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第13話(1) 御前試合


「ここで待っていてください」


 自分が鏡のように写るほどの綺麗な大理石の床と柱。所々に散りばめられた青い旗や、日よけのカーテンのようなものの。目の前には3段ほどしかない階段がありその上には立派な椅子が二つ用意されていて、後ろには大きな紋章が刺繍された大きな段幕が下げられていた。

 まさに王座の間というやつである。

 転移魔法にてこの場に連れてこられためぐる一向は階段から少し離れた位置に跪いていた。めぐるの【リープ】という魔法はめぐるの記憶にある場所全てに転移することができるため最低限の場所しか見せないためであろう。

 王座の間ではめぐるたちを挟むように騎士たちが配置されていて総勢50~60人もの人員が配置されていた。


「とりあえず、二人はこのまま跪いてて。僕の指示まで動かないでください」


「わかった。わたしはめぐるを信じているからな」


「……でも……あぶない……ってなったら動く……から……」


 小声で話していると……


「国王陛下ならびに王女さまが参られる! 忠義の構え!」


 大声が鳴り響くのと同時にガシャっという音とともにそれぞれ自分たちの剣を抜き顔の前で構える。身を固くして待っているとカツっカツっ! という複数の足音が聞こえてきた。音が鳴り止むと……


「面をあげよ……」


 言われた通りに顔をあげると目の前に4人の人間がいた。椅子を挟むように階段の下にはヒカリとレイナ……先ほどまでと違うのは二人の鎧だ。

 ヒカリは青いサファイアのような深く透き通るような鎧。

 レイナは赤いルビーのような燃え上がり激しく煌めくような鎧に黄金の柄の剣を持っていた。


「我がこのガイラルディア王国の国王。ガイル=ガイラルディアである。そして、横にいるのは我が娘にして王女リリーナ=ガイラルディアである」


 国王様は恰幅のいいボテっとしたお腹に整えられた髭を生やした白髪の男であった。パッと見の体型は中年のおっさんそのものだが椅子を握る手のゴツゴツした所と雰囲気が若い頃はバリバリに鍛えていたであろう風格を醸し出していた。

 横に座っている王女様はピンク色の絹のようなさらさらの長い髪。透き通るような白い肌に白桃のような薄いピンクで柔らかそうな唇。美人というよりはかなり可愛い部類の小柄な白いドレスを来た女性がいた。


「許可する名乗りたまえ」


「はい。僕の名前はめぐるといいます。後ろに使えている二人はルリ=セルルシアン、スピカ=フェイクファー。僕の大切な仲間です」


「ふむ……そしてめぐるといったな。君はここにいる超越位階であるレイナを宮殿前にて力でねじ伏せたというのは事実であるな? そして、最近離れた街に現れた9人目の超越位階者であると……」


 王座の魔が一気にざわつく……

 レイナさまが……? あり得ない…… 3人係でも不可能だ…… 卑怯な手を……


「静まれっ! 陛下の御前であるぞっ!」


 レイナの怒号が響き渡る。おまえもうるさいよ……超うるさいよと心の中で思う。


「あわわわわ! リリーナさま申し訳ございません! レイナ! リリーナさま驚いちゃったじゃない!」


「もっ申し訳ございません!」


 王女さまは先ほどのレイナの怒号にて青い顔をして涙目でぷるぷる震えていた。


「はあ……リリーナは相変わらず臆病だな。これでは女王としての継いだ時の国が心配だよ……君もそう思わないかね?」


 陛下は僕のほうを見た。何か試しているような顔をしている。これは持論になってしまう……というより前に現世で読んだ漫画の言葉だけど。


「陛下。お言葉ですが僕は王女さまの性格をしっかりと存じませんが大丈夫かと思います」


「ほう……理由を聞こうか」


「はい。僕の考えで全てに該当する訳ではございませんが臆病は確かに聞こえは悪いかもしれません。しかし、誰よりも危機察知に優れていると考えております。経験を詰めばですが王国の危険、王国の不穏をいち早く察知して対処できる知的な王女さまになれる将来性を持っているかと僕は思います」


 じっ……っと国王陛下を見つめる。視線が熱い。あれ? なんで僕はおっさんと見つめあっているのだろう?

