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第1話...清、入学する

「ここが僕の学校か」


女物に身を包んだ清は校門の前に来ていた。男が女物なんて似合うのかと思うだろうがこの清少年、華奢な体つきで顔は女っぽく。声変わりは過ぎたハズなのに小学生のような声をしている




よって、女装はお手のものってことだ




「う〜。入学式始まってる・・・」


生憎と清は入学式中に体育館に入る勇気は持ち合わせていない


「あ、明日行こう」


だから逃げるしかないのである






「怒られるかなぁ」


早くも明日の心配をする清


「町の人が見てくる気がする」


一見はとびきりの美少女なので町行く人々は目で清を追ってしまうほどだ


「まさか・・・女装がバレたんじゃあ」


見当違いの心配をしだした







「君いくつ?可愛いね」


だから、当然こういう男も現れる


「え?え?だ、誰ですか?」


町に一人で出ることも滅多にないのでナンパなど知らない


「俺?君の運命の人」


「ええっ?」


男にこんなことを言われて清は頬を赤くした。まぁけっして清がそっちの人ってわけではないのだがその訳は後に話そう


「ほら、お茶しにいこうぜ」


「え!あっ、ちょっ」


何分力も弱いのであっさりと連れて行かれてしまった







「あ、あの・・・なんでこんな所に?」


あの後なんだかんだでホテルの一室に来てしまっていた


「なんでって・・・ここに来たらすることは一つでしょ」


男は清の方にゆっくり近づいて来る


「いや!あの!実は僕」


「なに?初めてなの?大丈夫。優しくすっから」


都合のいい勘違いをされて清は更に焦る


「いや!初めてとかそういうんじゃなくて」


「いいからいいから」


「だ、誰か!助けてー!」


清が叫んだ瞬間




バンッ!


