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第12話(2) 王都へ……勇者とプリースト



「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


「ったく! ごめんじゃねえよ! おもいっきりぶつかって来やがって!」


「ごめんなさいごめんなさい! 私! 前見てなくて!」


 ガラの悪い二人組に絡まれている女の子が宿の外にいた。女の子はボーイッシュな短い黒髪で声を聞かないと男の子にも間違えそうだ。青色の服に濃いマントのような物を羽織り、腰には剣が差してあった。


「あーあー腕がいてえや。おい! 女! どおしてくれんだよ! 慰謝料代わりにその腰のものもらおうか?」


「こっ……こここれはダメですぅ!」


「じゃあ何か? 俺らと遊んでくれんの? それはそれでいいけどよ~」


 なんか宿の前によく見る光景が広がっていた。なんなの? どこの世界においても不良というジョブは古今東西やることは一緒なの? というか宿の前で繰り広げられても通れなくて迷惑なんですけど……


「はい……ちょっと通りまーす」


 ガラの悪い二人組と女の子の前を手で遮り通り抜ける……

 

「えっ!?」


「はあっ!? ちょっとお前! 待てよ!」


「おっと、なんでしょうか?」


 すり抜けようとしたら肩を掴まれ止められた。


「いい人気取りか? こら! 邪魔しやがって!」


「あっ、通り過ぎたかったので続けてどうぞ……ではこれで」


「私に構わず行ってください!」


 あのー僕の服掴まないでもらっていいですか? 女の子は言葉とは裏腹に服を掴んで離してくれない。ガラの悪い男も肩を掴んで離してくれない……


「てめえっ! 正義の味方きどりいででででででで!」


 肩を掴んでいる相手の手首をもち、そのまま相手の腕をまっすぐに下に持ってく、その際に相手の肘の少し上の部分に腕を当てその部分を機転にテコの原理のように脇を締めながら相手の腕を反対側に折るように力を込める。拳法にある【立ち腕絡み】という技で勢いをつければ相手の腕を折ることができるがそこまではしない戦意を喪失させるために徐々にゆっくりと力を込めていく。


「いででででででで! 離しっ! 離して!」


「はいっ」


 ぽんっと軽く突飛ばして離してあげる。


「本当なら一気に腕を反対側にへし折れたんですよ? この前の事件のせいでこの街の警備兵は敏感になってるのでお互いここは見なかったことにしましょう!」


「んだとてめえっ!」

「おいっやめろっ……ってえ、悪かったよ兄ちゃんここはこれまでにしてくれ……行こうぜ」

「ちっ……女! 気を付けろよ!」


 物わかりが良く二人組は去っていく……


「ありがとうございました! 助けて頂きとて嬉しいです!」


「いや、お言葉ですが巻き込まないでください」


「あっごめんなさい」


「無関係の人を自分のいざこざに巻き込むのはどうかと思いますよ? 素直に助けてと言ってもらえたら考えましたけど……」


「ごめんなさいごめんなさい!」


「そうしましたら僕はもう行きますね……」


「おい! まて貴様!」


 後ろを振り返ると白銀の鎧を待った金髪で後ろで一つ結びにしたかなり美人の女騎士が立っていた。がっ! といきなり胸ぐらを掴まれ……


「貴様っ! 誰に手を出したのかわかっているのか!」


「僕はなにもしていませんが……?」


「ふざけるな!」


 胸ぐらを掴まれたまま持ち上げられ壁に叩きつけられた!


「ぐうっ!」


「ただで済むと思うなよ!」


「やめて!」


「……ヒカリ?」


 ヒカリ……おそらくさっきまで絡まれていた女の子だろう、金髪女騎士の手が胸ぐらから離れて解放される。


「……ごほっ……ごほっ」


「ヒカリ! どうしてこんなやつ! ぼこぼこにして投獄してやろう!」


「だから違うの! その人は私を助けてくれたの!」


「えっ!? そうなのか!?」


「わたしはヒカリ! ヒカリ=アルバイン! よろしく!」


 手を尻餅をついてる僕にヒカリという女の子は手を差しのべてきた……が、僕はかなり不快だった。二人組との厄介ごとに巻き込まれ、結果として助けてあげたにも関わらず、その仲間と思われる奴に叱咤される。なんなんだろう? そして、それを謝りもせず勝手に解決して自己紹介……

 僕はその手を取らず立ち上がり、服についた砂を叩いて落とす……


「えっ……」


「本当にあなたは迷惑な人ですね。助けたのにも関わらずお仲間は暴力を振るって叱咤する。そうしてニコニコ笑いながら自己紹介……あなたに名乗る必要はありません」


「きっさま! 確かにこちらが悪かったがその態度はなんだ!」


 また、掴まれそうになるがその手を弾く……


「なんなんですか……さっきからこのゴリラ女は……あなたがこの人の品位を更に落としていることにまだ気がつきませんか?」


「レイナ! いいの……私が悪いの! ……ご迷惑かけてすみませんでした」


「では僕はもういきますので……」


「ただ!」


 ヒカリの言葉を発して振り返る……


「レイナのことをゴリラ女と言ったことは謝ってください。確かにレイナは男より力が強いけど女の子なんだよ!」


 ホントになんなのコイツら……ちょーめんどくさい。関わりたくない。レイナっていうのは多分僕を掴んだ女騎士だろう……そもそもこいつには謝られていないのになぜ僕が謝るのだろう……


「先に手を出してきて謝りもしないその女性に僕のほうから先に謝るのはおかしくないですか?」


「たしかにっ! ほら! レイナもごめんなさいして!」


「……すまな」


「急いでいるので結構です!」


 もう関わりたくないので走ってその場から立ち去った……



……


……


 残されたレイナはとても不機嫌そうだった。


「ちっ! なんなんだあの無礼者は! 確かに、暴力を振るった私が悪かったが!」


「レイナ……もうやめようよ。私たちにもやることがあるんだから」


「そうだな。昨日の72柱のアモンの件で人力したプリーストがいるからそいつに話を聞かないとな! なんでも女神アルナさまから力を授かったそうだからな!」


「凄い回復魔法の持ち主めぐるさま……私たちの仲間になってくれるかな?」


「大丈夫だ! プリーストは信仰心が強い! きっと心強い仲間になってくれるだろう!」


「私、自信ないよ」


「ヒカリは【勇者】なんだからどうどうと胸をはっていればいいさ!」


「しいー! もう! 大声でそれを言わないでよ! さあ、いくよ!」





つづく






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