女神転生
境界線の女神、ボルダナ=ミーエ。
身長約18m、体重大凡23t、ロケット型、重力無視のバストサイズはIカップ。お尻周りも多分10mはあろうかというガンダム級巨人女。人間サイズに換算すると身長180㎝のスーパーモデル体型といったところだろうか。スリットの隙間からチラリと奥に見えている下着はその髪と瞳の色と同じ灰色だった。
さて、変な事になってしまったが、この状況、どうするかな。
「何処を見てるんですか?漠土さん?」
「灰色のパンツ」
「ちょっと!……圧倒的身長差をいい事に、やりたい放題ですね。潰しますよ?」
「いや、見てるだけだ。俺は慎ましやかな貧乳派だし、下劣な巨乳女は好かない。どちらにしろ……巨人は初めてだから珍しくてね。周りに居る爺さん達は枯れ木の化物みたいなのに、お前は随分人間的なんだなと思って。体の構造も人間に準拠しているのか?」
「そうですよ、貴方達と一緒で魂を核に擬似的な肉体で構築されています。周りの方達とはまぁ……出生や在り方が違いますからね」
「ボルダナさんは何ガンダムなんすか?」
「ルナチタリウム製じゃないわよっ!確かにサイズはガンダム級だけど!」
「やっぱ、ボルダナさんは日本の文化に詳しいようで」
「そ、そりゃあ……何人も貴方達みたいな小さき者を異界へと送り続けてきたからね。自然と、そう、自然と知識が身につくの」
「なんか隠してない?まぁいいけどさ。それよりやっぱ初代こそ至高だよな」
「分かるわ!ザクのデザインとか私好き」
「俺はジムとかボール派だけどな」
「あぁ、捨てがたい。いいよね、量産型機のロマン……」
「ところでさ……」
「何かしら?」
「この俺の横に居る虹色の美少女さ……俺を轢いた婆さんだよね?」
「いえいえ、子猫を助ける為にコンクリートの壁に激突した可哀想な女の子ですよ?そんな、殺気をムンムンさせないで下さいよー、あはあは」
「いや、もう、俺の中の本能がそう告げてるから。こいつが俺を殺した婆さんだって。あの婆さんを若くしたら大体こんな感じだって」
「他人の空似ですよ。ほら、全然年齢も違うでしょ?」
「何となく読めて来たけどさ……加害者たる高齢者側にも救済措置があるのだとしたら……俺みたいにまともに会話出来ない場合があるんじゃないのか?」
「は、はい。救済措置が施行されて間もない頃は……状況説明に二日、認識の訂正に更に三日、結局意図が伝わらないケースも多々ありました。魂だけの存在となった彼等に外部的なサポートシステム、つまり人体改造の適切な効果は得られませんからね……殆どの方が認知症を患っておられました」
「だから俺にしてる説明をすっ飛ばして、取り敢えず転生させてから説明をしてしまおうという魂胆じゃないのか?」
「……」
「反論しないと言う事はイエスととっていいって事だよな?」
「もし、そうだとしたらどうするつもりなんです?」
「俺とあの婆さんは謂わば、被害者と加害者なの。そこんとこ分かってるよね?」
「あ、あれは……高齢者による巻き込み事故で……」
「違うだろ?猫を助けようと天秤に命の重さをかけた結果、俺を殺した。裁判を起こせば間違い無く、過失運転致死傷罪に問われるはずだ」
「うぐっ、それはそうですが……お二人とも死んで……」
「関係無い。罪は死ねば消え去るのか?違うだろ?ここで裁判を起こされたく無かったら……被害者である俺から提案がある」
その眼差しが心配そうに俺を見下ろす。駆け引きは既に始まっている。なぁなぁで流されて、転生する奴は馬鹿だ。ゲームの難易度は……初期設定で殆ど決まるんだよ。悩んで考え抜いたとしても損は無いはず。此処は退く訳にはいかない。それに俺の選択に現世の命運が掛かっている。何か打開策はあるはずだ。しかし、10ポイントでは恐らく何も出来ない事は確実だ。
「……示談だ」
「示談で……済ませようと?そんな持ち掛けをしてきたのは貴方が初めてですよ!幾ら私達から巻き上げようと言うのですか?!」
「……金も大事だが、俺にはもっと足りてないものがあるよな?」
「こ、幸福ポイント……ですね」
「そうだ。10ポイントじゃ、うまい棒すら買えない」
「ポイント=金額ではありませんが、そのポイントは貴方がゲームを入手した時に発生したポイントです。つまり……新作ゲーム一本分。貴方が予約していたゲーム、約8千円分ですね……安心して下さい、予約割引分千円は加味されてません」
女神に転生した人間に対する特別措置は……恐らくただの転生者よりも優遇されているはずだ。神々から取れないなら、取れるところから取る。
「少し待ってくださいね……彼女、まだ意識が覚醒しておらず、こちらの呼び掛けに応えませんでした。転生手続きの途中なのかも知れません。けど、肉体がこうして構築されたと言う事は各能力値や決められているはずなので……あっ、出ました。貴女の幸福ポイントは800ポイントですね」
