表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロト版 あんたプリーストでしょ!~嫌われもの異世界転生~   作者: げんげんだの
第4章 金色の女神と鮮血の魔神
43/50

第15話(3) 幻影館


「めぐる!?」


「ヴィルヘルム!?」


 二人の驚きが重なる……


「むっ? 知り合いだったのかね?」


「陛下……たまたま昨日出会いまして……って、そしたら、ヴィルヘルムの屋敷が幻影館ってことですか?」


「めぐるが超越位階のプリーストなのか!? でも昨日はプリーストだって!」


「いや、初対面の人には超越位階だなんていいませんよ」


「それもそうか……ん! そうしたらどうなるんだ!?」


「昨日の話だと断ると彼は言っていたが」


「……めぐるめぐる……」


 スピカが袖を引っ張ってくる。


「どうするのよ。それよりどこで何があったの?」


「それはあとで話すとして、ヴィルヘルム昨日の酒場では断ってたけど改めてどうかな?」


「っ! ああ! よろしく頼む!」


「どういうことなのかね?」


 事情を皆にかいつまんで伝えた。


「そういうことなのか……でも、あの幻影館だぞ。大丈夫なのか?」


「あたしと一緒に入れば大丈夫なはずだ。姉さまのお話は発動しない」

 

「お話とは?」


「ここでは話せない道中で話す」


「ちょっとまって! そこって危険じゃないの?」


「だれだ? お前?」


「私はルリ。ルリ=セルルシアン。めぐるの護衛の騎士よ!」


「……スピカ……スピカ=フェイクファー……めぐるの恋人……」


「「恋人っ!?」」

 

 ルリとヴィルヘルムの声が重なる。ルリさん……そんな話一度も出てないだろう……

 スピカがぎゅっと腕にしがみつく。


「……否定……しない……これが真実よ……」


「なんてことだ……姉さまに紹介しようとしたのに」


「おいっ! 鮮血の魔神だったか!? 騙されるな! 私は一番長くめぐるといるがそんな話は聞いたこともないぞ! 安心しろ! ちょこちょこあいつはこうやってめぐるに甘える!」


「ほんとか?」


「ああっ! 私を信じてくれ!」


「ルリっ!」


「ヴィルヘルムっ!」


 ガシッ……っと握手をする二人。なんなのこれ?


「あの~……とりあえず出立しません?」


……


……


……


 カタン……カタン……


 荷物を山ほど乗せた馬車が目的地である幻影館を目指す。ヴィルヘルムが馬を操り目的地を目指す。


ヴィルヘルム=メルヒュン


種族 ヒューマン族 


年 14歳


ジョブ 不明


所属チーム なし


B74 W54 H86


身長 187




 陛下は少し呆れていたが見送ってくれた。

 のどかな道中を2匹の馬が荷を引く蹄の音と馬車の軋む音が鳴る。小川の側で馬車が止まる。


「よし……この辺で飯にしようか!」


「はい。構いません」


「幻影館はあとどのくらいなの? ヴィルヘルム?」


「馬車も荷物を積んでるからな。あと3~4日あれば着くかな?」


「結構距離ありますね。寝たきりのお姉さんは大丈夫なんですか?」


「ああ……心配ないさ」


「聞きそびれていたが、幻影館にこれから向かうのだが大丈夫なのか?」


「大丈夫さ。あたしが入れば姉さまの能力は発動しないさ。それに幻影館ではなく、正式にはメルヒュン家の屋敷だよ。没落したがね……」


「お姉さんの能力……それは幻影館とは別の【金色の女神と鮮血の魔神】に何か関連があるのか?」


「ルリさん、それはどういうことですか?」


「【金色の女神】は幻影館にすむ金髪の綺麗な長い美しい女性のこと【鮮血の魔神】赤髪をした魔神のごとく人を殺す女と言われてる」


「進入者を撃退、殺していたらいつの間にかそんな名前がついていた」


「殺していた……」


「それがあいつらに取っては幸せなんだ……拷問を繰り返されることの終止符になるのだから」


「その拷問というのはなんですか? お姉さんが関係しているのですか?」


 ぎりっ……っと悔しそうにヴィルヘルムの顔が憎悪に歪む。そして、何が起こったのかを話し出す。

 

 それはお姉さんとヴィルヘルムの昔話であった……


 姉さま……ヤコプ=メルヒュンはとても優しい姉さんだったんだ……


 



