第2話 プリーストで決定されました
目の前に美しい女性が立っていた。
それは明らかに人ではなく神様というのが一目でわかりました。というかちょっと浮いてます。
「わたくしは女神アルマと申します。驚かせてしまってごめんなさいね。」
屈みながら尻餅ついている僕の前で自己紹介をする女神さま。
髪はピンク色で白い透けそうで透けてないチクショウな布の服には所々金の金具。透き通るような白い肌に極上の楽器よりも綺麗な声……何よりおっぱいも凄く大きいです。
「あのー。お身体大丈夫でしょうか?」
ぼーっとしてしまいました。
「あっ、あのいえいえ、体は全然大丈夫です! 見とれてしまって……って、すいません何でもないです!」
何を言ってるんだー! 僕はーー!
女神さまのクスクスという美しいこえが聞こえ、
「フフッ、めぐるさんは面白いですね。ありがとう。それではそろそろ今あなたに何が行っているのか説明してもよろしいですか?」
「あっ、お願いいたします。...女神さまに会えてるってことは僕は死んでしまったんですよね?」
「はい。めぐるさんは女の子を助けトラックに引かれて生涯を終えました」
「ははっ。やっぱりトラック相手に受け身は通じなかったみたいですね。あっ、女の子は? 女の子はちゃんと助けることができましたか?」
「はい。女の子は無事に助かりましたよ。こちらをごらんください」
目の前の空間が虹色に歪んだと思ったら映像が流れた。どうやら僕の葬儀の様子です。両親は……いないです。やはり、仕事で自分たち優先……ですよね。僕はその血をしっかり引いています。学校の先生はいるけども形式的な参加でクラスの人は勿論皆無ですねーー。
「めぐるさん……見てください……」
「女の子! 良かったです! 僕は助けられたんだ! あっ、一緒にいるのやっぱりあの時の女性! お母さんだったんですね!」
『ママ、お兄ちゃんなんで箱に入っているの?』
『お兄さんはね、あなたを助けた時凄く疲れて眠っちゃったのよ』
『そっかー! お兄ちゃんありがとう!』
お母さんが膝をついて涙する。
『娘を助けくださりありがとうございます! そして、ごめんなさい!』
「全然いいんですよ。僕、始めて人のことを考えてこんなにも嬉しいって思ったことないです」
ふと、自分手に温もりを感じる。女神さまが手を握ってくれていた。
「めぐるさん……あなたが行ったことはとても優しいことです」
女神さまの顔が近づきいい香りの温もりに包まれながらまた空間を覗くと
……カツっカツっ……と2つの足跡がする。
「うげっ!」
父さんと母さんが登場してきました。どちらも超一流企業の最前線チームに属し家は1年に片手で数えられるほどしか帰ってこない。帰って来ても全く話さず数時間も立たず家を出てしまう。
「女神さま! 神様ですよね? 両親を何処にワープさせるとか何か凄い力でこの場所から立ち去らせることできませんか!?」
「ええっ? できますけどー何ででしょうか?」
神様少し困惑してますが僕はそれどころじゃないです。
「両親は僕より厄介です! 仕事の鬼! そしてパーソナルスペースの覇者! 要するに自分たちの強い考え優先の人間です。きっと、僕の葬式の香典の確認で来たのでしょうが、きっかけとなったあの親子にも慰謝料とか請求しようとするでしょう! なので!」
唇に柔らかいものがあたり言葉が遮られる。女神さまが人差し指で僕の唇を止め微笑みながら、
「フフッ、ごめんなさい。めぐるさん本当に面白い。慰謝料請求とかこの場にいなくても請求されるじゃないですか」
「でっ、ですが……」
「しぃ~。神様を信じなさい。子どもを大切にしない親なんていないのよ?」
映像に戻ると泣き崩れて謝る女の子のお母さんの肩を父さんがガシッと掴んだ。
ヤバいーーー。僕は目を閉じた。
『お母さん、謝らないでください』
