第9話 犬猿の仲間
……
リュリュンという村を出て数時間経ちます。僕たちは次の街に向かうべく道中をのんびりと歩いています。歩き旅には相応しい日和で暖かい日差しに適度な涼しい風……なのに僕を挟んでにらみ合いの火花がバチバチと飛んでます……あれ? 僕の魔法【神の炎-ウリエル】解除してましたよね?
「えー……ルリさん! 次の街までどのくらいかな?」
「徒歩で1週間だね。村も道中に1つしかないので途中は野宿だね。本当に身軽だけど道具はあるの?」
「はい。僕の服のポケットにはめが……凄い人に魔法をかけてもらいなんでも収納できる空間になってるんです」
どこのネコ型ロボットですか? と思うくらい便利機能。そして、女神さまに教わった【トランフファー】という譲渡の魔法でその機能は別の服や鞄にも譲渡できる……油断していたのはお財布にいれたはずの30枚の王金貨だけではなく山のような王金貨もしれっとその異空間に入っていたということだ……こんなにお金あってもな……と思う。
「めぐる。このあとはどうするんだ?」
「当面の目標はルリさんに聞いた4大国である。王都、帝国、聖教国、魔国を回りたいと思います。そこのギルドを拠点として【リープ】でより良い所に長く入れればと考えてます。他にも大きな国とかはありますか?」
「本当に便利だね。その魔法。一応あるにはあるが人間以外が納めている国になるなエルフやドワーフとか……」
「そうだね……その辺も何かあったりした時のために調べないと……ん?」
急に腕に柔らかい感触むにっと押さえつけられる。
「……つまらない」
スピカがむくれていた。
「仕方ないだろう。めぐると私の今後の話なんだから、いいから私のめぐるから離れろ」
「……あなたのでは……ない」
「くっ……」
「……あなた……いくつ? ……私は18……めぐるのお姉さんなの……これは……愛情……」
「では、私のほうがお姉さんなのでめぐるの面倒は私がみる! 残念だったな!」
「……面倒ならしなくていいわ……私がするのはお世話よ……おばさん……」
「なにー! このガキぃ!」
「……年増……」
「このハー……」
「ルリさん!」
危ないそれは仲間内では禁句だ。
「えー。ごほん。僕はルリさんもスピカもお姉さんだと思ってますよ。僕はずっと1人っ子で物心ついた頃には両親は仕事で家にいなく、友達とかも1人もいなかったから今はとても楽しいです」
「……」
2人が無言になってる。あれ? もしかして引かれました? と思ったらぷるぷる震えだし抱きついて来た!
「めぐる~! お姉さんが大切にしてやるからな~!」
「……かわいそう……」
なんか同情されてしまいました。というかスピカは似たような感じでしょ!?
「あっ、小川がそこにあるのでお昼にしましょう」
「……ごはん!」
「そうだね。そろそろお腹も空いてきたし、村からもかなり離れたしね」
「入り口の炎は3日くらい燃え続けるので追っ手の心配はないと思いますよ。僕は【ラピッド】の魔法で一足先に村に行って転移先を作って来ますので2人でごはんを食べてそのあと、水浴びや購入した服でスピカの身支度をお願いしたいです。そのくらいには戻ってこれます。」
「確かにこの格好のまま村に入れるのも目立つな……って2人で!」
「……やだ……」
「こっちのセリフだ!」
「いやいや、2人ともこれから一緒に旅をする仲間なんだからこれを機会に親睦を深めなさい。それに僕は男なのでスピカの体を洗ったりは……」
「それもそうだな……」
「スピカ……気にしない……してほしい……」
「ちょっと黙っていてくれ」
スピカはむーと頬を膨らまし、ルリさんもむくれて2人の目線がまたバチバチしている。
「それはそうとこいつも一応は女の子なんだ。こんな小川で水浴びはどうかと思うぞ?」
