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ボディーガードって楽しい?③

「それから唯倉さんって呼ぶのは止めてください。下級生なのに、さん付けで呼ばれるのは抵抗があります」

「んー、だったら何と呼べばいいのかな?」

「そうですね。葵ちゃんのことは普段どう呼んでいるんですか?」

「おいとか、おまえとか、葵とか、かなぁ」

「それじゃあ私も、そんな感じで呼び捨てて頂いて構いません」


 えっ、これ、何トラップ? こんな美少女を呼び捨てに出来るの?

 っと、ここは冷静になって。


「さすがに、おいとか、おまえとか、呼び捨てってのは出来ないんで、美咲ちゃんでいいかな?」

「はい。私も和紗先輩のこと、お兄さんって呼んでいいですか?」


 お兄さんかぁ、いい響きだな〜。最近は葵の口から出てきたことすらないよ。でも、残念ながら俺は美咲ちゃんの兄貴では無いんだよな。


「えーと、なんでお兄さんって呼びたいの?」

「それは、中学生の頃、葵ちゃんの家に遊びに行ったときにお兄さんに会ったんです。覚えてます?」

「えっと……」


 美咲ちゃんがミス研の部室に入って来たときにも思ったことだが、そういえば葵が中学校の友達を連れ来たときに、清楚な感じの美少女が混じっていたなあっていうことくらいしか記憶は無い。


「あーっ! やっぱり覚えていないんだ」


 美咲ちゃんはショックな感じでうなだれた。


「い、いや、なんとなくは記憶にあるんだけど。ほら、葵のやつが自分の友達を連れ来たときは、俺にあまり動き回るなって言ってくるから、しっかりと顔を見ることも出来ないんだよ」

「そうだったんですか。でも、葵ちゃんの気持ちもちょっと分かるかも……」

「葵の気持ちって?」

「ん〜。内緒です」


 そう言って口もとに人差し指を立てる仕草は、妙に色っぽくてとても年下には見えない。大概、俺たちくらいの年齢の男女を比較すると、男子は子供っぽく、女子は化粧とかアクセとか付けてたりしていて、圧倒的に女子の方が年上に見える。


「それで、家に遊びに来たことと、お兄さんって呼ぶことは、何の関連性があるの?」

「あのとき、お兄さんと葵ちゃんとのやり取りを見てて、羨ましいなって思ったんです」

「そう?」


 そんな羨ましがられるようなやり取りだったっけ? なんかいつものように俺が葵に、理不尽に言いたい放題言われている感じだったと思うけど。


「そうです。私、一人っ子なんで葵ちゃんにはお兄さんみたいな人がいていいなって思っていました」


 あ、ああ、そういうことか。あぶねーっ! もう少しでラノベとかアニメ設定で言うところのお兄ちゃんと、勘違いをするところだった。

 つまり、美咲ちゃんは自分が一人っ子だったから、葵を見て兄がいることを羨ましく思っていた。そこで、俺にお兄さんっていうことで、兄がいる気分を味わえると、そういうことだな。


「わかった。俺のことはお兄さんでいいよ」

「やった!」


 胸の前で両手を軽く握り小さくガッツポーズをする。ったく、可愛い娘はどんな姿をしても絵になるからいいよな。


「ところでさ、さっきから誰かに見られている感じする?」

「えっ?」

「いや、ほら、さっき依頼を受けた手紙の件だよ」

「あ、ああ、いえ、何も感じません」

「そっか」


 俺もずっと周りを気にかけているのだが、周りにいるのは学校から帰ってきてそのまま遊びに出たのであろうか、体操服を着た小学生達と、買い物バッグを手に、急ぎ足で歩いているおばさんくらいしかいない。もちろん犯人らしき人物なんかは見当たらない。

 沈みゆく日の光を浴びてオレンジ色に染まった町を、美咲ちゃんみたいな美少女と一緒に歩けるのはこの件があったからで、美咲ちゃんには悪いが俺とってはラッキーなのかもしれない。

 そう思いながら、夕陽の光にキラキラと輝く、美咲ちゃんの横顔を眺めながら歩く。そんな俺の視線に気づいたのか、美咲ちゃんがこちらを向いた。


「お兄さんは色々な事件を解決されているそうですね」

「ん、あ、そうだっけ?」

「そうですよ。一年生の間でも結構話題になったりしてるんですよ」


 そう言われると、少し嬉しかったりもする。

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