僕はそこの言葉に疑問を感じ目を開いた。そして涙が溢れた。
『お嬢さん、どうだい? おじさんの息子はカッコいいだろ!』
『うん! お兄ちゃん凄いカッコ良かった! あのねあのね! 私が大きくなったらお兄ちゃんを私のお婿さんにちょうだい!』
『ははっ、めぐるもやるな! こんな可愛い婚約ができて! トラックから引かれそうになった女の子を助けるなんて流石俺の子だよ!』
『違いますよ! あなた! めぐるは私に似たのよ!』
『いいや! めぐるは絶対俺似だね! ……そんなことでお母さん。うちのめぐるは自慢の息子でとても凄いことをしたんですよ。そんな息子にごめんなさいは不要ですよ。先ほどあなたが伝えたありがとうがぴったりです』
『そうですよ。めぐるは貴女方に感謝されど謝られる所なんて1つもないんです』
『お兄ちゃんありがとー! おっきくなったらお嫁さんにしてねーーー!』
女の子とお母さんは手を繋いで帰って行き、誰もいなくなった葬儀場で
『めぐるぅ‥ごめんよ……父さんらしいこと全然してやれなくて!』
『めぐる! ごめんなさい! お母さんもお母さんも!』
『めぐるは本当に俺たちの自慢の子どもだ! 死んだなんて!』
ーーー父さん、母さんーーーーー
『めっめぐる! どこなの?』
『めぐる! どこだ!』
ーーー父さん、母さん、僕さ2人のことを尊敬してました。超一流企業の最前線でバリバリ活躍してる2人をみていつか父さん、母さんみたいに活躍したいって思ってましたーーー
『めぐるならできるさ!』
『そうよそうよ! 私たちやり直しましょう! 小さい頃のように旅行したり!』
ーーーごめんなさい。やっぱり死んじゃったから生き返ることはできないみたいです。でも、父さんと母さんは厳しいことあるけど大好きです。さっきの2人カッコ良すぎて涙でちゃいました。ーーー
『めぐるぅ...』
ーーー父さんと母さんの子どもで良かったです。僕はずっと2人を見守り続けます! だから父さんも母さんも僕に見られていると思って気を抜かず今までみたいに頑張ってください! あともうちょっとせっかく僕がいなくなるのでデートでもした方がいいですね! あっでも僕が見てるから家族旅行にもなっちゃいますね! ……もう、時間みたいです。いつでも側にいます。悲しまないでください。大好きな父さん、母さん。ーーー
……
……
「女神さま、我が儘を聞いてくださりありがとうございました。」
「いいんですよ。それよりーーー」
女神さまに抱き寄せられ頭を撫でられる。僕の涙腺は崩壊した。
「うわぁああああああっん! 父さん! 母さん!」
「しっかりと泣きたい時にお泣きなさい。わたくしはめぐるさんを受け止めます。言ったでしょう?子どもが大切な親はいないのです……」
頭を撫でながら微笑み
「たしかにめぐるさんの世界には子どもを捨てる人間はいますが、それは親ではありません。めぐるさんはしっかりお2人のことを両親つまり親と認識しています。それは逆もしかりですよ。2人はプロジェクトを放棄してまでめぐるさんの元まで向かったのです……」
「めがぁみしゃま……」
「はい。なんでしょうか?」
「もうすごじ、ないででいいでずが?」
「フフッ、大丈夫ですよ」
声をあげて泣く僕を女神さまは優しく抱き寄せてくれました。
……
……
しばらくして落ち着いた僕は
「女神さま、ありがとうございます。落ちつきました。先ほどの通り物心着いた頃には母さんは家にいなく、失礼かもしれませんが女神さまに母さんを重ねていたのかもしれません」
ーー母さんあんなにおっぱい大きくないんですがね
「まぁっ!」
あれ? なんでしょうか? 女神さまキラキラし始めましたよ?
「めぐるさんさえよろしければ、ママとお呼びしてくださってかまいません。むしろ、呼んでいただけませんか? 今すぐ!」
ええっ!? キャラ変わってませんか!? むしろ、この迫力...
