第4話(2) 主になっちゃいました
馬車内は騒がしくなる。
「こっこの王金貨どうしたの!? 1枚で辺境の田舎村全ての人のお金より多いよ!」
「あっ、あの、えーっと……マ……じゃなく、母さんが昔稼いだお金なんですよ!」
「めぐるってどっかの御曹司なの!? こんなに持ち出してお母様怒らないの!?」
「いやっ全然そんなんじゃないですし、母さんこの世にいないし、僕1人ぼっちなので親兄弟友達恋人知り合いいないのでお気になさらずーーーー!」
「……ごめんなさい。お母様のこと詮索みたいなことしてしまって」
あっ、心配かけてしまいました。
「いっ、いえいえ大丈夫です!あっ、それよりも街!あれが街ですね!」
気まずさを誤魔化せそうなタイミングで目の前に街が広がっている。目の前には煉瓦で並べられた壁があるがルリさんの言っていた通り少し田舎なのかな?
ゲームのような白い煉瓦で城壁のように侵入者を防ぐ物をイメージしていたが、だいたい2階建てのアパートくらいの茶色い煉瓦の壁が目の前にあった。
「そっそうだな! あそこが【プラム】という街だ! 私も輸送依頼の完了報告があるからそのあと街を……あっ……案内っ! ……してやってもいいのだが!? ふたりぃっきりでなっ!」
なんでこの人はいちいち声が裏返るのでしょうか? でも、案内はとってもありがたいです。なんせ、ギルドでジョブ登録が終わったあとのこと全く考えていなかったから。
「はい! ルリさん! お願いいたします!」
ルリさんは顔を真っ赤に目をぱちくりさせながら、
「うむっ! まかせてくれっ!」
と嬉しそうな顔をしていた。
……
……
ぎぃ……っと木製の扉を開けてようやくギルド管理協会に到着しました。
中は飲食もできる見たいで沢山の木製のテーブルがおいてあり、2~30人くらいの人間が飲み食いしたり、ミーティングをしたり、何やら大きい掲示板を見ていました。
筋肉マッチョマンなモヒカンの人や、黒いローブをすっぽりと被ったお化けみたいな人、何よりビキニやヒラヒラ布みたいなきわどい格好のお姉さんも数人いてテンション上がりました。
「報酬受け取りと登録カウンターは一緒だから、めぐる。離れないでね」
キョロキョロするのをやめてルリさんのあとをついて行ったら
「あっ! ルリー! 帰って来たんだ~!」
いきなりビキニみたいな服の女性が声をかけてきた。
「ジルっ! うん! さっきついたとこ!」
ジルさんと言う女性は褐色肌の金髪ロングウェーブでぼいんぼいんで目のやり場に困る……服装的にも……
「あれ~ルリ~……いくらモテないからってついに男の子誘拐してきたのかな~犯罪だぞ~」
「かっ、からかうな! 彼はめぐる! 途中野盗に教われていた所を助けてくれたんだ!」
「初めまして。めぐるといいます」
「そっかー! 私はジルってんだ! チームは違うけどルリのダチさっ! よろしくな! んでめぐるはどっから来たんだ? 変わった服装してるけど?」
いやいや、あなた方皆さんのほうが変わった服装してますよ!? ジルさん、ビキニみたいな上半身に下半身は凄い短い短パンにTバックみたいな紐見えてますし!?
「ごめん。ジル、詮索しないでくれないか? めぐるにも話せない事実や掟があるんだ……」
「ルリさん……」
ナイスフォロー……ありがたいです……
「わりわり! 詮索する気はなかったんだ! 許してくれよ! お詫びに街を案内すんぜ?」
「だっ! だめええええええええっ!」
いきなりのルリさんの大声にかなりびっくりしました! ジルさんもびっくりしたらしくきょとんとしていたが、大笑いしはじめて
「……ぷっ……あっはっはっ! あの堅物のルリがねー! 面白っ! でもいいのか? ノートンのことは幼なじみで同じチームの旦那だろ?」
えっ!? ルリさん結婚していたんですか!? なんかショックです!
「ジル! 違うよ! ノートンは腐れ縁の幼なじみでどうしてもギルドに入りたいっていうから手伝ってあげてるだけなの! めぐる! 何にも関係ないの! 本当だよ!」
「はーーーはっはっ……ひぃーー……ルリぃ! 今日のあんた面白よ! 早いとこ報酬もらって彼とデートでもしてきなっ!」
「もう知らないっ! めぐる! いくぞ!」
でっ……デートなんですか!? どうしようどうしよう!? ぼっちだった僕には何も経験ないですよ!
