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第14章~自分も変わらなければならないという覚悟~

 警察署の面談室。今回の事件解決の立役者となったサンガンピュール、その「保護者」のK、話を聞くことになった茂木、そして茂木の上司である係長の4人が室内にいた。そこでKは、自分がサンガンピュールの生活の面倒を見ると決意した理由の一部始終を語った。

 茂木「なるほど、そういうことだったのか・・・」

 茂木の口調は穏やかだったが、Kは内心ヒヤヒヤだった。その際、彼は詩織の発言を思い出していた。これはマジで未成年者略取誘拐になるのでは、と。サンガンピュールも緊張状態だったが、Kも気が気でなかった。だが茂木は係長と相談した結果、「フランスに住む親戚から引き取った養子」という形にしてくれた。ひとまず胸をなでおろしたKであった。



 その日の夕方5時過ぎ。2人は帰宅した。とても長い一日だった。本当は彼女の養育の問題を解決するための一日にしたかったのに、予想外の方へ事態が展開していった。疲労困憊だったKはひとまず無意識にテレビをつけた。だがKは適当につけたチャンネルを見て、わが目を疑った。


 「10歳の少女が強盗事件を解決!」


 この見出しのニュース映像を見て、Kは複雑な心境となった。急いでサンガンピュールを呼び、ニュース映像を見せた。

 サンガンピュール「あたし・・・」

 全く予想外の出来事だったのは彼女も同じだったようだ。だが、

 サンガンピュール「あたし、スーパーヒーローになっちゃったのかな!?」

 目をキラキラさせながら言った。彼女は何のバックグラウンドがあってその発言をしたのか、Kはすぐには呑み込めなかった。どう返事したらよいかも分からない。なぜなら彼は、スーパーマン、バットマン、ゴレンジャーといったファンタジーものは全く興味がなかったからである。最近始まった「おジャ魔女どれみ」という魔法少女なんて、もってのほかだとも思っていた。

 だが、つい先日、自分がロンドンで保護した少女は、魔法少女のような存在だったのだ。


 サンガンピュール「あたし、自分、パワーパフガールズみたいになっちゃったのかな!?あれ、好きだったんだよ!」


 彼女は有頂天だった。自分が憧れていた、超人的な不思議な力を持つ「魔法少女」になれたことに興奮していた。

 一方でKはいまだに事態をすぐに呑み込めないでいた。このままでいたら、ファンタジーものには興味がないという自分の「哲学」を否定することになる。だがその自分勝手な「哲学」が、兄弟を破滅に追い込んだこともあった。もっと言えば、昔付き合っていた彼女との関係をも壊す原因だったのかもしれない。そして何よりも、東京オリンピックの年に生まれた彼は、2001年当時は37歳だった。世間ではその年代であれば「結婚して、子どもがいて当たり前」と思われる。そのためか、職場では妙に自分への噂を気にしていた。「Kが彼女を作ろうとしないのは、性格に欠陥があるからだ」と陰口を叩かれたこともあった。

 だがこの不思議な少女との出会いは、自分の人生を変えてくれるのではないか。何よりも、世間から「カッコイイ男」として見られたい。家族を持っている兄に負けたくない。そんな思いが強くなった。


 K「・・・凄いことになったじゃん!サンガンピュール、凄いことなんだよ!」


 君は落雷を受けたことで生まれ変わった。俺は、君と出会ったことで生まれ変わる。


 「変らずに生きてゆくためには、まずは自分が変わらなければならない」


 Kは、学生時代に見たイタリア映画「山猫」での、アラン・ドロンのセリフを思い出していた。



 いずれにしてもたった10歳の少女が、凶器を持った犯人の逮捕に貢献して強盗事件を解決したというニュースは、インターネットの普及もあってかその日のうちに全国に知れ渡ることとなった。

 後日、10歳の彼女は勇気と大胆さが称賛され、土浦警察署から感謝状をもらった。それだけでなく彼女は、本来ならば銃刀法により取り締まられるライトセーバーと拳銃についての特別仕様許可も受けた。表彰を受けたサンガンピュールの隣には、保護者であるKもいた。これを機に、Kは彼女を養子として正式に申請した。これで血は繋がっていなくとも、法律上は親子になったのだ。

 その後も彼女は日本語の学習と平行して、土浦市内のいくつかの窃盗(あるいは未遂)事件を解決に導いていった。


 結局サンガンピュールの養育は、市の教育委員会と土浦警察署が協力しながら行うこととなった。Kが仕事に出かけている時、彼女は市役所の一室で読み書き、計算の仕方といった学習面を見てもらうことになった。週に1回ほどは、警察署で拳銃の訓練も受けさせてくれることとなった。ただし、これはどんなに長くても2003年3月までの措置である、とされた。2003年の春といえば、彼女は12歳。日本の教育制度では小学校を卒業し、中学校に進学する学齢にあたる。

 Kの悩みがひとまず解決されると同時に、彼女が日本で定住する環境がおおよそ整ったのである。

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