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第13話(3) 御前試合



 【リープ】にて連れて来られたのは訓練場というよりも円形の闘技場であった。半径25メートルほどで下は地面でさらさらとした砂。観客席のようなものもあり騎士団やルリさん、スピカもそこにいる。陛下、王女さま、ヒカリの三人は少し高い位置から観覧するようだ。


「【アスクレピオス】!」


 聖杖アスクレピオスを出現させる。アスクレピオスは回復や病気を司る聖杖となっている。一騎討ちで怪我をした際、回復力を強めてくれるため装備しておく……


「ほう……杖を使うのか? やる気を出してくれたみたいで嬉しいよ……」


 レイナが剣の黄金の柄に手を伸ばした瞬間!


「レイナっ! ダメーーー!」


 ヒカリの大声が鳴り響くが構わずにレイナは剣を抜き放つ。刀身にも所々に黄金がライン上にデザインされており、加えて不思議な文字らしきものも描かれた神秘的な剣だった!


「馬鹿者! 聖剣ティルフィングを使う許可はだしていないぞ!」


「ティルフィング?」


 陛下も大きな声で叫んでいる。隣に座っている王女さまは剣を見て顔が真っ青になっていた。


「ふっ……私の武器の名前だよ。聖剣ティルフィングっていうなっ!」


 始まりの合図もなしに一瞬にして距離を詰められ剣が振り下ろされる……


「ちぃっ!」


 ガキィンっ! という強い音と火花が散った。振り下ろされる剣を杖を斜めにして力を流した。本当は相手の突撃、振り下ろしてくる体の力のかかり方を利用して回し蹴りを胴に叩き込む【流し受け蹴り】をしたかった。上手く当てれば鎧をしていようが強化されためぐるの脚力であばら骨を粉砕できた。

 しかし、想像以上の速さと力のためタイミングをつかみそこないめぐるはその場から飛び退いた。


「へぇ……今の一撃を避けるとはね」


 地面を見ると綺麗に地割れが起こっていた。


「……まじ? とんでもない剣ですね」


「聖剣ティルフィングには数多くの逸話があってな……その一つだよ。岩や鉄を紙のように簡単に切り裂くのさ! ……にしてもなんだい? その杖は? このティルフィングで切れない武器とあったのはこれで二回目だねっ! 【斬撃】っ!」


 端まで逃げたので距離としては40メートルくらいあるにも関わらず、遠くの位置で刀を振るった。何をしているんだ? と思った瞬間胴に斜めに熱さを感じ、見ると血が吹き出してきた。


「……がっふっ! なぜ?」


 アスクレピオスについている蛇の目が光と同時にすぐに傷が癒えた。

 見ている全てのものが叫んだ。アスクレピオスには使用者の魔力を自動吸収しオートで回復魔法を使用することができる。


「凄いな! 浅くとはいえバッサリときったのだがな」


「なんなんです?」


「【グランドマスター】という最高位の騎士になると斬撃を魔力にて飛ばすことができるんだよ。加えてティルフィングには魔力で狙った相手への攻撃は必ずあたるんだ」


「ズルい能力ですね……」


「私の種を明かしたのさ。一瞬にして傷を癒したあんたの力を教えな」


「教える必要はないです。頭空っぽのあなたが勝手にペラペラ話しただけですからね」


「貴様……」


「レイナもうやめて! めぐるさまを殺す気なの!?」


 ヒカリの大きな声が聞こえる。 えっ、殺す気なの?


「レイナよ! ティルフィングは一度抜き放つと誰か一人を殺すまで鞘に戻すことはできない! その呪いはどうするつもりだね!」


「こいつを殺す気はない! 一人を殺す呪いは捕らえた悪人の首をはね飛ばす! ……ただこいつが死ななければの話だがなっ!」


「っ!」


 また斬撃が飛んできて太ももをざっくり切り裂く。そして、蛇の目がまた緑色に輝いてめぐるの傷が治る。


「すぐになおっても死ぬほど痛いんだよ」


「めぐる! もうやめて逃げようよ!」


 ルリさんが叫ぶ。スピカも今にも飛び出しそうな勢いだ。


「待っててください。こいつを倒して皆で仲良くこのあと王都を探索しましょう。何があっても信じてください」


「……めぐる……」


 そう……僕には秘策があった。


「【ラピッド】」


 高速移動魔法を使いこちらも仕返しで一瞬にして距離を詰めた。体勢いに身を任せ後ろに捻り踵から相手に当てるイメージで蹴りを繰り出す。剣のリーチに勝る技。空手の【回転後ろ回し蹴り】だ!



……


……


……


 めぐるが連れの二人組との会話が終わった瞬間飛び込んできた! 私は自分のされたこと全く同じ不意討ちをかけられ動揺して足を後ろにもつれさせてしまった!

 ブオンっ! と鋭い音と風が腹を掠めていった。恐ろしい威力の蹴りを寸前で奇跡的に交わすことができた! 好機と思い剣を振るおうとした時、蹴りにつづくようにめぐるの持つ杖が横凪ぎに振るわれていた。

 二段構えかっ!? 剣の振り下ろしはそのままで片腕を離し、籠手でガードする。

 

 ゴキャッ! と鈍い音がなった。腕が折れた音だ。しかし、そのまま私の剣の勢いは殺さない。


「でりゃああああああああああああああっ!」


 確実な手応えがあり血飛沫が舞う。そして、後ろの方でドサッと鈍い音がなる……


「ぐっあああああああ!」


 目の前でめぐるが叫んでいた。私も横にゴロゴロと転がり立ち上がりめぐるを見ると右腕が切り落とされていた。

 歓声なのか悲鳴なのかわからないが大きな声が上がる! 

 

 キィン……と耳鳴りがするぐらいに!

 私は勝ったのだ! 震える足に力を入れながら立ち上がり叫ぶ!


「うおおおおおおおおおおおおおっ!」


 奴に近づき剣を叩き付けて勝利の宣言を行うんだ! そうだ! 私は勝ったのだ! 我らが王都騎士団を! そして、唯一無二の大切な存在であるヒカリを軽んじたこの男を叩きのめし目的を果たしたのだ!


 私はめぐるに向かい歩き出した……


 キィン……

 

 どっくん!


 心臓が急に跳ね上がるような感じがした……まだ、倒れこんでいるめぐるに視線を戻すと急にその視界が反転した!

 私は何が起こったのか、わからないまま恐らくその場に倒れこみ……


「……うっ……おえっ!」


 バチャバチャっと口から嘔吐した……


 気持ち悪い……


 動けない……


 何が起こっているんだ……


 顔をあげると歪んだ視界の先にめぐると思われる人が腕を押さえながら、化け物のように歪んで移り……


「……三手……先は読まれて……っぐう! いなかったようですね……」


 声が歪んで聞こえる中、ぐしゃっ! と自分の吐いた吐瀉物の上に倒れ込んだ……


 私の最後にみたのは不気味なくらいの赤色に光るめぐるの杖にデザインされた蛇の目であった……




つづく


 

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