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第12話(3) 王都へ……勇者とプリースト


「あっ、めぐるーー!」


「……おそい……」


「ごめんなさい。なんか変な奴らに絡まれてしまって……」


「何があったんだ?」


「実は……」


 かくかくしかじかで先ほどの出来事をルリさんとスピカに話したんだけど……


「……スピカいくよ。さっきまでの特訓で体が暖まったよね?」


「……ルリ……もちろん……」


「ちょちょちょ!? なになに二人とも!? どこに行くんですか!?」


「……ぶっとばす……」


「スピカ! よくできました! んで、めぐる。そいつらの特徴教えてね」


 やはり僕のこととなると二人とも戦闘民族だな……思ってくれて嬉しいけどさ……


「いいよ。二人がそう思ってくれるだけて凄い嬉しいよ! ぶっちゃけ、もうそいつらと関わりたくなしですし……」


「そうか……めぐるがそういうなら」


「……ぶっとばしにいかないの?」


「それはなしで。さあて、ご飯でも食べにいこうよ! 気晴らしに!」


「……ごはん! ……いく!」


「じゃあ行きましょう」


 宿屋の近くの酒場でごはんを食べる。


「はぁぐ……はぐはぐ……むしゃむしゃ……」


 相変わらずスピカはガツガツごはんを貪る。ハムスターみたいに頬いっぱいに膨らませて


「スピカ美味しい?」


「……うん! ……この前のところも良かったけど……マナーのないほうが楽でおいし……んぐんぐ」


「ふふっゆっくり食べていいんですよ」


「……うん!」


「スピカは相変わらずだな」


 やっぱりこういう食事が楽しいな! 僕もごはんを頬張るなんか気を紛らわすことができたな~



「あっ、さっきの人!」


 ……げっ!? なんなんだよこのタイミング!


「きっきさま! なぜここにいるんだ!」


 やっぱりこの女騎士嫌いだ。ルリさんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。


「こいつらがさっきの?」


「はい。いないものとして無視しましょう」


「ぐるるるるる……」


「スピカ……あーん」


「っ!? あーん……おいし……」


「あっ!? スピカずるいぞ!」


「モテモテなんですね」


「……」


「貴様。さっきから喧嘩を売ってるのか? こっちは買うぞ?」


 ドカドカとレイナという女騎士が近づいてくる。しかし、ルリさんが立ち上がり道を遮る。


「どいてくれないか? 私は喧嘩を買ったんだ」


「主はあなたのお連れさまを助けたそうですが? それのどこが喧嘩を売る行為なのでしょうか?」


「そいつは先ほどから無礼な態度を取っているだろう!」


「果たして主は無礼者なのでしょうか? 助けたのにも関わらず暴力を何回も振るおうとしてくる……同じ立場なら無視して関わりたくないと思うことは当然のことです。違いますか?」


「ぐっ」


「私とそこにいる従者スピカはあなた方の行いを聞き、今でも腸が煮えくり返るほど不快です。しかし、主は手を出すなといいました。ですが……」


「……ぐるるるるる」


「きゃあっ!」

 

「ヒカリっ!」


 レイナが後ろを振り返るとヒカリの喉元にはスピカが刃を突きつけていた。


「はいっ! 二人ともそこまで! こっちおいで」


 びっくりして動けない二人を余所に、ルリさんとスピカだけが戻ってくる。


「宿にもどろう。明日も早いし……」


「はい」

「……わかった」


「おいっ! まて!」


「いい加減にしてくれませんかね!」


 少し大きな声をあげた。二人は固まる。


「あなた方の本当にめんどくさいです。騎士のような格好ですがやってることはその辺にいるチンピラと同じ程度の内容です。」


「貴様! 私たちは王都騎士団だぞ!」


「じゃあ尚更クズですね! この前ギルドで王都騎士団に、痛い目にあいたくなければ、僕の横にいる二人を慰み者としてよこせと命令してきましたからね」


「なんですか……それは?」


「へー、自分の所の仲間の情報共有すらできない野蛮な集まりですね。もう関わってこないでください。失礼致します」


「失礼致します」

「……べー」


 偽物ジークだけど、まあいいや。とりあえず、食事代を支払いその場を後にする……


……


……


 漠然と私とレイナはその場所に取り残される。自分の仲間の部隊がやった行いに対して絶望していた。


「……くそ! 嘘に決まっている! 我々の王都騎士団がそんな下衆なマネをする訳がない!」


「そっ、そうだよね! レイナ! ……そうだよね」


「私がギルドに朝一番で確認を取ってくるから安心しろ! 奴の口から出任せだったと証明してやるから!」


「レイナ……うん! ありがとう!」


「そんな訳だから今日会うことができなかった。めぐるというプリーストにヒカリは朝一で必ず会ってくれ!」


「私に任せて! レイナ……おねがいね?」


「ああっ!」


 本当にレイナは頼りになるなと私は心底思った。レイナは私と同じ【超越位階】の【グランドマスター】。騎士における最高位ジョブ! 私なんかと違って力を引き出して戦うことができる! 私は【勇者】として産まれたけど戦いは怖いので訓練を全くしていない名前だけの存在だ……

 でも、レイナは違う! しっかりとした実力がある! そんなレイナが言うんだもん間違いないよ!


 ヒカリは自分の顔をパンパンっ! と両手で叩く。


「ようし! 気合い入った! レイナ! 明日のためにごはんを食べよう! すいませーーん! がっつり山盛りのお肉くださーーい!」


「ひっヒカリ!? 私はダイエット中なんだよーーー!」


……


……


 一晩開けて私は宿の部屋の前に一人でいる。レイナは昨日の件でギルドに向かっていた。昨日、宿のオーナーにめぐるというプリーストが帰ってきていることと、今日はまだ部屋から出ていないことはしっかり確認済み! 部屋に行くまで誰にもスレ違わなかったもん! 絶対今日は会える! 


「すうーーー……はあーーー……すうーーー……はあーーー……」


 深呼吸をしてまたパンパンっ! と顔を叩く……


「……よし! こんにちわーー! ごめんくださーい!」


 ドアをノックして叫ぶ……すると奥から「はーい」という声がして足音が近付いてくる。やった! ちゃんといてくれた! これで王都騎士団の皆が傷ついてもちゃんと治してあげられる! 皆が安心できる! あっ! そうだ! 王都の人々の病気とかも治してまわっていこう! 凄い凄い! この足跡が希望の音に聞こえる!

 きいっ……というドアの開く音がして本人の顔を見る前に私は待ちきれず……


「朝早くからごめんなさいっ! 私は王都の【勇者】ですっ! 世界の平和のために私の! 私の仲間になってください!」


「……っ!?」


 まあ、急に【勇者】の私が出てくるんだもん。相手もびっくりしちゃうよね? でも、民の……世界の平和を守るためだもん! 断るわけがない!

 私は頭を下げた状態でニヤニヤしていた……これで怪我や病気にみんながなることない! みんなをしあわせに……


「うん。お断りします」


 私は何を言われたのか理解することができなかった……


「めぐるーどちらさま?」


「……だれきた?」


 仲間と思われる人たちの声が聞こえたことにより、私は我に返る! めぐる! プリーストの名前あっている! でも、どうして! きっ、聞かないと!


「どうしっ……て……」


 その顔を……

 私は見たことがあった……





つづく

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