第11話(1) アモンの魔獣
どんちゃん騒ぎが終わり、部屋に入り自分が【超越位階】の【オラクル】というジョブの頂点の一角ということをスピカに伝える。
……が子どもの頃から捨てられ森で暮らしていたスピカにはイマイチ理解できていないようだった。ルリさんが説明に入るがそれでも「……?」という状態であった。ひとまずは説明できたからよしとしましょう。ここは安心して眠れるので魔法を唱える。……女神アルマさまに会うための魔法【コーリング】だ。
……
……
まどろみが終わり気が付くと最初の神殿にいました。……ひゅんと風が吹き抜けたと思ったら体制を崩された。膝の上に乗っている……この優しい匂いは女神さまだ……落ち着く……
などと思っていた矢先。パァンっ! と大きな音が鳴り響き、尻に衝撃が走った!
「うっ! ぐあっ! めっ、女神さま!」
パァンっ! パァンっ! パァンっ! 今度は3発もの衝撃と痛みが走った! というかこれヤバい! すでに割れてる尻が! 割れるっ!
「まっ、ママ! なっ! なんでですか!?」
「めぐちゃまの連絡が遅いからでしょっ! 3日に1度は連絡しなさいって言ったでしょっ! 今何日目だと思っているのですか!」
「いっ、5日です!」
スパァンっ!
「いっ……つう……ごめんなさい! ママっごめんなさい!」
ガチ泣きしながら許しを願うが……
「はぁ……はぁ……これは躾なのです……はぁはぁ仕方ないことなのです」
なんかトランスしてるーーーーー!
……
……
それから10発は叩かれたであろうか。もう尻はお猿さん状態ですよ。
「これにこりたらしっかりと連絡することです! いいですね……」
「ふぁい……」
叩かれた尻を優しく撫でながら諭される。
「めぐちゃま……見てましたよ。やはり、大変な目に会ってますね」
「はい……ママの愛が強すぎるのも問題です」
「あえて谷底に獅子を落とす気持ちです」
「その獅子魔法が使えるから3日に1度、ぴゅーって空飛んで戻って来ますけどね」
「まぁ!」
フフフっ……と2人の間に笑いが起こる。そして、女神さまから新情報を貰う。
「めぐちゃまに注意報です。魔王が動き出しました」
「……はい?」
「魔王はめぐちゃまの世界を征服……しようとは考えてません」
「それはまずいですね……厄介ごとが……ん? 考えてない?」
「はいっ。考えていませーん。」
「いやいやいやいや! 魔王でしょ! 普通は悪事を働くのでは!?」
「封印の時にママがこてんぱんにやっつけたからそれはないです。むしろ、この前復活したときに……ウチの子に手を出したら今度は封印じゃなくてピーしてピーするぞ? こら? ……という具合におど……お話してきたから大丈夫です」
ひいいいいいいい。いつものママじゃない……ガタガタガタガタガタガタこわい。こわいよー……
「問題なのは魔王にその気はなくても手を離れた元配下が独断で暴れまわる可能性が高いということです。現在、めぐちゃまの世界の超越位階者は9人。上級魔族はジョブランク最低でも9はないと厳しいです。これも世界でも数十名しかいないです。」
「それは不味いのでは?」
「そしてそいつらが暴れても魔王は止める力をもっていないのです。暴れる気がない魔族でも攻撃を仕掛けられたら自分を守るために正当防衛する。そして……」
「結局、戦争になると?」
「はい。可能性は高いです」
「そういたしましたら、なるべく関わらないように努力致します!」
また、感覚がゆらいでくる……時間のようです……
「そこはブレないのですね……もう時間のようですね。しっかりと伝えましたからね。気をつけてください。提示連絡は欠かさずに。めぐちゃまが死んでしまっても1万回しか生き返らせてあげられないので気をつけて。回復魔法があるからって薄着で寝ないこと。あと歯をしっかりと磨くこと。それから周りに女の子が増えましたがちゃんと節度ある……」
……
……
「ってながいですよっ!」
……朝ですか……日差しがまぶしい! んー気持ちいいな布団も柔らかいし……
「……んっ……めぐる……えっち……」
「うっうわああああああああああ!」
ドタドタドタドタ!
「めぐる! どうしたの!? ……ってはあああああ!?」
「……ルリ……おはー……」
「なんであんたっ! めぐるといっしょに寝てるのよ!?」
「……めぐるが……布団に入ってきた?」
「いやいや、ここ僕の部屋です!」
「……てへ」
「てへじゃなーーーい!」
「おうおう! 朝から賑やかだねぇ! 朝飯! 作ったから下りてきな!」
「お兄ちゃんおはよー! あっ、お姉ちゃんたちずるーい! 私もお兄ちゃんとねたーい!」
「おう……旦那! 外出ようや! ……久しぶりにキレちまったよ……」
「あたしゃあんたにキレてるがね!」
どごっ!
「はひっ!」
朝イチ夫婦漫才に笑わせてもらいました。美味しい朝ごはんを食べ終わったらいつも通り【ラピット】にて次の街に行く準備を整え戻ってきていざ、ルリさんとスピカを連れて出発と思いきや村人たちが入り口に集まっていた。
「またきてくれよ!」
「医者のじいさんもそろそろ寿命だろうから、ここで医者やってくれや!」
「わたしのお婿さんに!」
「いや、めぐるさんはわたしのよ!」
「スピカちゃん元気でな!」
「ルリねぇ大人になったら結婚してね!」
などなど、沢山の声をかけてくれる……
「旦那! ツケ! 残ってるからまた絶対来てくれよな!」
「ツケっ!? 足りてましたよね?」
「こっちの恩返しが足りてないんだよ! だからツケっ! ここはお前らの故郷だと思ってくれていいんだぜ! ……もちろん、スピカちゃんもな! そうだろ! お前ら!」
『もちろん!』
「……ヤバい。ちょっと涙でました。」
ぎゅっと2人の手を握り……
『また来ます!』
3人で村を出た。その足取りは軽やかなものだった。
続く