第13章~求められていた自分~
実はこの時、土浦駅西口では卑劣な強盗事件が発生していた。事件の現場は、イトーヨーカドー土浦店から南にある信用金庫の支店だ。2人組の犯人グループは信金の店内に立てこもっていた。一人は女性職員にサバイバルナイフを突き付け、もう一人は店内を巡回していた。抵抗する人質は殺すぞと言わんばかりだ。
事件解決にかなりの時間がかかりそうだ。そこで市内南部の警察署から応援のパトカーがやってきた。サンガンピュールとKはそのパトカーに遭遇したことになる。
現場付近には警察による規制線が張られ、立ち入りは当然ながらできない。そのように見えた。だが、見て見ぬふりはどうしてもできなかった。
警察官「ちょっと、君!入らないで!危ないよ!」
サンガンピュール「分かってます!」
厳戒警備中の警察官の静止を振り切り、彼女は支店の中へ突入した。
「あぁ?誰だ?」
拳銃を持っている方の実行犯である富田が彼女を睨みつけた。もう一人の実行犯で、サバイバルナイフを持っているのは川原であった。客、従業員など店内の全員が小柄な少女に視線を向けた。
サンガンピュール「あたし?・・・あたしは、サンガンピュール」
川原「サンガン・・・ピュー・・・、クックックックックックック・・・」
富田「キャーハハハハハ・・・」
他人を侮辱するような笑い声が2人から発せられる。警察も遂にこんなガキに頼らざるを得なくなったのか。だが子ども相手だろうが容赦はしない。
サンガンピュール「あんたたち、なんでこんなことしたの?」
富田「決まってんじゃん。金が欲しいんだよ」
サンガンピュール「お金を集めてどうすんの?」
富田「遊ぶんだよ」
川原「そうさ。俺たち、薬物やITの知識は全然ないし、こう仕掛ける方が分かりやすいのさ」
彼女の両手の拳は震えあがっていた。そんな身勝手な理由で、数十人もの人々を巻き込むのが許せなかった。思わずつぶやいてしまった。
サンガンピュール「倒す・・・」
富田「ほう、もう一度言ってみな」
余裕であるせいか、煽ってみせた。
サンガンピュール「あんたたちを倒す!」
富田「面白いじゃねぇか、やってみな」
完全に受けて立つことになった。それはもう早業だった。
サンガンピュールは富田に対し、右足で回し蹴りを仕掛けた。右足が富田の右手首に当たったと同時に、所持していた拳銃を投げ飛ばされた。富田は鳩尾にキックを食らい、床に倒れこんだ。その直後、サバイバルナイフを持っている川原が迫ってきた。彼女は川原に対してもキックで仕掛けた。川原の胸に痛烈なキックの一撃が入った。川原は後ろへとバランスを失い、来客用のソファにぶつかって倒れこんだ。留めの一発として、かかとを振り下ろして川原を失神させた。
これに対し、富田が迫ってくる。富田が落とした拳銃は彼女のすぐ目の前。倒れたマガジンラックの上に乗っかっている。彼女はとっさの判断で、両手に力を込めた。込められた念力によってマガジンラックは拳銃を乗せたまま天井を突き破った。富田が思わず天井を見上げてしまった。そして小回りの効く小柄な体格を活かして富田の後ろへ回り込む。最後は富田にライトセーバーの赤い刃を突き付けた。
勝負ありだった。この間、わずか30秒。
その直後、実行犯2人が動けなくなった場面を見計らったかのように店内に大勢の警察官が突入。2人は取り押さえられ、パトカーの中へ連行されていった。そこへ、サンガンピュールに近づく1人の刑事がいた。
「いやぁ・・・君、凄かったね。柔道か何かやってたの?」
彼は茂木。土浦警察署の刑事課に所属する刑事だ。
サンガンピュール「いえ・・・何もやってないです・・・」
突然、夏なのに黒いスーツ姿の刑事に話しかけられたことで少し動揺していた。ただ、自分の超能力を無意識に使ってしまったという自覚があった。
茂木「そうか。とても凄いことだったけれど・・・、ここは子どもにとっては危ない場所だからね!」
やっぱりかとも思ったが、きつく言われてしまった。
解決から数分後、Kが信金の支店前に到着した。そこでサンガンピュールと再会したのだが、Kには驚いたことがあった。
K「あっ、サンガンピュール・・・!探したよ!」
一目散に駆けつけた。そして、小さな身体を思いっきり抱きしめた。
K「大丈夫!?大丈夫!?」
サンガンピュール「おじさん、きついって・・・」
そんな中である。
茂木「あれ・・・?K君?」
K「え・・・ええええ!?・・・ひょっとして、茂木!?」
彼女は状況が読み込めなかった。急に自分が会話の中心から外れた気がした。実はKと茂木は同じ中学校の同級生。
茂木「久しぶり!・・・って言いたいことだけど、この子ってK君の娘なの?」
世間から見ると、どうも父と娘にしか見えない。
K「いや、実は・・・、これには深い理由があって・・・」
茂木の視線は厳しいものにならざるを得なかった。サンガンピュールは事件を解決に導いた当事者として、Kは彼女の「関係者」ということで、警察署に任意同行を求められた。




