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第12話(6) 王都へ……勇者とプリースト



「会えるわけない? 僕だけということですか?」


「物わかりが悪いな。そういうことだよ」


 僕は思った。この人たちに何を言ってもダメなんだなと……ふつふつと込み上げてくる怒りを押さえつけ一つの考えが浮かんだ……


「【リープ】」


「なんだと!?」


 狼狽えるレイナを他所にまた、めぐるが戻ってくる今度は二人を連れて……二人はめぐるに抱きつく……


「めぐるめぐるめぐるめぐるめぐる!」


「めぐる! びっくりしたんだぞ! 急に消えて!」


「ごめんなさい。あのポンコツ勇者に連れて行かれるのは予想外でした。もう大丈夫ですから」


「貴様っ……なぜ【リープ】が使える!? プリーストだろ」


「あなたのところのクソ勇者とは一緒にしないでください」


「今なんて言った?」


「人の気持ちを考えないヒカリとか言うやつは【勇者】じゃなく【愚者】って超越位階じゃないのかって言ったんですよ」


「きっさまああああああーーーーーー!」


 レイナがいつ抜いたかもわからない剣で斬りかかる。

ガキィッン! と大きな音がなり、ルリが聖剣で剣を防ぐ……めぐるはルリの横から手を素早く伸ばし、レイナの親指の付け根を握る。剣の束との間に付け根を握るめぐるの指が入り込み握りが弱くなった所をルリが思いっきり聖剣を滑らせレイナの剣を弾き飛ばす……


「くっ!」


 レイナは弾き飛ばされた剣に目がいっているがめぐるはその隙を逃さない。親指の付け根を持った片手はそのままで、もう一方の手で手刀を打つ部分である小指の付け根を覆うように持つ、そしてレイナの胴体と反対側へ捻り落とすイメージで相手の手を真下やや後ろに落とす……

 ぴきぴし……っとレイナの腕が軋み


「うぐうっ!」


 と痛みと共にレイナが少し体を浮かせたタイミングで内側へと回し込む。レイナは一回転して地面に背中から叩き付けられる。

 この技は合気道でいう【小手返し】、拳法でいう【手首落とし】という技で関節の駆動範囲を理解していれば女、子どもでも使える護身技。合気道なら投げて終わりだが拳法は流派によってそこから派生する技がある。

 投げ飛ばした際、相手の手は掴んだまま相手の背中に爪先をねじ込み、手を引きながら蹴りあげるとうつぶせになる。すかさず相手の肩関節に自分の膝を体重をかけ押し当て、手首を返したまま相手の背中のほう90度になるように腕を固める。【背面肩固め】という関節押さえ込み技だ。


「ぐあああ……ああ……」


 肩に激痛が一瞬ではなくじっくりと入っていくのでレイナの喘ぐ声が響く……


「なにをやってるの!?」


 ヒカリが走ってやってくる。


「ひどいよ! レイナを放して!」


「何を言ってるんですか? 僕は仲間を連れてこなかったことに対して苦情を伝えたらいきなり斬りかかってきたところを押さえ込んだだけですよ?」


 腕に体重をかける……


「うぎぃ……あああああ!」


「レイナ!」


「僕の要求は一つのです。ルリさんとスピカと一緒に行動することです。約束して頂けますか?」


「わかったわかったわかったわかった! だからレイナを放してよ!」


「このあとの越権にも同席させます」


「わかったって言ってるでしょ!」


 僕は立ち上がり固めた腕をもとの位置に元に戻すと同時に後ろに飛び退く……


「レイナ大丈夫!?」


 ヒカリが駆けつける。


「私はっつ! 大丈夫だ!」


「レイナ! 何があったの?」


「くっ……」


 黙り込むレイナ。


「だから、言ってますよね? レイナさんが斬りかかってきたので自衛したと?」


「レイナはいきなり暴力を振るうような人じゃないわ!」


「いやいやいや! 初対面と酒場で二度いきなり暴力を振るって来たじゃないですか!?」


「そうだけど! そうだけど! 斬りかかるなんて!」


「いや、それはあなたが原因じゃないですか!?」


「どういうことなの?」


「貴様! てきとうな!」


「レイナ! ……少し黙ってて!」


「ぐっ」


「あなたは僕を王都騎士団に入隊させたいのですよね?」


「そうよ。内容は国王との越権で説明するわ」


「なぜ僕の仲間はこの場に連れて来てくれなかったのですか?」


「王都騎士団に入隊はめぐるさまだけ。あとのお二人には縁を切ってもらうか、別の道を進んでもらう予定よ」


「なにを勝手な!」

「……ぐるるる……」


 二人が堪らず声をあげる。が僕は手を出し納める……


「僕は二人とも大切な存在です。蔑ろにはできません。国王とお話をさせて頂く時は二人とも同席させて頂きます」


「ダメだ! どこぞの者かわからない聖剣使いと穢れたハーフエルフなぞ、国王に会わせられるわけないだろ!」


「レイナの言う通り、それは難しいです」


「さっき腕を折らない、手を離す時の約束だったはずですよね」


「確約はしていないわ!」


「ダメです。同席させます。これが僕から出せる最低限の譲歩です」


「ふざけるな! 他かがプリーストの分際で何様だ!」


「オラクル……」


「は?」


「……!?……」

「めぐるっ!?」


「僕は9人目の【超越位階】プリーストの最高位【神託者ーオラクルー】です!」


「めぐる! どうして!」

「……めぐる……」


 二人は心配をしてすがり付いてくる。僕は二人の肩をぎゅっと抱く。ヒカリの顔が蒼白になり震えながら……


「本当なの……?」


「可能性は高い……ヒカリ以外にも転移魔法【リープ】が使えるからな……かなり上位の存在で私たちと同じ超越位階は嘘ではないだろうと私は思う」


 今さらだが目立たないように乱発していた【リープ】がそれほど凄い魔法だったとは……でも確かに一度行った場所に瞬間移動できるとかかなりイカサマですよね。


「僕は超越位階です。その僕の条件がたった二人の仲間……大切な人たちを同席させることです」


「わかりました。めぐるさまが私たちと同じ超越位階であるなら国王もお許しくださると思います」


「こちらもそれなら構いません……二人とも行きましょう」


「めぐる……私たちも着いていっていいものなのか?」


「はい……僕には確認したいことがあります」



つづく

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