 すると国王陛下は大きく笑い出した。


「はっはっはっ! 君は面白いな! 私の言葉を肯定しおべっかを使うのではなく否定をし、逆にリリーナを立てるとはな! こんなことは初めてだよ! 君と私は初対面だが私の言葉に反して処罰されるとは思わなかったのかね?」


「私も王女さまと同じく臆病者です。ダメだった時は目一杯抵抗させてもらい逃亡する予定でした。僕は王女さまが臆病と言われても恥じることはないと思います」


 僕は微笑んだ。ふと王女さまと目があったら王女さまは顔を真っ赤にして手でその顔を隠していた。照れているのかな? と和んでいたら、


「貴様っ! 陛下に向かってなんて口の聞き方だっ!」


「よいっ! レイナ控えろ! 私が話しているのだぞ!」


「はっ! 失礼致しました!」


「君は面白いな! それが世界で9人目の超越位階者か!? おっ、丁度準備が出来たようだな? それで君が本当に超越位階なのか確認させて頂こう」


 何人かの従者がテーブルとギルドで見た水晶を持ってくる。不思議そうに見ていたら、


「ギルドじゃなくても軍の期間にはジョブの登録や確認用の同じくものがあるのよ。ここでめぐるのジョブを確認するみたいね……気を付けてね」


 ルリさんが囁いてくる。僕は頷き心配する二人の頭を撫でた後、テーブルに向かい歩き水晶に手を当てる……すると初めてのジョブ登録と同じように辺りが光輝いた。従者の人間が水晶を見てガタガタ震える。


「どうだね?」


「へっ陛下! この者の言う通り【超越位階】です! なにより凄いのはプリーストなどの回復系の頂点の【神託者-オラクル】です!」


「ほうっ!」


「えっ!? めぐるさまは超越位階!」


「……やはりな」


 周りがざわつく……


「静まれっ!」


 ガタッ!


「レイナ! リリーナさま大丈夫ですか!?」


「あっ!? リリーナさま! 申し訳ございません!」


「っつう……」


 またしても王女さまはビビってしまっていた。流石にビビり過ぎな気もしてきました。今度は椅子ごと横に倒れてしまっていた。指を涙を流しながら押さえていて恐らく突き指でもしてしまったのであろう。 


「【ヒーリング】」


 離れた位置の王女さまに向けて魔法を放つ。即座に騎士たちが剣を構え駆けつけてくる。しかし、誰よりも早くルリさん、スピカが駆けつけ武器を構え牽制する。


「……がるるるるるるっ!」


 ……いや、スピカは威嚇か。


「やめてくださいっ!」


 一瞬にして静まり返り声の方を向くと、ドレスのスカートを握りしめ目に涙を一杯溜めながら王女さまが顔を真っ赤にして立っていた。


「わたくしが勝手にびっくりして自分のせいで転んでしまい怪我をしてっ! 誰よりも早く治して頂いたわたくしの恩人に剣を向けるなどいくら皆様でも許しませんよっ!」


 この場の皆がびっくりして目をきょとんとしていた。びくびくしていた王女さまがこんなに大きな声で叫んだことを見たことがないのであろう。それとは別に王女さま自身も自分のしたことに気付き顔を一瞬で真っ赤にして俯いてしまった。誰も何もしゃべらない……気まずい!


「陛下の御前で許可なく魔法を発動させてしまい。誠に申し訳ございません! 騎士の皆さまは忠義を全うしての行動です。もし罰を与えるなら僕にお与えください」


 頭を下げて謝罪する。


「そんなっ! めぐるさまはわたくしのために! わたくしが悪いのです御父さま!」


 王女さまもあわてて言葉を発する。


「はっはっはっ! 君は本当に面白いな! めぐる! 私は君を気に入った!」


「御父さま!」


「はっはっはっ! リリーナもあんな風に堂々と意見を伝えられるとはな! ヒカリ、レイナ! 騎士を下げさせなさい」


「はっ!」


「それでヒカリ……我が国の勇者であり王都騎士団の代表である君の意見を聞こうか」


「はいっ! 私はめぐるさまには王都騎士団に配属して頂きたいと思います! 先ほどの回復魔法の制度手腕! 王都を代表として世界に振るうべきですし、仲間も癒せるので今後部隊での活動が期待できます!」


「ふむ! 私としても是非めぐるがほしいっ! ……なによりリリーナも気に入ったみたいだしな!」


「はいっ!」


 陛下、王女さま、ヒカリともに笑顔がめちゃめちゃ輝いている! 


「それでどうだろうか? めぐる! 我が国の最高騎士団である王都騎士団に所属してくれないかね! もちろん! それなりのポストを用意する! 私もリリーナも君を気に入ってしまったんだ!」


 ……答えは決まっている


「陛下……お断り致します」


 



つづく

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