよ!!」
みんなに丸聞こえだった。
M「ほら、愛の告白だぜ」
K「バカ言ってんじゃねぇよ!」
兄を軽蔑してみたものの、顔はすごく照れていた。
サンガンピュールとK、2人の物語は始まったばかりだ。
「サンガンピュールの物語(生い立ち)」~完~
皆さん、最後までご覧いただきましてありがとうございます。
この小説は、私が2007年に趣味で書いていたものを大幅に加筆した作品です。2013年頃からの様々なアニメとの出会いを通して、「どのようにしたら筋の通った物語になるか」、「登場人物がその行動に出た背景は何か」を大切にして書きました。
サンガンピュールという娘は、私が「パワーパフガールズ」(PPG)をヒントにして作り上げた創作キャラクターです。PPGとは違った設定で、中年の男性が魔法少女とどのように関わりを持つのか。試行錯誤をしながら書いて参りました。
彼女の物語は始まったばかりです。次回作も現在執筆中です。
人物や背景の設定、文章の書き方など、ご意見をお待ちしております。
これからもよろしくお願いします。




