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プロト版 あんたプリーストでしょ!~嫌われもの異世界転生~   作者: げんげんだの
第2章 忌むべき存在
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第8話(2) ここにいていいんです!


「……はっ……はっ……」


 スピカは林を走る。めぐるから聞いたギルドの視察者から。相手は2人。1人は大剣のバスターソードの男で、もう1人は走りずらそうな黒いローブに木製の杖を持った女性、この2人追跡されている……木々が顔や裸にあたる度、スピカの白い肌に傷がつく……


「……治して……もらったのに……」


 林を走りながら残念そうに顔を伏せる。そして、いつもの畔にスピカは到着した。どちらにせよ逃げ切れないのであればここで追っ手を殺そうと考えている。死ぬのは恐い。

 しかし、2人対1人ではどうしょうもない……やっぱり死ぬのかなという恐怖があるが抵抗は最後までしたい。乞食のような今の生活でも両親が生きて欲しいと願った生を大切にしたい。


「おいおいくっそ早いな……おーい! 早くこいよ! お嬢さん逃げるのやめたみたいだせ?」


 大剣の男が林をかき分け出てくる。


「ちょっ、私はあんたのような筋肉ゴリラとは違って知的な魔法使いなのよ……? もー、葉っぱまみれっ! あのハーフエルフのせいよっ!」


 ローブの女も一緒に出てくる。その瞬間


「……があっ……」

 

 スピカは小さいナイフを女に投げつけた。狙いは正確で女の喉元に一直線だが……


カキィっ……!

男の大剣が女目の前に現れ防がれた。続けて負けじと2本同時にナイフを投げるが今度は避けられてしまう


「……ぐっ……」


「あんなー最初の1本目のナイフ投げは見事だったよ。誉めてやる。ただ次のはダメダメだな。狙いは正確だがおせえよ」


「だよねー魔法職で運動苦手の私でもよけれたわ」


「なあ……そろそろめんどいんで殺されてくんねぇかな? ほんとはよー。魔物ならともかく人を殺すのって少し抵抗あんだわ」


「大丈夫でしょ? あいつはハーフエルフの忌むべき奴なんだし魔物と大差ないって」


「だろうな……はっはっはっ! 多種族なのにやっちゃう。変態パパと変態ママの副産物だからなぁ!」


 ぷちん……とかつてないほどにスピカはこの2人の人間を憎んだ。今度はナイフではなく、逆手に持ったダガーを血が出るほど握り絞め、普段おっとりした目を飛び出るくらい見開き、大剣を持った男に飛びかかる。


「とりけせええええええええええ!」


 スピカが飛びかかり、ダガーを男の顔に突き刺そうとした瞬間……男の体が横にさけ丸太のような太い腕がスピカの腹にめり込む……


「ごげぇっ!」


 口から血反吐を吐く


「きたねえな! ごらぁ!」


 拳が突き刺さったままのスピカを放り投げる。3メートルほど転がりその先で嘔吐する 


「うわ……マジできたないんですけど……早くその首切り裂いちゃいなさいよ。このグズ追いかけ回したせいで汗かいちゃってるんだから………」


「わかったよ。すぐに切り殺しうおあっ!」


 ズドンっ! という音と共に男が消えた……


「えっ!? なに!?」


「……っがああああああああああああ!」


 スピカは落とし穴を掘っていた。その落とし穴に男は落ちた。深く掘ったつもりだが穴は男の脇で止まっている。しかし、スピカは口から血が混じった吐瀉物を撒き散らしながら力を振り絞り男に走り出したが……

 

「……えっ……」


 スピカの腹部に鋭い痛みが走る。そして視界が歪み気分が悪くなる。平行感覚がなくなり倒れこむ……

 スピカの腹部にはナイフが刺さっていた。笑い声が聞こえ新たな男が出てくる。軽装でひょろひょろとした男だ。


「ナイフ投げはこうやってふいをつくものだよーひゃひゃひゃ」


「……おー。わりぃ! 助かったわ!」


「間抜けだよおまえひゃひゃひゃ! 今日の殺しの後の肴にぴったりだひゃひゃひゃ!」


 スピカは気づかなかった……2人ではなく3人いたのだ。2人に完全に気をとられ注意力が完全なくなった瞬間を狙われた。スピカは勝てなかったのだ。これからスピカは死ぬ。

 しかし、死ぬ前にこれだけはしないといけないことがあった。ぐわんぐわん歪み視界と頭でこれだけはしないと死ねない。



「……と……とりっ……けっ……して……」


「はあ?」


 3人の声が重なる。


「……どりげじでぇっ!」


 悔しくて悔しくて悔しくて涙が出る。

 

「あっひゃひゃひゃっ!」


 3人の笑い声が響き渡る。


「なんでだよぉ! 事実じゃないか!」

 

「おまえは望まれない子どもなんだよ! できちゃっただけなんだよ!」


「……やめでよ……とりけし……てよ……」


「取り消す必要なんてないんだよー! だっておまえは毒でしんぢゃうんだからひゃひゃひゃ!」



「そっかー毒なんですね?」


 スピカの耳にもう聞こえない筈の声が聞こえた。


「大丈夫……僕はプリーストだから……【キュア】」


 自分を庇うように3人の前には年下の男の子がたっていた。そして、優しい光がスピカを包んだ……




つづく

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