第7話(4) リュリュンの嫌われ者
ミラさんへ呼び出され教会の外の納屋に入っていった。明らかにミラさんも恐い顔をしている。
「あいつ……。スピカにあったのね?」
「はい。森を探索しているときに……」
「そうなのね。めぐるさんにお願いがあるんですけど、よろしいですか?」
「内容にもよりますがなんですか?」
「スピカをもう教会に来ないように伝える。もしくは殺してこれなくしてくれても構いません。後者であれば村の組合から報償金で金貨5枚支払われます。」
「……は?」
金貨1枚は日本円にして1万円、この世界の物価がいくら安いにしても5万円で人殺しかよ……というかそもそも人を殺すとか論外過ぎる。しかし、最初の頃のミラさんの優しげな雰囲気からして信じられない何か理由があるのか?
「同じ聖職者に人殺しをしろというのはどうかと思います。悪魔殺しならまだしも……」
「スピカは悪魔も同然なんで問題はありません。ハーフエルフなんで忌むべき存在です」
ハーフエルフ? よくゲームとかファンタジーにいる。人間とエルフから生まれた子ですね? 確かに嫌われてる所か、迫害されてるくらい色々な作中にも登場するけど、この異世界でもそんな扱いなのか?
「すみません。田舎者なので詳しくないのですがハーフエルフって何故忌むべき存在なのですか? そして、そういうものこそ教会で救われるべき人ではないのでしょうか?」
「ハーフエルフは災いを呼びます。一度は教会で保護しましたが他の子ども……のみならず教会そのものの存続も含め弾圧されます」
「……ちなみにその災いとは?」
「もう、起きてます。あいつがいるからと他の子どもや教会の人間に石や物をぶつけられる。教会に火をつけられそうになったこともあります。全てはあいつが引き起こした災いです。」
いや、ハーフエルフの災い関係なくないですか? そもそも、全部人災でしょ! とかなんとか言えませんね。宿も借りてる立場だし……
「それで教会を追放したにも関わらず3~5日1回食料を渡すように要求してくる! でないと村にまだ関わりがあることを言いふらすと脅しをかけてきました!」
なんか、ハーフエルフに対する人間の考え自体がズレている気もするが……まあ、ちょっとスピカちゃんの唯我独尊具合にもナイスって思う。やるじゃないですか!
「あなたは神に使える【プリースト】でしょ! なんとかしてくださいよ!」
「わかりました。教会来ないようにと僕が説得します……」
「当面はそれでいいでしょう。どちらにせよ【プラム】のギルドからの巡回があと2日後にはくるのでその時に討伐してもらいます」
【プラム】だって!? 僕とルリさんが逃げてきた街だ……だが2日後というのは僕が問題を起こした時には各村の巡回をしていたから出来事は知らないだろう……しかし、スピカが殺される!?
「まぁ、わかって頂けたようなので食事にいたしますか? 牧師ベンにも協力して頂けるとのことで伝えて起きますのでご安心を」
ミラさんは納屋を出ていき僕は取り残される……
そのあとの夕飯は全く味わうことができなかった。自分は何をしたらいいのか……このままスピカちゃんとは合わずに見殺しにするのか。村に対して呼び掛けた所で【プラム】の街と二の舞で理解されっこないです。
食事後にルリさんに相談してみよう。
……
……
「めぐるのいた村はどうかは知りませんがほとんど特に田舎や街ではハーフエルフは忌むべき存在として迫害されてる。」
「えっ? 全てではないの?」
「ええ……例えば王都、帝国、聖教国、魔国などでは優秀であれば種族は関係ないからね。それに近い街や村もそう……しかし、こういう首都から離れた場所には生け贄などの風習があるからこういったところだと厳しいよ……」
「なるほど」
「めぐるには厳しいが、見捨てるべき」
なんとか……なんとかできないのかな。あれ? ルリさんの話しだと……
「ルリさん! 僕は実際会って話したけどスピカちゃんは悪い子じゃないよ!」
「ちゃん!?」
「関わってしまった以上、見過ごしたくない。自己満足だけど後悔したくないし、殺されたこととか考えたくもない!」
「めぐる……」
「だから……この地を離れるように言おうよ! そうすれば殺される可能性も少なくなるし今後も上手く行けば安心して暮らせる」
「お人好しだね……それならいいと思うよ」
こうして僕はハーフエルフの嫌われ者スピカちゃんを逃がして上げようと思った!
つづく