第17話(4) 凶神の演目
僕は付与魔法であるエンチャントを使い【聖丈アスクレピオス】を自分中に取り込んだ。
そして、女神さまが教えてくれた魔法を唱える。
「【限界突破】」
魔法を唱えるとどっくん! と自分の心臓が高鳴る音が聞こえた……
そして、めぐるの体がうっすらと金色に光始めた。
「貴様……レイズデッドを唱える時点で超越位階者だな」
僕は足に力を込める。
びゅんっ!
一瞬にしてグシャラボラスとの間合いを詰めると同時に人間でいう肋骨を下から狙うようにボディブローを入れる。
ボキボキボキっ! グシャラボラスに肋骨があるのかはわからないが横にくの字になるようにグシャラボラスの体が浮いた。
「がっはぁっ!」
そのまま、横にある木に体をぶつけ、めきめきぃと木がへし折れる。
「めぐる……」
「凄い!」
三人が喜ぶ中、めぐるの顔が歪んでいた。
「ぐっああああああ!」
「「「めぐるっ!?」」」
三人はめぐるの異変に気付いた。
地面には血の後があり、めぐるの拳は指が変な方向に曲がり折れていて、腕は腫れ上がり紫色に鬱血していた。恐らく地面の血の跡は足の裏が擦りきれた血のあとであろう。
「きっ……ごはあっ! なっ……なにをじだ……」
血を口から吹き出しながらグシャラボラスが問いかける。
めぐるの体が緑色に光ながら
「【限界突破】は自分の身体能力を限界を越えるまで引き上げる魔法。そして、事前に身体強化の魔法を幾つかかけて入るため限界を更に越えることができる。反動が肉体を滅ぼすけどね……だけど……」
見る見るうちにめぐるの体の傷が癒えていく。
「アスクレピオスを自分にエンチャント……付与することにより回復魔法を唱えることなく負った傷は回復していく。これが女神が教えてくれた力の一つだ!」
また、瞬時に近づいて手を掌底の様に撃ち込む! グシャラボラスはかわそうと身をよじるがめぐるは手を鷲掴みにするように開き、爪を立て思いっきり引っ掻いた。
めぐるの使う掌底は普通の掌底ではなく、拳法では熊手撃ちと呼ばれる技である。
熊手撃ちは主に二種類の攻撃方法があり、一つは掌底のように撃ち込む技法と、もう一つは鷲掴みのように爪を立て引っ掻くように撃ち込む技法だ。
めぐるが使ったのは後者の方である。
「ぎっやあああああああああああ! めっ目があああああああああああああ!」
めぐるの右手はグシャラボラスの左目から顔を斜めに裂いた。
その斜めに裂いた通過点には鼻と口もあり、まるで獣が引き裂いたような爪痕が肉を抉っていた。
「ああああああっ!」
めぐるは右手を押さえると右手の爪は完全に剥がれているか、割れているかで指先から血が吹き出ていた。
そして……
「ごっ……があああああああああっ!」
めぐるの脇にグシャラボラスの蹴りが入り、めぐるは屋敷の門にぶつかり、敷地内にバウンドするようにゴロゴロ転がった。
「「「めぐるっ!」」」
三人の心配する声が重なる。
その三人の横をグシャラボラスが駆け抜け、敷地ないに飛び込む。
めぐるは回復する前に飛び上がるグシャラボラスに手をかざし
「【ホーリージェイル】」
「ぐむうっ! くそがああああああああああ!」
空間から光の鎖が表れグシャラボラスを拘束した。しかし、それと同時にめぐるの体の光が消える。
「ぐっ……」
「はっはっは! 貴様! 魔力が切れたな! この鎖の効果が切れたらすぐに殺してやる!」
『……その必要はございません』
「!?」
鎖で拘束されたグシャラボラスの上から更に、急に現れた魔物のような手がグシャラボラスを握り込む。
「ぐああああああ! まさか!? 貴様どうやって!?」
「これが……僕とヤコプさんの作戦だよ……」
『グシャラボラス……異空間に閉じ込めてやります』
「バカな!? なぜ……なぜだああああああああああああああああ!」
そのまま、グシャラボラスは空間の裂け目が急に現れその中に引きずり困れていく。
「ありがとうございます。ヤコプさん……あとで迎いに行きますね……」
駆け寄ってくるルリさん、スピカ、ヴィルヘルムがうっすらと視界に見えたが目を閉じた……
僕の意識はダメージのせいで消えた……
つづく