第2話...清、屋上に呼び出される
「な、なぁ。薄葉。交換はなかったことにしないか?」
人の良い京のことだからまた代わるのかと思いきや
「断る」
「そんなっ」
あっさりと断った。そして清の方を向くと
「キヨちゃん。久しぶりだね」
清の手を握りながら言う
「キヨちゃんって・・・?」
「やだなぁ。忘れちゃった?幼稚園だとみんなから」
「あああああ!もしかしてきょうちゃん!?」
清はビックリして席を立ち上がった
「そうだよ!幼稚園以来だね」
清は今まで幼稚園時代の人物との接触を避けてきた。それはとある事情があるからなのだが、よりによって今日幼稚園時代の、最も会いたくない人に会ってしまった
「俺は幼稚園のあの時、キヨちゃんのこ」
「ちょーーっ!」
清は護身用に持たされているスタンガンを京の体に当てた
「おっきゃああああ!?」
電流を流され京は倒れた
「ふぅ・・・よりによってきょうちゃんに会ってしまうなんて」
「なに?霞と薄葉は知り合いなの?」
後ろの男子が聞いてきたので清は振り返った
「えっ!?いや?別にそんなこと・・・は?」
清が振り返った先には大柄の女子とその子分のような女子が清を睨んでいた
別に清は何もしてないのだが清の美貌と薄葉京に手を握られたというのが原因で恨みを持たれたのだ
そんなこと知らない清は笑顔で大柄な女子に手を振った
「なんだてめええっ!?」
そして物凄い怒鳴られた
「おいやめろよ!きよちゃんが可哀想だろ!」
「なんだよ!きよちゃんが可愛いからって嫉妬かよ!お〜恐っ」
男子は清に好印象を与えようと余計なことを言い出した。すべて清に返ってくると知らずに
「き、清・・・あんた後で屋上に来な」
すごい殺気を含んだ目で清を見る
「え?屋上?う〜ん。高い所はちょっとなぁ・・・まぁ良いよ。何して遊ぶ?」
残念ながら清は殺気を感じとれずに仲良くしてくれるのだと勘違いした
「殺ぉす!」
余計に火を付けたことにも清は気付かない
(ん?殺ぉす・・・?いや、僕がこの人に殺される理由がない。ってことは聞き間違い?コ・ロ・オ・ス・・・コとしロくじゅっさいをむかえるオじいちゃんがうちにはいまスの略?いや、今言うことじゃないな・・・ってことは本当に殺す!?)
ところがどっこいこんな時だけ勘が冴えてしまう清少年
「えええええっ!?なんで殺すんですか!」
しかし清が考えているうちに屋上に呼び出した生徒は行ってしまった
「どどどどうしよう!」
不安になってくる清
「きよちゃん!大丈夫、俺が守る!」
「そうだ!あの女俺達でボコろう!」
皆の闘志が高まる
しかし清は浮かない顔をしている
「あの・・・女の子を叩いちゃダメだよ」
おずおず言う清。そんな清に京が言う
「大丈夫。叩くんじゃなくてボコるんだ。なお、これは決定事項であり何があっても変更はしない」
京は清の肩に手を置きながら言った
「私はきょうちゃんが人を傷つけるのはヤだな」
清が目を潤ませながら言う
「よし、やめよう!」
「はえーよ!」
男子全員から非難の声があがった
「ねぇ、君」
清が男子の燃えっぷりに頭を抱えていると女子の声が聞こえた
「え?私?」
さっきから女子にはけして友好的な目では見られていなかったので一応確認する
「うん。実は私遠い所から来たから知り合いがいなくて・・・席が近いから仲良くなれないかな〜なんて」
内心清はこの時飛び上がって喜びたいくらい嬉しかったのだが変な子と思われるかもしれないのでやめた
「よろしくっ」
固く握手した
「それにしても・・・大丈夫?」
「なにが?」
「ほら・・・屋上に呼び出されてたでしょ?」
「あ、うん」
「あの人、皆が言うには相当強いらしわよ」
清が顔を曇らせる
「なんでも中学だと職員室を壊滅まで追い込んだとか」
清が涙目になってきた
「ぼ、私はどうしたらいいの?!」
「どうしよう・・・わ、私も一緒に行こうか?」
清は顔を明るくしたがすぐに元にもどった
(女の子を危険な目に遭わせるわけにはいかないよね・・・でもなんか行く気満々みたいだしなぁ。あ、そうだ)
「じゃあ、私が行ってから30分後に来てくれない?」
「え?なんで?」
「作戦よ」
無論なにも考えていない
「作戦かぁ・・・かっこいいね」
清はこの子となら仲良くなれると確信した
「と、いうわけなんだよ」
『了解しました。お任せください』
電話を切る。清はトイレに行くふりをして電話をかけに来ていた
「ふふ。簡単なことだったんだ」
この清の余裕の訳は後々分かることになるだろう
「おじゃましまーす」
余裕な感じで清が屋上の扉を開けた
「遅いんだよ!」
いきなり真横に石を投げられて早くも泣きそうになる清
「い、いいんですか?私にそんなことして」
「だからやってるんだろ?ああ!?」
(うるさい〜だから不良って嫌い)
清はOKサインを作ると相手に向けた
「私を怒らせると・・・」
「どうなるってんだよ」
「こうです・・・バァンッ!」
清が言った途端
ドオオオオン!
体育倉庫が吹き飛んだ
「・・・」
相手の女子生徒は口をパクパクしている
「あ、外しちゃった。じゃ、次は当てよ」
下の方が騒がしくなってきた。爆発音を聞いた野次馬達が集まりだしたからだ
「降参するなら今のうち〜♪」
清は相手に聞こえるように歌いだした
「ひっ、ひいいいいい!化け物おお!」
「ちょっとおおお!?なにこれ!えっ?ちょっ!うそおおお!?」
下から校長らしき声が聞こえてきた
清は電話をかけていた
「ありがと」
『いえ。礼を言われる程のことではございません』
あの芸当は別に清が魔法を使ったわけでもフ○ースを使ったわけでもない。遠くからロケット弾を撃ち込んで貰ったのだ
「とにかく助かったよ」
『はい。しかし体育倉庫の修理はいかがなさいますか?』
「ここに寄付してあげて。もう一校建てられるくらい」
『了解しました』
電話をしまった途端ドアが開いた
「きよさん!見ました!?体育倉庫が爆発しましたよ!」
「え!?ええ・・・」
自分がやらせたなどと言えるわけがないので焦る清
「あ、それよりあの人はどうしたんです?」
「ん?帰ったよ」
「え!?で、大丈夫だったんですか?怪我とかは?」
「うん。無傷無傷」
「すっご〜い!え?なにやったの?」
「う、うーん。話し合い?的な?」
「へ〜すごいね」
清はこの子はとても騙されやすいので心配だと思った