第18話(1) 金色の女神の祝福
「ー……! ー……!」
誰かが呼ぶ声がする……
ボロボロで今にも崩れそうな体に優しくて暖かい感覚に包まれる……
じわりじわりと体の痛みが消えてゆく……
「……うっ……ん……」
「「「めぐるっ!」」」
三人の声が重なる。
意識がはっきりしてくる。
「あっ! グシャラボラスは!?」
「しっかりめぐるが倒してたよ! ありがとな! ん~っ!」
「んぐっ!」
「「ああああああっ!」」
「っは! なっなななな!」
ヴィルヘルムにいきなり唇を奪れた。
「何をしている! ヴィルヘルム! 貴様!」
「頑張ってくれためぐるに感謝の気持ちをだな!」
「ありがとうだけで十分だろうがっ!」
「僕……初めて……」
「「なんだとおおおおおっ!」」
乙女のように唇を手で押さえ赤面する僕と、声をあげるルリさんにスピカ。
「やりっ! あたしも初めてなんだよ! まあ、責任取ってやるよ!」
「責任じゃあないよ! 私だって! 私だって! お前ええええええええええ!」
ヴィルヘルムの胸ぐらを掴みぶんぶん振るルリさん……というかヴィルヘルム凄い男前ですね。そして、僕の前に立つスピカ。
「……」
「すっスピカ?」
スピカの後ろにはヴィルヘルムとルリさんが取っ組み合いをしている。そして……
「……むー……っ」
「スピカっん!」
「「ああああああっ!」」
スピカまでキスをしてきた!
すぐにルリさんとヴィルヘルムに引き剥がされる!
「お前まで! なんなの!? ねえなんなの!?」
舌で唇をぺろりと舐めたスピカが……
「……上書き……おかわり……」
「やめろおおおお!」
「んじゃ、あたしも上書……」
「「お前も!」」
なんか三人でぐるぐるぐるぐる取っ組み合いが続く。辺りを見回すがグシャラボラスがいない……やはり作戦は上手く言ったようだ。しかし、魔力が少ししかないのが分かる。最後の記憶では身体強化でずたぼろ状態だったはず……
「ねえ、三人とも……」
「「「……ー! ……ー!」」」
「あのっ!」
びくっ! ……と三人とも止まりこちらを見る。
「……僕の傷が治ってるんだけど誰が治してくれたの?」
「あっああー……めぐる。スピカと私のイヤリングに回復魔法を込めたよね? 私のは使っちゃったんだけどスピカの方で使ってめぐるの体を治したんだ」
「……ぶい……」
「ははっ……まさか込めた張本人の僕が恩恵を受けるとはね。ありがとう。スピカ」
「……いえいえ……む~っ……」
「「おいっ!」」
タコみたいな口でまた突撃しようとするスピカをまた、二人が止める。
「もう……そのくだりいいですから!」
「ところでめぐる。それにお前らも館の敷地内に入っているのに何ともないんだ?」
「なんとも?」
「どゆこと?」
「いや、敷地内に入ると色々な実体のある幻覚や環境が変わったりとかが起こるんだけど……グシャラボラスは見事にめぐるが鎖で拘束したあと更に幻覚が襲って異空間に飛ばしていたけど……」
「そのことですか。僕には【コーリング】という交信魔法があって皆が時間を稼いでいる間にお姉さんと通信して今回の作戦とタイミングを合わせたんですよ」
「姉さまと!?」
「はい。そして、お姉さんを解放する方法もなんとなくわかります」
「めぐるの回復魔法でなんとかなるんじゃないの?」
「通信した時に、お姉さんには無理っぽいって言われました。お姉さんにもここから出る方法はわからないとのこと……でも僕と女神にあったお姉さんの能力について心当たりがあって、読みが当たっていればなんとかなります」
「めぐる! お願いだよ!」
「はいっ! あと少しです……再開しましょう。お姉さんと……」
ルリさんが約束の空間を切りつけ消したあと改めて四人で屋敷の中に入る……
ヴィルヘルムの案内により3階まで上がり、奥の部屋に向かうとそこには柱と勘違いするような四角形をした石柱があった。
ヴィルヘルムがその平坦な石に触れると……
「この中に姉さまがいるんだ……」
「……ただの……柱……?」
「スピカ……」
「それでどうするんだ? めぐる?」
時間が立ち少し魔力も回復している。これならためせる。
「ヴィルヘルムさん……僕を切りつけてください」
……
……
「「「ええええええええええええっ!?」」」
三人の大きな声が屋敷内に響き渡った……
つづく