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プロト版 あんたプリーストでしょ!~嫌われもの異世界転生~   作者: げんげんだの
第4章 金色の女神と鮮血の魔神
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第15話(1) 幻影館


「がっはっ……ぐう……」


 首を捕まれ、更には持ち上げられるレイナ。足をバタつかせもがく……


「おい……答えろ……」



 赤い髪のヴィルヘルムと呼ばれる女は目の色が暗く濁ってレイナを掴んでいた。


「やめろ! ヴィルヘルム! それでは話せるものも話せまいっ!」


「……おっといけねぇ」


「ぐあっ……ごっほごほ!」


 ぱっと手を離し床にレイナが落とされる。レイナは空気を吸い込みむせかえる……


「んで、回復系……プリーストの超越位階者ってのは本当か?」


「それは本当だ。そしてレイナに勝利したのもな」


 ぎりっ……と歯ぎしりの音がなる。


「そうか……そうか! そうか! やっとだ……やっと可能性が見えてきた……おい! 今日の積み荷にその超越位階者も連れてこい!」


「それは出来ない!」


 ガンっ! ピシピシっ! 王宮の太い柱に斧がめり込む……


「ふざけるな……こっちはそれどころではないんだ」


「まあ、話を聞け……例えば帝国がヴィルヘルム。君を差し出せと要求してきて私が許可したらどうなる?」


「は? あたしはこの国の物じゃないよ」


「それと同じだ。彼も私の配下ではない……しかし、今日私のもとへ帰ってくる。その時君に会うか聞いておく……明日またここに来るのだ」


「だからその言うことをあたしが聞くと思って」


「彼は【リープ】が使える。一生捕まえることはできないよ?」


「っち! わかったよ! 明日またここにくる!」


 ヴィルヘルムはドカドカと不機嫌そうに……しかし、顔はびっくりするほど笑顔でその場を後にした。



……


……


……


 

「マリーっ!」


 ブルーたちが駆け寄るがマリーと呼ばれる獣はガタガタ震えていた……

 ブルーが手を肩においた瞬間マリーの顔が一気に血の気が引き……


「ーーーーーーーーーーーっ!」


 声にならない悲鳴を上げた。


「パニックを起こしています! 男性は近付かないで! 早く離れて!」


 僕は声を上げた! エリーと数名の女性を除いた男性が全て離れた!


「めぐる! これは一体何がどうなっているんだい!」


 ブルーさんがけつアゴを押さえながら聞いてくる。


「間違いなく……あの盗賊たちに受けたことが心の傷になっています」


「くっそ……あのやろう……」


「めぐる。魔法で何とかならないの?」


「……うん。今探してる」


 僕は頭の中で【精神干渉系】の魔法を探す。


「これならどうだ!【メンタルキュアライズ】!」


 暴れているマリーに【精神安定魔法】をかける。本人も少し落ち着きを取り戻した。


「しばらく彼女には男性は接近禁止ですね……魔法に持続力を込めたので一週間は持ちます。それまでにマリーさんの心の安定を計りましょう」


「我々はしばらくこの村に滞在して復興に協力する。マリーにはエリーをぴったり付けておくよ」


「それがいいですね。僕も定期的にお伺いしますのでお手伝いします。いいよね? 二人とも」


「私はもともとめぐるがそうと決めたことには文句を言わない」


「……スピカも……でも……そんな……優しいめぐるが……すき」


「あー、またスピカは!」


「では、僕たちはこのあと予定もあるので王都へ戻ります」


「ああ! めぐる! 本当にセンキューだ!」


「【リープ】」



……


……


 王宮の部屋に戻った僕たちだが、まずは二人ともシャワーを浴びて着替えるようにと指示を出し、僕はギルドに戻り達成報告を行った。


「はいっ! これが報酬の銀貨5枚と銅貨8枚です」


「ありがとうございました。ちなみにこの辺にアクセサリーとか売ってる所、知りませんか?」


 普段お世話になっているルリさんとスピカになにかプレゼントをしようと思った。


「それならちょっと行った所に雑貨店がありますよ」


「ありがとうございます! そこに行ってみます」


 こういうサプライズプレゼントのようなことは初めてやるのでドキドキ浮かれていた。

 少しウキウキしている状態で歩いていると目の前にそれっぽい店が見えてきた。

 扉の横にはショーウィンドウが並んでおり色々な商品が陳列されていた。その窓ガラスに顔をくっ付け中をガン見している赤毛のポニーテールで黒に近い紫交じりの鎧の女性がいた……


「……ふわあああああ……かわいい……」


 女性の目の先にはデカって思うくらいの大きなクマのぬいぐるみがおいてあった。

 身長はかなり高いし体つきががっちり鍛えられているので歳上なのかな?

 僕はとりあえず横切って店に入ろうとしたところ……


「はあ……はあ……ほしい……」


 女性は顔をショーウィンドウにくっ付け目が血走りヨダレを垂らしていた。それはセクシーに見える感じではなくどちらかというとゾンビに近い……


 その変な女性を横目に僕は店に入った……


……


……


……


 ヴィルヘルムはショーウィンドウにへばりついていた。


「ほしい……ほしい……」


 実は彼女、見た目に反しぬいぐるみ好きで家の自分の部屋はかなりのファンシーな状態である。


「ぐぬぬ……このあとしばらくすれば王都からの食料、金銭、日用品の援助が入る……しかし! このぬいぐるみに使われてる素材は一級品! ぬいぐるみの癖に王金貨1枚がむしろ安いくらいだ……今は援助前だから金も金貨2枚と銀貨6枚しかない……ぐあああ……王様に言って金だけ先にもらうか?……しかし、ここを離れてぬいぐるみが先に誰かの手に渡るのは……どうすればああああ!」


 とヴィルヘルムが頭を押さえている間にぱっとショーウィンドウからぬいぐるみが消え【売り切れ】という立て札に変わった……


「は?」


 ヴィルヘルムの思考が30秒ほど止まり……また二度見してみた。



【売り切れ】



 両手両膝が地面に着く……


「うそだああああああああああ!」


 ぎぃ……

 店の扉がゆっくりと開きそちらに目を向ける



……


……


……


 店の外にクマのぬいぐるみを持って外に出た。直後変な視線を感じる……恨めしそうにこちらを見る赤毛の女性だ。

 すっ……とその女性にクマのぬいぐるみを差し出した。


「……へ?」


「差し上げますよ。今持ち合わせないんですよね」


「なっ! どうしてそれを!?」


「店の中まで声が聞こえてましたよ……それに周りを見てください」


 ヴィルヘルムは周りを見渡したら周囲に人だかりがいつの間にか出来ていた。


「見せ物じゃねえぞ! こらあ!」


 怒号をぶつけるとひぃっと声を上げ周りの人が去っていく。


「んで、いいのか!? こんなに効果なもの!」


「はい……というか店に他の客が入ってこないからセットで買うと安くするって言われたので。店長からしてみると安く売るから交渉して移動させてくれってことだったんじゃないですかね?」


 現に周りの人が店にぞくぞくと入っていってる。


「そうしたら頼む! 金は夜まで待ってくれないか? 夕方に金は手に入るから近くの店で待ち合わせよう!」


「いや……別にお金は……」


「ダメだ! あたしの気持ちが納まんねぇっ! いいか絶対だぞ! そこの飯屋で待ち合わせだからな!」


 何処かに女性は走って行った……

 強引だなぁ……と思いつつめぐるはリープで城へと戻った




つづく

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