第7話(3) リュリュンの嫌われ者
「うっ……があっ……」
鎖で拘束している女の子は10歳前後です。まっまずい。魔法を解除しなくては! 念じると光の鎖が消え女の子がどさっ……と落ちる。
「だっ大丈夫……?」
近づくと女の子はぱっちりと目をあけ飛び退く……
「がるるるるるるるるるるるっ……」
威嚇なのかな? 八重歯を剥き出しにして唸る。女の子の年齢は10才前後。白いボサボサの腰まで長い髪で、前髪の一部が片目を隠してる。服……というよりも体に布を巻き付けたような格好をしていた。腕や顔には泥だけでなく恐らく木々の枝で切ったであろう細々とした傷がついていた。女の子を観察していた、その時である……
ぐぎゅるるるるるるるぅ~……
……
……
ん? 今のって口から出てる威嚇の音か? お腹から聞こえたような? 女の子をじっと見つめると……
「……くぅん……」
と恥ずかしいのか顔を真っ赤にして俯いた。何この可愛い仔犬系の女の子! ……はっ! いかんいかん何か話さなければ!
「これ……食べますか?」
「っ!?」
反応した! うわーしっぽとかあったら降ってそう!
「一応、焼肉おにぎりと野菜スープと果物だけど食べれる?」
「……いっ……いいのか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「……やった! ……にくだ!」
僕の手から籠を奪い取るとがつがつ頬張りながら食べ始めました。かと思いきや急に止まって、顔が青く……
「うわああああ! おみず! ほら! おみず!飲んで!」
「……ぷはっ! ………」
じーっとみられる。
「誰も取らないからゆっくり食べて大丈夫ですよ?」
「……わかった……」
もくもくとまるでリスのように頬に詰め込みながら食べ始める。今なら少し会話できるかな?
「君、名前はなんていうの?」
「……スピカ……スピカ=フェイクファー……」
「スピカちゃんって言うんですね。僕はめぐるといいます。スピカちゃんはどうして……」
「……いくつ……?」
「え……?」
「……めぐる……歳……いくつ……?」
「僕は17歳です」
スピカちゃんはどやった……
「……私は……18………お姉さん……」
「えっ……うそ。年上なんですか? スピカさんは?」
「……ちゃん……」
「え?」
「……スピカ……ちゃんで……いい……」
「はい。スピカちゃん。話を戻すけどスピカちゃんはどうして隠れてこっちを見てたの?」
「……ここ……おうち……スピカの……」
「えっ? ここが?」
コクコクと頷く。
「村には家ないんですか?」
びくっ! と震え、あからさまに不機嫌な様子になる。
「……村……きらい……」
何か事情があるみたいだ。深掘りする必要はないだろう。とりあえずは敵じゃないみたいだし。でも、ミラさんとはあってたしな……
「教会のミラさんには会っていたよね?」
「……あそこは……スピカ……捨てた責任ある……3日に1回……ごはん……もらう……」
ミラさんたちが捨てた!? 凄い気になるけどここでスピカちゃんにこれ以上聞くわけにはいけないな……凄い不機嫌な様子だし……
「ごはん。美味しい?」
「うん……おこめ……高い……」
「そうなんだ……あっ、ちょっと光るけど驚かないでそのまま食べててね! 【ヒーリング】」
「!? ……おー……傷……なくなった……」
「うん! 回復魔法だよ! スピカちゃんも女の子だからね。」
顔を赤くしたスピカちゃんはごはんを食べ終わり、その場に立ち上がり。
「……めぐる……気に入った……次も来ていい……ごはんもって……」
「あははは……ごはんもって来るんだ……」
「……うん……わたし……お姉さん……」
と言いスピカちゃんは服を脱ぎ散らかし始めた!
「うわああああっ! なっなに!? どうしたの!? 急に!?」
「……おふろ……」
ばしゃんっ! 川の畔に飛び込んだ。
「びっくりした……そっか、この場所で暮らしているんだもんね。スピカー! また、明日も来るから! 帰るよー!」
「……おー……」
そして僕は【リープ】で教会に戻った。戻ってすぐだがベンさんとすれ違った。スピカちゃんのことを聞こうと思った。
「あのーベンさん……聞きたいことがあるのですが……」
「ああ……めぐるくんか。なんだね? 答えられる範囲で答えよう。」
「ええっと、スピカという女のーー」
「その名を口にするな! 穢らわしい!」
あの優しそうなベンさんが豹変した。
「おおっと、すまない。でもな、めぐるくん。この村でその名を口に出すんじゃないぞ? この村で無事に過ごしたいのならな……」
それだけ吐き捨てるように言いベンさんは立ち去って行った。すれ違うようにミラさんが来て
「……ついて来なさい。向こうで話してあげるわ……」
ミラさんの態度もおかしい。一体何がどうなっているんだ?
つづく