「はっ?!俺の80倍?!」
「……寿命的にはあと19年ほど健康的に生きられたみたいで……中学生のお孫さんも子供を産まれて幸せで満たされる人生でしたね……何処かの誰かさんとすごい違いですね……」
「俺の事だろっ!うるせー!爆死でも名誉の自爆だ!笑われる覚えはねぇぞ!」
現段階で明らかになっている能力値が示されるが、そのどれもが俺とは桁違いだった。さすが女神。特別待遇だ。あと、レベル=享年なのな。だから俺はレベル22なのか。
感心していると、足を崩したまま上半身だけを起こす少女。薄っすらと目は開いているものの、まだ意識はハッキリとしていないようだ。
俺と同じ様に異世界の説明をされているが、俺が選べる五つ世界と比べて選べる数が多かった。これが只の転生者と女神転生者の違いか。って、本人、寝ぼけてるのかボルダナの話を全てスルーしている気がする。そのどれもに無反応なのだ。むしろ、俺の方が説明を良く聞いている。
「さぁ……女神カルミナよ……貴女は女神として世界を良き方向へと導く存在。その徳を積み、世界に秩序と安寧を齎すのです……あら?聞いてますか?」
ふと気付く。辺りに浮遊する小さな白い光達が小刻みに輝き、震えている。軽井美那子、もといカルミナと呼ばれた美少女が立ち上がると白き星は胎動し、その周りを嬉しそうに回り始める。先程までは無かった現象だ。その光景に周りの枯木爺や巨女のボルダナまで困惑している。聴き取れない言葉を話しながらお互いに顔を見合わせ、境界のボルダナが戸惑いながら呟く。
「こ、これは?彼女の目覚めと共に幸星が反応している?」
光の粒子を纏い、神々しいまでの光を放ちながら眼を完全に開く虹色の女神。細く小く慎ましやかな肢体を纏う丈の短い純白の法衣には血脈の様に巡る液状水晶が七色の光を放ちながら瞬いている。その瞬きに反応するように辺りに浮遊する星々も七色の輝きを帯び始める。
光の加減により七色に煌めく癖のない真っ直ぐな白銀の髪が風も無いのに揺らめいている。これが女神?
開かれた大きな瞳の色さえ、その色が移ろい、様々な色相を見せている。
その柔らかい微笑みの前、俺は相手が自分を轢き殺した婆である事さえ彼方に忘れていた。その目が俺を捉え、ステ振りに悩み、座り込んでいる俺を見下ろしている。丁度俺の目線は身体に沿うように張り付いた法衣に設けられたスリットから僅かに覗く、小さな丘隆に釘付けになってしまう。まさに女神。只のデカイだけの女とは違う。その華の蕾にも似た桃色の唇から俺に言葉を投げ掛ける。
「あっ!君は……私がさっき轢き殺した子だね!ごめんなさ……うっ、おぼろろろろぇっ!!」
投げ掛けたっていうか、吐き掛けられた。ゲロを。うん、臭くは無い、寧ろいい匂いがするが……あまり気持ちの良いものでは無い。
「ご、ごめんなさい!貴方を轢いた時の記憶がフラッシュバックして……」
吐瀉物までもが虹色に輝き、俺の視界の半分を覆っている。気分が悪いのかその場に座り込み床?に吐瀉物を撒き散らしている。おいおい折角の可愛い顔が台無しだ。あっ、俺の所為か。フラつき立ち上がる時に法衣の裾から見えた下着は虹色では無く純白だった。全て灰色な何処ぞの女神とは大違いである。
「うっ、ご、ごめんね、君。でも生きてて良かったよ……でも、私が追突した時、首がポーンって、飛んでった気がし……うぅ、おぼぼ……って、何この格好?!恥ずかしい……」
フラつく脚で吐瀉物まみれの俺の横を通り過ぎ、片腕で裾の短い法衣を抑えながら巨女神のボルダナさんの法衣の端を掴む。
「こんな所にカーテンが……仕方ないねぇ……今は此れで我慢するしか……えぃやー!」
俺が最期に見た光景は境界の巨女神、ボルダナの衣服が物凄い勢いで斜めに引き千切られていく光景だった。
突然の出来事にその顔を硬直させたままのボルダナさん。ノットブラ派だったらしく、その勢いで露わになった白い片乳が揺れ、大気を震わせる。虹色の女神とは別の意味で凄かった。その横を見ると虹の女神は引き千切ったカーテン(だと思っているようだ)を身体に巻き付け、安心した様にほっこりとした笑顔を咲かせていた。かわいいね!
ボルダナの方に向き直ると、顔を真っ赤にさせながら幾何学的な錫杖が振り上げられ、それが俺に叩きつけられる直前だった。それは杖というよりも……鈍器でした。
俺は潰された。
羽虫の様に。
人生二回目のペッチャンコ。
その時、虹の女神に二度目のトラウマが刻まれた事を誰も知らない。
名前:カルミナ
Lv:75
天職:虹の女神
成長型:脳筋
HP 420
MP 600
筋力 460
技量 50
体力 323
精神力 80
俊敏性 120
天運 290
記憶領域 1
初期幸福ポイント 500
初期不幸ポイント 20
後で見せられた虹の女神様のステータスは完全に脳筋だった。