部屋のドアが爆破した


「!?なんだ?」


男は驚いてドアの方を向く


「ターゲット確認!確保!」


爆破したドアから銃を構えた男達がぞろぞろ入ってくる


「あ、皆」


甘甘な両親が一人で清を出掛けさせる訳がない。護衛を付けていた


「清様。こちらへ」


清の周りを護衛が囲んだ


「え?なに?なんなの?」


「貴様・・・お坊っちゃまに何をしようとしていた?」


「お坊っちゃま?誰だよそれ」


「今は私が質問している!」


騒ぎを聞き付けた人々が集まりだした


「本来なら射殺なのだがな。お坊っちゃま、どうなさいますか?」


立派な髭をたくわえた老人が清に訪ねる


「あ、帰してあげて」


「ラジャー」


老人は男を掴むと外に歩いていった


「ええーっ!?ちょっとぉ!なに!なにこれぇ!」


オーナーらしき人が頭を抱えている


「あなたがこの建物の所有者ですか?」


「そうだけど」


「これを」


護衛がトランクを差し出した


「なにこれ・・・!!」


オーナーの顔が驚きの顔に変わる


「許していただけたでしょうか」


「あ、もうどんどん爆破しちゃって下さい!」


オーナーはニッコニコ笑っている







「お坊っちゃま。大丈夫でしたか」


清は帰りの車の中でふてくされていた


「ずっと見てたならもっと早く助けてよね」


「あ、申し訳ありません。お坊っちゃまがお楽しみになっているかもしれなかったので」


老人は車を運転しながら頭を下げた


「・・・はぁ。こんなんでやっていけるのかな」


ため息とともに清がこぼす


「お坊っちゃまなら大丈夫です」


老人はその厳格そうな顔からは想像できないような優しい笑みを見せた


「だといいけど・・・」


目を閉じると眠気が襲ってきた









「ん・・・あれ?僕の部屋?」


あの後眠ってしまった清は護衛に部屋まで運ばれた






「清ちゃん。学校休んじゃったの?」


部屋を出ると母親が怒った風でもなく聞いてきた


「ごめんなさい。でも、入学式中にはとても入れなくて」


「いいのよ。入学式くらいサボったって」


結構重要な気がするが、この母親の前では世間の理屈もなにもない


「それはそうと。清ちゃん。清ちゃんに似合うかもってお洋服全部買ってきたのよ」


メイドが数十人係りで服のかかったタンスを持ってきた


「うわ・・・あれ?まって?普段から女の真似事をしなくちゃならないの?」


「当たり前よぉ。女心は簡単には掴めないのよ」


騙されやすく乗せられやすい清は母親の言葉を鵜呑みにした


「あの・・お父様の容態は」


「ねぇ母さん!こんな服も似合うんじゃ・・・って清!?ごはあああっ!ゲホッがはあっ」


「お父様!無理をなさらないでください」


「ありがとう。清。学校は?」


清は怯えた表情をしつつ


「や、休んじゃいまして」


「そうかそうか。まぁ入学式くらいサボったって平気さ」


そう言って清の頭を撫でた




あえてもう一回言うとここの親は子供に甘い










「ん?ね、じっちゃ。あの大きいのはなんだい?」


じっちゃと呼ばれた、昨日の護衛の老人はにこにこしながら


「あれはバスでございます。大体の学生はあれで登校しています」


「へ〜。乗ってみたいなぁ」


「ダメですよ。あんな人混みの中で病気にでもなってしまったらどうするんですか」


「それだけじゃ病気にならないよ」


つまらなそうに頬をふくらませる清


「我慢なさってください」


しばらく膨れっ面だった清は学校が近づくに連れて期待が顔に表れ始めた









「ではお坊っちゃま。いや、お嬢様。頑張ってください」


車は走り去っていった


「あ、緊張してトイレに行きたくなっちゃった」


早く来すぎたのか人影はなかった






「なぁ。なんで昨日からお前の隣空いてんのかね?」


「さぁ?」


「どんな子かな?俺の予想だと入学式をサボるくらいの度胸を持ってる女だろ?絶対ゴツゴツした中学だとゴリラ界の最終兵器って呼ばれてた女だと思うぜ?」


あくまでも想像でここまで言えるのはすごい事だ


「うへぇ・・・マジかよ。怖くなってきた。お前、代われよ」


「はぁ?ヤダよ」


「じゃ、こうしようぜ?じゃんけんで勝ったら交換な」


「待てよ。それ俺にメリット無くね?」


「頼むよ。俺はゴリラの貢ぎ物にはなりたくないよ」


もう隣に座るのはゴリラだと決定したような会話内容だ


「しょうがねーな。代わってやるよ」


後ろの席の男子が立ち上がった


「まじ?サンキュー。さぁってじゃあどんなゴリラが来るのか楽しみに見るとしますかね」


このなんのためらいもなく席を代わってあげるのは中学時代からその見た目の良さと性格の良さで女子なんか選り取りみどりだった薄葉京(うすば きょう)という人物。しかし彼は女子とは一度も付き合ったことがない。それは彼があっちの趣味だからとかじゃない。初恋が忘れられないのだ









「よーし。席に座って。あら?また霞は欠席か?」


先生が名簿に書こうとした時


ガララララッ


「おはようございます」


非常にのんびりと清が現れた。もちろん清は遅刻しているなど夢にも思っていない


「あ・・・」


さっきからゴリラゴリラ言っていた男子はまばたきもせずに清を見ている


「?ぼ、私の席ってここ?」


清は空いている机を指差す


「あ、ああ」


京はハッとして返事する


「ふぅ。あれ?皆いるんだ。早いんだね」


清は周りから視線を浴びて不思議そうにキョロキョロしている


「霞・・・遅刻だ!」


先生が大声を出した


「わあっ」


突然の大声に清のチキンハートは悲鳴をあげ、清はひっくり返りそうになった


「え?ち、遅刻?」


びくびく怯えながら聞き返す


「しかも入学式にも来ないとは何事だ!」


「あ、あぅぅ。ご、ごめんなさぃ」


涙目になりながら謝る清




清自身、今は女のフリをするのを忘れていたのだが元々女々しいのが助けとなった


「す、すまん。先生も言い過ぎた」


ちっとも言い過ぎてないが清が泣き出しそうだったので先生は怒るのをやめた


「霞。一時間目の最初の方に自己紹介の時間をあげるから皆に自己紹介しなさい。皆はもうすませたぞ」


「グスン・・・はい」


このたった数分で男子からは相当の好感度を得て、女子からは相当嫌われた









清の入学は無事すんだ

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