とかなんとか1人でモヤモヤしていたら
「はいっ! ソードダンスのルリさん! 今回の報酬の潤銀貨1枚と銀貨5枚です! ノートンさんと2人のチームなのに今回は一緒じゃないんですね!」
「そうなんだ。あいつはあいつでなんか別の依頼を受けているらしいんだが聞いていないか?」
「いいえ。存じ上げません」
「そうか……報酬ありがとう!」
「いえいえ。また、よろしくお願いいたします!」
ルリさんはもう報酬を貰っていた。
「ここが受付だよ。めぐるも早いとこジョブ登録して街を見に行こう」
「はいっ! 行ってきますね!」
カウンターの前に立つとそこにはポニーテールの僕の学校の女子ブレザーに近いような制服をきた女性がいました。
「初めまして! 新規登録の方ですね? ルリさんから聞いています! この規約書を読んだ上でサインを頂き、その後この水晶に手を置くとあなたのスタートジョブが決定します!」
見ると地球儀くらいの水晶が三脚のような物に置いてあり、その下には指輪がおいてあった。
「その指輪がギルド登録の証ですので無くさないでくださいね! 再発行時には金貨1枚必要なので! めぐるさまは【ヒーリング】がすでに使えるようなのでジョブランク3の【ヒーラー】からスタートできそうです! スタートからランク3は凄いですよ!」
ランク7の【プリースト】からスタートできることは女神さまの所で確定してるから騒ぎになりそうです。
あっ、忘れないうちに……
「ごめんなさい……受付さん……内密なお話が……金貨の件ですが……」
「ツケとか出世払いとかはやってませんから!」
人聞き悪いです! まあ、ルリさんから恐らく辺境の村から来てるって聞いてるからかな! 声を潜めてっと。
「お金に困ってるのは事実ですが……これお釣出せます?」
と、王金貨1枚を出す。
「おうきんっ……ふがっ!」
すぐ手を伸ばして口を塞ぐ!
「お釣でますか?」
受付さんはうんうん首を縦に降る。
「あと、5枚ほど金貨に換金してほしいのですが?」
びくっ! となり今度は横に降る! ダメか!? なら……
「ホントに困ってるんです! 3枚なら? やってくださるならチップとして両替出来た金貨3枚ほどプレゼントします!」
また、びくっ! っとしたが、にやっとして口から手を退かし……
「すぐ準備致しますね! めぐるさま! あのー……5枚出来ないわけじゃないのですが……」
と異世界のクセにお金のハンドサインを送ってきやがりました。
「はぁ……チップ2枚追加でいいですか?」
「やった! めぐるさま! 準備致しますねー!」
……このやろう
とかなんとかしていたら
「ルリっ!? なっ! なんで帰って来やがった!?」
金色の短髪の男がルリさんを指さしていた。あれがノートンさんですか?
凄い動揺しているが……
「は? 何を言ってるんだノートン? 野盗に襲われたがなんとか帰って来れた。疲れたぞーほれ報酬の取り分だ。」
銀貨を持った手をノートンさんに伸ばしたが……
ぱしぃっ!
ちりんちりん……
ノートンさんはその手を払った……
「っつ! ……ノートン何をするんだ!?」
「何をするんだ!? はこっちのセリフだ! ボケが!」
ノートンさんが豹変している。
……がチームの問題なんだ、ひとまずは登録を優先して契約書をしっかりと目を通さないとですね。これは大事なことなので。
「めぐるさまー! 金貨持ってきましたよー!」
「あっ、受付さん。はいこれ約束のチップ。あとこれ書き終わりましたよー」
「ありがとうございますー……って、なんか騒がしいですけどめぐるさんはいってあげなくていいんですか?」
「ただのチームないの内輪揉めじゃないですか? とりあえずは登録が先です。このあとはどういう手順です?」
「はぁ……なんか……変わってますね。とりあえずこのあとは契約書を水晶に出力して、手を水晶に当てればジョブ登録完了です。出力には少しお時間かかるのでお待ちを……」
「はーい」
さてと、契約書の文言に目を通さないとな。街案内の時までには落ち着いてくれますかね? 受付さんがくれたお茶で喉を潤す。
「なんで帰って来てんだよ! お前が帰って来たら、お前を売った報酬が俺に入ってこねーだろうが!」
ぶっーーーーー! お茶を吹いた。なになに!? どういうことです?
「お……おいおい。ノートン何を言ってる?」
「金貨7枚でお前を野盗に売ったんだよ! んで、取り分の5枚でCランク間近のチーム【スマッシュ】に入れてもらう予定だったんだ!」
マジで? ノートンさん……いやこいつクソヤローですね。
「ノートン……うそだよな? ……私たちって幼なじみだよね?」
「幼なじみだけど関係ないよ! 俺は上を目指すんだよ! この役立たずがっ!」
「ーーーっ!」
ルリさんの目から一粒涙が零れた……
「泣けばいいって問題じゃねーーんだよ! こら!」
ノートンが罵声を浴びせる。
「ちょっと、あんた! 何様!」
とジルさんが割って入ろうとするがその騒ぎを止めたのは
「ノ~ーートンっ!」
ガシッ!とノートンの肩に手を後ろから回してきた、2メートルはあろう筋肉がボディービルダー顔負けの坊主頭の大男だった。
「約束覚えてるよなぁっ! ノートンくんよぉっ!」
つづく
すいません。
前編、後編でおさまり切らず中編です。