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三人の容疑者!⑦

「だから、何を言ったら、柳田先輩があんな必死な表情で走ってくるんだよ」

「えへへへへっ! それはね……」

「お、俺は行ってないからな!」


 凄い形相で走って来た柳田先輩が、俺たちに詰め寄ってくる。


「はい?」

「だから、俺は一年生の教室になんか行ってないって言ってんだよ!」

「えっ、でも…………」

「でも、じゃねぇ! 行ってないものは行ってないんだ」

「はあ…………」

「いらないことを言いふらしたら承知しないぞ!」


 それだけ言うと、すぐに黄色い声援の待つフィールドに戻って行った。


「えーと、葵さん」

「ん?」


 相変わらず、すっとぼけた顔で向こうを見ているけど、やってくれたなあ。

 柳田先輩のあの雰囲気からして、さっきつかまえたサッカー部員に『2日前の朝の事、言ってもいいのかな?』なんて感じで、伝えるよう指示したんだろ。


「柳田先輩を脅したのか?」

「えへへ〜」

「ったく、色々聞きたかったのになあ」

「悪かったわね」


 べーって舌を出している。

 まあ、いいか。とりあえず、今回の件に対する柳田先輩の態度は分かった。



「こんな様子でした」

「ふぅ〜ん。随分と怪しい態度だな」


 ダウンしていた部長だが、今は起き上がって椅子の背にもたれ、両手を頭に組んで話を聞きている。知夏ちゃんは相変わらず突っ伏している。


「そうですね。柳田先輩は明らかに何かを隠していますね」

「それが唯倉さんの封筒と関係があるかどうかなのだが…………まあ、あとは和紗君にまかせるよ。私はこれからデートの約束があるから」


 おーい! また始まった。面倒な事は全部押しつけるんだから。


「部長ぅ〜、残念でしたぁ。まだ、調べなきゃいけない映像が残ってるんですぅ〜」


 むっくり起き上がった知夏ちゃんの言葉に、小早川部長はがっくりとうなだれた。



「で、結局誰が犯人なの?」

「まあ、美咲ちゃんを好きだっていう気持ちが暴走してやった事だとしたら、柳田先輩が最有力候補になるんだけど…………」


 学校からの帰り道。俺と葵と美咲ちゃんの三人で、いつもと変わりの無い風景の通学路を歩いている。昨日と違う部分といえば、昨日よりも下校時刻が少し遅くなったので、運動部の部活帰りの生徒が多いくらいだ。


「だけどって、なんかはっきりしないなあ。ねぇ、美咲ちゃん」

「う、うん」


 葵の言葉に、美咲ちゃんは少し困った表情で笑っている。

 はっきりしない。

 葵の言葉通り、俺の中で何か引っかかるものがあるからだ。

 確かに、柳田先輩の行動はおかしかった。でも、仮に、美咲ちゃんが好きだっていう気持ちが暴走したんだとして、わざわざ切り貼り文字で『わたしはおまえをミている』なんて送るだろうか? 普通に考えれば、そんな便箋を送ることが逆効果になり、嫌われる原因になるってすぐにわかるはずだ。

 じゃあ、他の二人はどうだ?

 あの時刻に美咲ちゃんの教室にいたことと、理由は整合性がとれる。でも、その理由が後付されたものだったら?


「まあ、とりあえず、少し様子を見よう。こうやって僕たちがボディガードしているから、そう簡単には手を出してこないと思うよ」

「あんたがそう言うんだったらそうするけど……」


 葵はいつもの様に少し不満げにしている。

 葵の性格からするとあやしい部分があるのなら、それが解消されるまでとことん追求するタイプだから、俺のやり方はもどかしい感じがするのだろう。

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