第7話(1) リュリュンの嫌われ者
ビュッン! 一瞬暴風が吹いたかのような音がして僕とルリさんは街から相当離れた村【リュリュン】に到着しました。高速移動魔法【ラピッド】を使ったのだが、予想外の早さで到着しました。腕に抱いたルリさんが目を開くと同時に……
「はやっ! もうついたのか!?」
「……ぼっ、ぼくもここまで早く着くとは思いませんでした……」
それもそのはず……一時間足らずで早馬で一週間掛かる距離を走り抜けたのだ。しかも、疲れていません。
「なんにせよ、早くついて良かったです。宿も取らないといけないですね。そういえばルリさんはこの村に来たことありますか?」
「5~6回は来たことある。宿の場所もわかるから行こうか。そこはご飯も出してくれて1泊銅貨4枚だ」
「そうしましたら、ひとまず5泊しましょう。少し魔法の練習がしたいので、終わったら次の街をめざしましょう。そこまで行けば少し安心できるかと思います。あと、僕は【プリースト】と言うことで……」
「そうだな。隠した方がいいだろう。ジョブは最初の登録の時とランクアップ申請の時他の人に知られる可能性があるがあとは黙って入ればわからないからね」
「では宿に向かいましょう!」
……
日暮れのためか村に人はちらほらしかいない。ルリさんに宿を案内してもらったのだか……これは教会ですかね?
「ルリさん……? ここ教会じゃないですか?」
「そうだよ? このような小さな村にはぶっちゃけ宿と呼べる物がない。だけど、教会があれば泊めてもらえるんだ」
へぇ~そうなのか~と相槌をしている間にルリさんは扉を開けて人を呼ぶ……少しすると教会ならではの白と黒の服をした女性が出てきた。
「こんにちは。どのようなご用件でしょうか?」
「お久しぶりです。ミラさん。ルリです。覚えてますかね?」
「もちろんです! ルリさんお久しぶりです。3ヶ月ぶりですね。今日はお泊まり?」
「そうです。5泊ほど泊めて頂きたいのですが構いませんか?」
「こちらは全然問題ないですよ……ルリさん後ろの方は?」
「遅れてすみません。僕はめぐるといいます。見習いですが【プリースト】をしています」
「まあ! 【プリースト】とは素晴らしい。同じ聖職者同士泊めるのを拒んだりはしません。私の名前はミラ=カルバン、ミラと及びください」
ミラ=カルバン
種族 ヒューマン族
年 26歳
ジョブ なし
ギルドランク なし
所属チーム なし
B98 W62 H89
身長 159
金髪ロングヘアーのシスターさん。色白で顔たちもおっとりしているが動きは話した感じはてきぱきしている。黒いゆったりめの教会服だがその下からでもわかるほど胸は大きい……っといかんいかん
「ありがとうございます。これ先に代金お支払い致します。1泊1人銅貨4枚なので5泊2人分の銀貨4枚です」
「はい。たしかに……」
「めぐる! 自分の分は自分で出すぞ!」
「何いってるんですか。ルリさんはこれからも一緒に旅をするんですよね? 2人で必要な分は僕が払います。僕は主なんですよね?」
「うっ……そうだけど」
僕らのやりとりを見てシスターが笑った。
「ふふっ……ルリさん、この前抜け駆けはしないと夜、私に言っていたのにもう彼氏を作ったのですか? 私は裏切られたみたいで残念です……およよ……」
わざとらしい泣き真似をして、ルリさんをからかっている。
「ちっ……ちがう! …まだ彼氏じゃないら! 全然めぐるとはそういう関係じゃないから!」
「全否定されると少し傷つくんだけど」
「はうっ……うー……いいから部屋に案内してくれーー!」
「はいはい。こちらですよー」
……
教会の中を歩き隣同士の部屋を用意してもらう。部屋は街で借りた部屋に比べるとあれだがスペース等全然問題はなかった。
旅の宿泊者にはご飯を夜のみ出してくれるらしく食堂へとルリさんと向かう。自分たちのような旅人は今は泊まっていないようでご飯は教会の皆様と食べることになりました。
教会の人はミラさんの他に、牧師のベンさんというぽっちゃりとした50手前のおじさん。その妻のライラさん。ミラさんのようなシスターが他に2人いて、あとは孤児が4人ほどまだ幼い……
「では、食事の前の祈りを……」
ベンさんが声をかけ、みな目を閉じ祈るようなポーズを取る。しばらくしてベンさんが
「それでは頂こうか……」
『いただきまーーす!』
子供たちの大きな声と共に食事が始まった。メニューはハムの挟まったパンに、シチュー。異世界の特別なご飯を期待したのだが意外と普通……だが、シチューの味は仕事が忙しくなる前の小さいころに母さんが作ってくれたシチューの味にそっくりで涙が出た……泣いてばかりだろ僕……
「めっめぐる!?」
「めぐるさん、お口に合いませんでしたか?」
心配するルリさんとミラさん……周りのみんなも心配してこっちを見てる。
「いや……本当に美味しくて……小さいころに母さんに作ってもらった味と全く同じで嬉しくなって!」
涙をゴシゴシ吹いていると隣に座っていた女の子が
「お兄ちゃん大丈夫? これ私が昼取った木の実これ食べて元気だして?」
苺のような果物をくれた。でも木の実って言ってたし苺とは違う。
「ありがとね……すっぺっえ!」
なんだこれ!? 苺を想像して食べたらレモンのように酸っぱい! あっ、ガキども爆笑してやがる! てか、みんな笑ってる!
「ルリさんも大抵ですか。めぐるさん……あなたも面白い方ですね」
「ルリくんもめぐるくんと全く同じ木の実に引っ掛かったよ! はっはっは!」
ベンさんも腹を抱えて笑っている。あっルリさんも!
「ルリさん! 一度引っ掛かったなら教えてくださいよ!」
「いや、ここは主にも私と同じ気持ちを味わってもらうべきだろ!」
「あらあら、いいの? ルリさん? そんな態度で? 今のところ、めぐるさんを感動させる母のシチューを持った私がめぐるさんのお嫁さん候補筆頭なのよ? めぐるさん、やさしそうだし良ければ毎日シチューを作ってあげますよ!」
「だっだめーー! ミラさん、そのレシピ私に教えなさいよ!」
あわてるルリさんにまた賑やかに笑い声が上がる。……ほどなくして食事が終わりルリさんと別れて部屋でベッドに倒れる。……つかれた! 1日が長くとてもつかれた! 夜なのに月や星がよく見える……目立つのもいけないし明日の早朝、夕方、夜の3クオーターで魔法の練習をしよう。明日の早朝は場所探しでつぶれちゃうけど……
がさがさっ!
窓の外を見るとミラさんが立っていてぼろぼろの布を被った何者かが林から出てきた。ミラさんは手に持った籠から夕食のシチューとパンをその何者かに渡すと立ち去って行った。一瞬もう追手が来たのかと思ったが一連の行動を見てそれはないと思った。何者かはその場で座り込みがつがつと食べきると食器をそのままに林に消えて行った……
つづく