お願いを聞いてくれたことですし1度くらいなら
「まっ、ママ……」
「まぁっ! まぁまぁ、コホン! ...なあにママに何か聞きたいのですか? めぐちゃま~」
「めぐちゃ! ごほっごほっ! めぐちゃまって僕のことですか?」
「はい~。そうですよ~。ママの子どものめぐちゃまですよ~。もう凄い愛が湧いてしまって~」
マジですか……とにかく、落ち着いてこれからのことを……ってこれから? 死んだんですよね? ひとまず女神さまに聞かなくては
「女神さま! 僕はこれからどうなるのでしょうか?」
「……。ぷぃっ」
えっ!? 無視っ!? 口膨らませて顔背けてません?
まさか……
「あの~ママ?」
「なあに~めぐちゃま~」
はっ恥ずかしい! 思春期男子は母親の呼び方がとても困る時期が来る!
お母さん? 母さん? 母ちゃん? 母上?
真っ先にママは除外されるNo.1男子恥ずかしい呼び名のママを強要されてしまったーーーー!
「まっママ、僕はこれからどうすればいいのでしょうか?」
マヌケ! マヌケだ! 僕は!
「めぐちゃまには選択肢があります。」
①本当は地獄だけど最後に女の子を助けたから天国へ
えっ? 地獄行きだったの? 確かにいいこと所か、クラスの行事には協力しない、絡まれたとはいえ相手に暴力だからってあれ? よく考えると悪者では?
②寂しいけど転生。元の世界で赤ちゃんから記憶を消して再スタート!
と言いたいところだけど死者が現世に介入した点とママの記憶を消すなんて許さないから異世界に今の姿、記憶のまま転生してもらいまーす!
いやいや、おかしいです! 確かにお願いしたけど記憶を消すから介入も問題ないはず、むしろ後者が大きな理由では!?
→女神オススメ③ママと一緒にイチャイチャラブラブしながら神の世界で暮らす!
捨てがたーーーい! 流石、女神オススメそんな甘い日々おくりたーーーーい!
しかし、心は決まっていた。
「②でお願いいたします。」
「ダメです!」
「えっ、ちょっ、なんで、えっ、ママっ!?」
「だってぇ~せっかくめぐちゃまのママになれたのに~放しちゃうなんてママできない~!」
キャラ崩壊しすぎです! あーもう!
「ママ! 僕はママの息子に恥じないようにしたいです! 最後に助けた女の子のように、異世界に行けるのであれば今までの自分を変えてもっと人助けがしたいです!」
「はうあっ! めぐちゃまがそこまで言うならでもでも危ない思いさせたくないし……」
あと一押しか!?
「お願い! ママ! 僕のお願いを聞いてママ!」
「……いいでしょう」
うわーしぶしぶだー。 でも気を変えさせないためにもう一押しで
「あっありがとー。ママダイスキダヨー(棒読み)」
「ぬふーー! めぐちゃまかわいい! もう! 子どものわがまま聞いてあげるのもママの勤めよね! ママに任せてね! 転生ジョブリスト持ってくるわね!」
ぼんっと目の前に辞書のようなものが置かれた。
「ママ、これはなに?」
「転生ジョブリストよ。めぐちゃまが転生される異世界はゲームのRPGみたいな世界で魔法やモンスターとかいろんなことがある世界なの。そこで役に立つのがジョブ。自分の努力でスキルや魔法を習得することができるんだけど、自分の生き方でなれるジョブが決まりそれに合わせて成長できるの!」
なるほどなるほどとペラペラページを捲るが
【勇者】【スペルマスター】【セイクリッドランサー】【狙撃王】【神獣召喚師】エトセトラエトセトラ
「あのーママこれって?」
「うん! めぐちゃまにあった最上級ジョブだよー! ママはねー勇者がいいかなーあっでもでも知的なスペルマスターも捨てがたい~」
まずい! 親バカ炸裂! これ超チートのズルスタートだ! 目立つしヤバいことにもなりそう!
当たり障りのなさそうな奴だと……
「ママ【プリースト】って?」
「プリーストはね~回復魔法とか強化魔法が使える神官のジョブ……はっ、神官はママとも定期的に連絡取れるからこのジョブで転生決定! もー我が儘はゆるしません!」
「ええっーーーーー!」
そして、僕はプリーストとして転生されましたとさ。
つづく
ちょっと2章長くなりすぎました。