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ミステリー研究会と美少女依頼人③

 扉を開けて入ってきたのは、黒髪のストレートロング、色白の顔はキリッとして知的美少女っていう感じの娘だっだ。

 彼女も葵の友達なので、俺の家に遊びに来たことがあったような無かったような、でも、葵の友達の中に一人、凄く可愛い娘がいた記憶はある。


「一年の唯倉(ゆいくら) 美咲(みさき)です」

「これはこれは、唯倉さん、わざわざこんなむさくるしい所にお越し頂いて誠にありがとうございます」


 そう言いながら部長は、唯倉さんに席を勧める。相手が女性、特に美人となると、とたんに態度をかえるのはいつものことだ。


「それで依頼の内容は何でしょう? 私にお任せ頂ければ、たちまち解決できますから」

「まぁ、それは頼もしい」


 そんな二人の会話を聞いて、葵が俺に小声で「なにあれ!」と毒づき、知夏ちゃんは両手を広げてやれやれといった表情を見せている。

 二人は俺らに構わず話を続けた。


「昨日の朝のことです。私が学校に登校して教室の席に着くと、机の中に一通の封筒が入っているのに気づいたのです。私はその封筒をいただくような覚えもなかったので、誰かの机と間違えたのだろうと思い、手に取ってみるとその封筒は私宛てになっていました」


 そう言って、唯倉さんは鞄の中から封筒を取り出した。

 その封筒の表には、雑誌などの印刷物の切り抜きで、


 ゆ・い・く・ら・ミ・さ・き・へ


 と並べて貼ってある。


「何だか犯罪の香りがするでしょう?」


 葵が不安げな顔で封筒を覗き込む。葵の言うように、このことが犯罪に絡んでいるか、否かは別にして、雑誌の切り抜き文字で文章を作るというのは、筆跡を知られたくないからという意図が見えてくる。


「で、中には何が入っていたのですか?」

「こちらです」


 封筒を開くと一枚の便箋が出てきた。そして、その紙にも封筒と同じように雑誌の切り抜きの文字で


 わ・た・し・は・お・ま・え・を・ミ・て・い・る


 と並べて貼られている。


「なんだこれ! 新手のラブレターか?」


 相変わらず、部長は通常営業でボケをかましてくれる。こんなのがラブレターだったら、俺は二度と欲しくはない。ってか、一度も貰った事ないんだけどね。


「こんな切り貼りで作ったラブレターなんてあるわけ無いでしょう!」

「気持ち悪いですぅ〜」


 知夏ちゃんは、便箋の薄気味悪さに身ぶるいしている。

 まぁ、普通の人なら、知夏ちゃんのような反応になるのが当然だと思う。


「唯倉さんは大丈夫ですか? この便箋を初めて見たときは、さぞかし怖かったでしょう」

「ええ」


 唯倉さんは心細げに答えた。


「しかーし! 今はもう私がついているから大丈夫! 大船に乗ったつもりで任せなさい」

 部長が隣りから話に割り込んできて、自分の胸をドンと叩く。絶対に大丈夫じゃない気がするのは、俺だけじゃ無いと思う。


「早速だけど、最近、誰かに告白され断ったりしなかった?」

「えーと、ああ、そう言えば一週間ほど前に、空手部の佐伯くんからおつき合いして貰えないかと言われたのですが、丁重にお断りいたしました」

「それだ!」


 部長は得意満面な顔で指を鳴らす。

 でたよ! 

 部長がこういう風に、得意満面な顔になっているときは、ロクでもない推理が発動するんだよな。


「もはや、この事件は解決したに等しい! 封筒と差し出し人でストーカーの犯人は……ズバリ! 佐伯だ!」


 あーあ、やっちゃったよ。

 確かに、『わたしはおまえをミている』という文面からすると、振られた腹いせにストーカー化したってことも考えられなくはないが、あまりに短絡的すぎないか。

 俺だけじゃなく、葵も、知夏ちゃんも、やれやれといった表情をしている。


「佐伯は、唯倉さんに振られたことを根に持って、この犯行に及んだ!」

「……はぁ」


 部長の何のひねりもないストレートな推理に、唯倉さんも少し戸惑い気味になっている。


「よし! 私がこれから佐伯に会って話をしてくる」

「ちょ、ちょっと、部長、それはマズイですよ」

「何がマズイんだ? 可愛い娘を守るのは私の役目、ミス研の役目、いや、全世界の男性の役目なのだ!」


 何言ってんだ、この人。


 引き止める言葉も聞かずに、部長は部室から飛び出して行った。

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