第7話(2) リュリュンの嫌われ者
~リュリュン2日目~
「めぐるー! おはよう!」
「ルリさん。おはようございます」
「今日は魔法の練習場所を探すんだよね? 村からちょっと歩いた所に川があって、そこを上流に上っていくと森に入るんだけどちょっとした畔がある。そこが練習場所としてはいいと思うんだけどどうかな?」
「はいっ! そこに連れていってください!」
階段を下りるとベンさんたちにあった。
「めぐるさん、ルリさん。おはようございます」
「おはようございます!」
「これからお出かけですかね?」
「はいっ! 森に入ろうかと!」
「この辺の森には魔獣がいませんから安心して探索されるといい。……では私は礼拝があるので……良ければ【プリースト】のめぐるさんもどうですかね?」
「ごめんなさい。実は既に済ませてしまいました……機会があれば是非ご一緒に!」
そうかやはり聖職者だと礼拝なども関わってくるんですね……したことないし……まあ、とりあえずは部屋でしてるって言うことでスルーします。
それよりも気になるのは魔獣の存在です。この世界には魔獣という凶悪な獣や悪魔が存在するようです。基本的には村や街などの人里離れた森や洞窟に生息するようです。ギルドと国の軍等が定期的に巡回しているため人里にあらわれることはまずないとのことです。しかし税を納めていない村などには派遣されないため村の中でも危険にさらされる場合があるらしいです。
話がそれましたがとりあえず、この辺りは安全ということです。一先ずはルリさんがいう畔に向かうことにしました。
畔に向かう途中ルリさんが質問して来ました。
「めぐる……前から気になってはいたのだが、野盗賊やボルグと戦ったとき、めぐるの戦い方は武器も何ももっていないのに素手で相手を制した。何か不思議な感じがしたがあれも魔法なのか?」
そうか。武道や格闘技が不確定の世界だからおかしな構え、戦い方で魔法だと思ったのかな?
「魔法は使ったけど身体能力を向上させただけだよ。僕の戦い方は武術で、なんて説明したらいいのかな? うーん。人の体の構造を利用して戦う方法かな?」
「なんだ!? それは詳しく教えてくれ!」
「うーん。口だけじゃ難しいな……畔についたら実際に見せながら説明するね。……あっ、あれが畔にかな?」
「そうそう! 見えてきた! 人の体の構造とは深いな! 凄い楽しみだっ……ったい!」
酷いかもしれないが畔についた瞬間ルリさんの足を引っ掛けて転ばせた。
「いったいな! めぐる! イタズラで転ばせるな!」
「あはは! ごめんなさい! でも、簡単に説明するとこれが僕の戦いかたの基本だと思います。」
「このイタズラがかー……」
ぶすーっと、ルリさんがふてくされた顔をする。
「そうです。ルリさんは今前に歩こうとしましたよね? その際、足だけが急に動かなかった。足が前に出て然るべき場所になかったから上半身だけ前に動き結果転んだ形になります」
「ふむ」
「例えば、ルリさんの見ていたボルグ戦の時、ボルグのパンチより僕のパンチの方が先にあたりましたよね? あの時は魔法で強化を行っていませんでした。なぜなのか? 試しにルリさん。僕を殴ってみてください。……当てちゃダメですよ?」
「よし! わかった! でもめぐるには転ばされてるからなっ!」
ビシッ! 不意討ち気味に振り上げたルリさんの拳を僕の手が先に止める。
「えっ!? なんでっ!」
「違いがわかりますか? もちろん早さは別としてルリさんと僕にはスタートが違います」
「スタートの違い?」
「例えばここの畔まで歩いて来るとき、教会からスタートするのと、村の入り口からスタートするのではどっちが早くここにつきますか?」
「それは村の入り口からだろう」
「それと同じです。ルリさんは僕を殴るために拳を1度振り上げてから殴ろうとしましたが、僕は振り上げないで殴ろうとしました。僕のほうが工程が少ないので僕のほうが先に仕掛けることができます」
「そういうことか!」
「あとは心理戦のような戦いかたをします。軽く攻撃を一度だけ行うので防いでください。」
僕はルリさんにわかるように拳を振り上げた。
「ふっ! ……ったい!」
ルリさんが手を顔の近く持って行き防ごうとしたところ……僕は素早く拳を止め代わりにルリさんの足を蹴った。
「ルリさんは今殴ろうとしてくるって思いましたよね? 上に注意が行ってるのがわかったので注意が薄い足を攻撃しました。」
「うわー! なんか悔しいっ!」
「これはルリさんの剣にも当てはまります。例えば敵がおもいっきり剣を振り上げてきたら防ごうとするか。それとも横か後ろのに避けようとするかです。腕が達つ方だと先に切りつけようとするかもですが……同じ理論で基本的には剣に意識が向いているため胴におもいっきり蹴りを入れればまず入りますし、このあと追撃ができます。……どうでしょう? 僕の戦い方が少しわかってきましたかね? この動きを技として先人が突き詰め、後生がどんどん追求していくのが武術です」
「すっ……すごいな! めぐる! もっと教えてくれ!」
「はいっ! 僕でわかる範囲なら!」
こうして僕たちはその日は日がくれるまで鍛練をして【リープ】で教会に戻った……そして、魔法の確認、練習を全くしていないことに気づいてミラさんに僕の分の夕食は必要ないことを伝え、村ので軽い飲み物と食べ物を購入して再び【リープ】で畔に戻った。基本的に早朝、夜は魔法の訓練、夕方はルリさんと共に訓練ということにしている。
僕の使える魔法は数多くあり、ルリさんも知らないほうがいいと思い別行動にしました。もちろんルリさんには反対されましたが常に【シックスセンス】で感覚強化して周囲に警戒して怪しく思ったら即座に【リープ】で戻ることが条件でなんとか引いてくれました。
そんな感じで練習を始め2~3時間が経過しました。【プリースト】は一応回復、補助魔法の他に光系の攻撃魔法を使える。中にはそこに別の能力を加える協力なものもある。例えば【ウリエル】という攻撃魔法は白い光の炎を生み自在に操ることができる。……が【オラクル】という最高位を隠してる自分が使うのどうなの? って思えてくるのでほとんど使えなさそう……
……そんなことを考えてると人の気配がした。 僕の荷物のすぐそばだ……よし、1つ魔法を実践して見ましょう!
「【ホーリージェイル】」
「ひいゃ!?」
虚空から真っ白に輝く鎖が12本飛び出し対象を捕縛した。
「よしっ成功した!」
捕縛した鎖の先を見ると昨晩ミラさんとあっていたと思われるボロ布の人物がいた。昨晩と違うことは頭をすっぽり覆っていた布も【ホーリージェイル】が首に巻き付いているため剥がれていたというところだ……
「女の子……」
ボッサボサの腰まであろう白く長い髪。片目は前髪に隠れ見えない。小さな少女が光り輝く鎖で拘束されていたのだった……
つづく