 ……あいつが来るまでは……



「お姉ちゃん! お話し聞かせて!」


「良いわよヴィルヘルム……こちらにいらっしゃい?」


 姉さまは優しく微笑む。

 金色になびく髪は貴族の中でもかなり有名で女神と言われるほど優しく母性溢れる顔に求婚者は後を立たなかった。

 そんな姉さまは優しいだけではなく、頭も良く教養も高い……当日3歳だったあたしは姉さまが自慢だったし大好きで甘えていた。

 

「では今日のお話しは【子どもたちの屠殺ごっこ】よ」


『 ある村に数人の子どもたちがいました。

「なにして遊ぶ~」

「う~ん何をしようか?」

「そうだ! 屠殺ごっこしよう!」

「なにそれ!?」

「あのね! お店で売れるように豚を切ってバラバラにすることだよ!」

「面白ろそう! そしたらお肉屋さんやる!」

「僕も!」

「私はお肉屋さんのおかーさん!」

「そしたら僕は?」

「豚の役ね!」

「うん! いいよ!」

 

 そして子どもたちの最後のごっこ遊びが始まります……夕方になっても帰って来ない子どもたちを探しに親たちが集まります。探していると小屋の中から楽しそうな声が聞こえてきます……


「あそこにいるみたいだな」

「こら! 何時だと思って……る」


 扉を開けて見た先には


 ぐちゃっ……ぐちゃっ……ぐちゃっ……ぐちゃっ……


「あっ! おとーさん今ねお肉さんなの! お肉買ってー!」


「うわあああああああああああ!」


 そこには一人の子どもを切り刻む子どもたちがいましたとさ……』



 当日のあたしは姉さまのお話を聞いたあと、ほとんどのお話しが恐すぎて泣いていた。泣いてる私を抱き締めて頭を優しく撫でながら姉さまは感想を聞くのがいつもの流れだった……


「じゃあ、ヴィルヘルム……私と屠殺ごっこやろうか? ヴィルヘルムはかわいいから豚さん役かな?」


「うわあん! 嫌だよ! 死んじゃうよ~! そんなことするのはおかしいよ!」


 姉さまは頭を優しく撫でた……


「ふふっ……冗談よ。これであなたがこの遊びをしたがったら私はとても怒り手を上げていたでしょう。ヴィルヘルム……あなたはまだ子どもですが物事の分別は知っておかなければなりません。ごめんなさい。今日のお話しは怖かったですよね?」


 今思うと姉さまの話は残虐性が強いが物事の分別や悪いことをしたあとの報いなど沢山の内容が詰め込まれていた。一度両親は姉さまを怒ったことがある。


「ヤコプ! こっちに来なさい!」


 ぱちんっ!

 父に叩かれ、白い透き通るような姉さまの肌はピンク色になった……


「あなた! もっと叱ってやってちょうだい!」


 母も叫ぶ……母はヴィルヘルムが自分よりヤコプになついていて、勉強や物事を教えているのが気に入らなかったみたいだ……


「お前は自分が何を教えているのか! わかっているのか!?」


「そうよ! ヴィルヘルムはまだ幼いのよ! マネしたらどうするのよ!」


「お父さま、お母さまはヴィルヘルムが真似をするとお思いですか?」


「当たり前だ! 小さい子にあんな話をするなんて!」


「自分の娘が何も考えず行動する愚か者……いや、人じゃないと言いたいのですね?」


「私たちはそんなことはいってない! 話をすり替えるな!」


「いいえ。お父さま、ヴィルヘルムは物事の分別がわからない愚か者だから真似をするとあなたは言っております。あの子は賢い子です。ちゃんと考える子です。このお話をするのはあの子に教養を学ばせることにおいて重要なことです! お二人は今まであの子に何を教えましたか? 食事のマナー、会談の所作、勉強……あらゆることを私が教えております。メルヒュン家は存続すら危うい状態……私は何があってもたった一人の大切な妹を守ります!」


「ぐっ……勝手にしろ!」


 部屋を出た姉さまは目に沢山の涙をためていた。この頃、子どものながらに家の状態が思わしくないのは知っていた。

 柄の悪い輩が家に押し入ったり、良くない所から金の都合をつけていたり……


 そんな時だ……


 あの男が来たのは……


「今日から執事として働かせて頂きます。ラボラスと申します……よろしくお願いいたします」


 今でもその男のニヤりと歪んだ恐ろしい顔が忘れられない……





つづく

久しぶりの後書きです!

ヴィルヘルムの過去の話が次の話まで続きます!

メルヒュン姉妹ですがとある歴史上の人物をモデルにしています!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