「確かにそうですよね……なので人祓い、動物祓いの魔法を使いますので2~300メートルくらいは何も寄り付かないようにしておきます。ぶっちゃけ、宿や教会を追い出された僕たちはそれしか今選択肢がなさそうなので……」
「そこまでしてくれるなら……まあ、私が脱ぐわけではないのだからな!」
ルリさんがにやりと笑う。
「……めぐる……たすけて」
「こればかりは我慢してくださいね。じゃあ、僕は先に村に向かいます。1時間以内には戻ってきます!【ラピッド】」
あっ、と言う間にめぐるの姿が目の前から消えた。そしてその場にきょとんと2人が取り残される。
「……ごはん……」
「めぐるはああ言ったけど先に水浴びよ。私は騎士だからあれだけど。あんたは女の子なんだから綺麗にしないと」
「……ぐるるる」
スピカが威嚇し始めた。
「あんたが小汚ない状態でめぐるに抱きついてめぐるはどう思うか、まあ、やさしいから何も言わないけど内心……」
「……!?」
スピカが露骨に泣きそうな顔になったのでルリの中で少し罪悪感が生まれる……スピカは服装裾をぎゅっと握りしめながら
「洗って……くだ……さい……」
「ああ! 服を脱いでこっちにおいで」
めぐるが事前に用意していた石鹸とタオルを使い小川でスピカを洗っていく。周りの水が濁っていくあたり相当汚れていて、自分よりも年下の女の子が辛い生活を送っているとはと思うとルリは、自分の過去と比較して申し訳なく思ってくる。
「……ねぇ……」
「ん? どうしたの?」
「めぐるのこと……ききたい……」
「あぁ、私とめぐるのことか。実は偉そうなこといったけど、めぐると出会ったのはお前とそう変わらないんだよね」
「……そうなの? ……いがい……」
「そうだよ。実際2~3日差かな。野盗に襲われた所、幼なじみに裏切られて危なかった所と1日でかなり助けてもらっちゃった。」
「……私と……同じね」
「ははっ、そうね。……その時なんだけどさ。何て言うか王子さまに見えちゃったの!」
数秒後自分が小さい子のようなことを言っていることに気が付き赤面してしまう。
「やっ、あっあの今のは忘れて」
「……わたしも……」
「え?」
「……もう死んじゃうかと思ったら……めぐる来てくれた……嬉しかった……ルリの考えあってる……」
「わかってくれるの?」
「……んっ! (親指でグッドサイン)」
「そうだよね……めぐる格好良かったよね! じゃあ、そんなめぐるの前では綺麗に可愛くしていないとね!」
わしゃわしゃわしゃっとルリがスピカを洗いスピカも笑う……
……
……
「っと、ルリさん。スピカ戻った……よ……」
ルリさんの他に見たことのない銀髪の女の子が赤面して立っていた。黒のフリルブラウスに短めのショートパンツにブーツ……
「スピカ!? えっ、凄いかわいいじゃないか!」
「でしょでしょ! 私も小汚ない髪洗っていたら艶々の銀髪に変わっていってびっくりしたの! 色も黒の派手すぎないフリルだしお人形みたいでしょ!」
「……ルリ……ありがと……」
「やーん! スピカかわいいっ!」
あれ? いつの間にか仲良くなってる? ルリさんスピカに抱きついてるし良かった!
「2人とも仲良くなったんですね!」
「うん! 思わぬ共通の話題で盛り上がってね! それから洗ってあげたり服着せて、ごはん食べさせてあげていたら凄い可愛く見えてきちゃって!」
「……ルリ……おばさん言ってごめんなさい……ルリはかわいいよ……ねっ……めぐる」
「ルリさんはもともと美人さんですからね!」
「2人とも……」
「……ルリは……美人……おばさんじゃない……年増なだけ……」
一瞬時が止まった……ゆっくり……ゆっくりとルリさんを伺うとぷるぷる震えながら爆発した。
「やっぱりこいつかわいくなーーーーーいっ!」
つづく
ルリとスピカはお互いに仲良く助け合える関係で進めたいです