第16話 女神と書いてママからの警告
「めぐちゃま……」
目の前にはむぅっとふくれた女神さまが立っていた。
「あの~……なんか怒ってます?」
「なんかじゃないです! また、ママに相談せずに危険な場所に向かって!」
「やっぱり危険ですよね……幻影館とか噂になるくらいですから」
「あそこはヴィルヘルムだけのためにヤコプの作り出した守護空間です。例え、ヴィルヘルムと一緒に向かっても三人は幻影の餌食です」
「マジですか?」
「それに魔神の気配もします。近くに潜んで機会を狙っています」
「やはり、ヴィルヘルムの話に出てきたラボラスとかいう執事は72柱ですか……」
「はい。72柱序列25伯爵の爵位を持つグシャラボラスです」
「ですよね……名前まではわかりませんが一度アモンに合ってるのでそんな気がしました」
「アモンより厄介です。72柱の中でも奴は殺戮をこよなく愛する魔神です。妹を守るためとは言えあれほどの屋敷を作り上げるヤコプの能力は喉から手が出るほど欲しいことでしょう」
「ヤコプも超越位階者ですよね? 確か、王都には三人の超越位階者がいるって聞きましたがヒカリ、レイナ、ヤコプの三人ですか?」
「ヤコプはめぐちゃまよりも先に発現してますが実際は各国に認知されていません。よって認知されれば10人目ということになります。彼女は先天性のものでしょう。才能があった。しかし、グシャラボラスが無理矢理にこじ開けた性で力の暴走……」
「そして、あの惨事ですか……ちなみに僕とヤコプ以外の超越位階者は何処にいるんですか?」
「そうね~……うん。教えちゃいます! 基本的に超越位階者は各神々が監視してるんだけどね。めぐちゃまが言うんだもん。教えちゃいます!」
うわ~……ありがたいけどやっぱり甘いよ。
女神さまの前に学校の黒板ほどあるオレンジ色に輝く透明な電子的な板が出てきた。
……膝をぽんぽんと叩く女神さま。
……まさかな
「はい! 準備できましたよー! お膝においでめぐちゃま~」
ですよねー……もう慣れてきたのでテクテク近付きちょこんと座る。顔は超真っ赤である。
「まぁっ! うへへぇ~……」
なんかよだれ垂らしてるーーーーー!
「まっ、ママっ! これこの世界の地図だよね!」
「はっ……! こほんっ! そうよ~。で、ここに光ってる点が超越位階者の場所なのよ」
地図を見るとほぼ四角に近いような配置で王都→帝国→聖教国→魔国とされていて、王都2、帝国1、聖教国1、魔国2、あとは帝国と聖教国の間にある山岳地帯っぽいところに1、もうひとつは聖教国と魔国を挟む大河っぽいところに1。
そして、僕とヴィルヘルムのお姉さんヤコプで2……あれ?
「あの~、王都二人しかいなくないですか?」
「そうですよ? ああっ、各国の点の数が正しい数字ですが、聖教国と魔国付近にいる超越位階者、あとは山岳地帯のドラゴンを自分の派閥に勝手にカウントしてるだけです。ドラゴンは友好関係、もう一人は旅人みたいなものなので」
「他国の牽制みたいなものですね」
「そうです。流石めぐちゃま~」
めちゃめちゃ頭を撫でてくる。
……でもあれ? もしかして……
「これ僕も勝手に属してる的なことになりますかね?」
「言わずもがなですよ」
「……ですよねー。めんどいです」
少し話がそれたが幻影館に話を戻す。
「幻影館ですがどう攻略すればいいのですかね?」
「攻略と言われてもあの屋敷自体が異常空間だから何が起こるかわからないです。ダメなママでごめんね……ただ、一度ヤコプの石化を解けば幻影も解除される外です。今のヤコプは力を発動し続ける状態で石化しているようなものだから」
「そこまで教えてくれるだけでもかなり助かります」
「……あとね。めぐちゃま……」
「どうしましたか?」
「私……何処かで似たような話を聞いたことがある気がするの。館の噂に似たような話を……」
それは僕も感じていた違和感と似ていた。
「僕もそうです……初見じゃない気がして……」
こういう解りそうで解らない! でも、あとちょっと! っていうのが相当気になるタイプで眉間に皺がよる……
よくよく見ると女神さまも気になって思いだそうとしているが出てこないでムズムズしているような顔をしていた。
目があうと……
「「ぷっ……ふふふふ」」
ちょっとだけ笑えた。
「なんか、本当の家族みたいにそっくりでしたね」
「そうですね。でも、めぐちゃま……私は本当に息子だと思ってますよ」
頭を優しく撫でられる。
気持ち良くて少し目が細くなる……
「無茶をしないでくださいね……」
「はい……」
「グシャラボラスは強いです。まだまだ四人では勝ち目が薄いですが……五人ならなんとかなります……」
女神さまの作戦を聞いた……
ほんとに僕って最近マザコンなのかもしれない……
……
……
……
夢から覚めると太陽が登り始める早朝だった……
グシャラボラスとの戦闘はおそらくさけることはできない……
手が少し震える。
「おう。もう起きたのか?」
「ヴィルヘルム……」
寝床にしていた馬車から降りて、ヴィルヘルムに近づいた。
「さっきスピカと交代したんだが夜番って暇だね~。もう明け方だし……ほいっ! 飲むかい? てか、入れたんだから飲め」
ホットミルクをヴィルヘルムが差し出す。震える手でそれを受けとる。
「ありがとうございます……」
震えはヴィルヘルムに気付かれたようだった。
「寒いのか?」
「ちょっとね」
少し強がってた……年下の女の子の前で見栄を張る。
「まっ……まあ! ああ明け方だしなっ! ……よっしょ……」
ヴィルヘルムが隣に座り自分の毛布を僕にかけ、二人で一つの毛布を使った。
「こっこここここれで暖かいだだだろう!」
なんか、ルリさんとヴィルヘルムが気が合うのがわかる気がする。なんか似た者同士だ……
そう思うとおもしろくなり少し笑ってしまう。
「なななにがっ、なにがっおかしい!」
「いやいや、積極的なんですね。いい気分転換になりますよ」
ヴィルヘルムの反応がおもしろくて自然と震えもおさまっていた。
「積極的! 積極的に何をする気だ!」
「ちょっ、そういう意味じゃ……」
顔や露出している裸が真っ赤になっている……
そして……
ぼんっ! と音がなったようにびくっと震え……
「ふきゅ~ん……」
「ちょっ、ヴィルヘルム? ヴィルヘルム!」
ヴィルヘルムはのびてしまった……
つづく