混ざり者の凶弾
一瞬の出来事だった。
車体が"何かに引っかかったように"大きく揺れた。ガリガリと車体が軋む轟音と空転する車輪の音が止んだ時、大の字に煽ぎ倒れていた黒猫めがけて一直線に、赤い閃光が突き刺さる。
車体に煽られ大きくバランスを崩していた私の目にも、その真っ赤な残像はよく見えた。天井には小さく丸い穴が空き、まるで照準のようにナイルの右肩を照らしていた。
「ぐうっ……!?うウッ………あ゙ァーーっ!!!!ッ!?」
「お兄ちゃん!?お兄ちゃん!!どうしたのお兄ちゃん!?」
呼吸を落ち着かせていたナイルがまた呻き声をあげる。撃たれた彼の右肩から先がビタンビタンと、打ち上げられた魚のように、人体ではあり得ない跳ね方をしている。残った左手はブチブチと頭髪を引き抜くほどの力で頭を抑えつけている。
"再発"…直感的にそう感じた。さっきの赤い弾丸は、取り戻された彼の理性をもう一度引っぺがすためのトリガーだ。
…それは一体誰から?私の意識は悶え苦しむナイルよりも、天井に空いた穴に向けられていた。
「おいミラルカ、聞いてるか?」
「よっ……と、どうしたの?」
「アルは天井にいく。アンタはナイルとネロを見張っててくれ」
「えーー、アタシも上がいいのに…」
「つべこべ言うな。あいつがまたおかしくなったら止められるのはアンタしかいない……」
「…その時は"どうしてもいいの?"」
「………やむを得ん場合にはな…」
「うん、わかった」
「…じゃあ、頼んだ」
本当ならばなるべく殺しは避けたい、避けさせたい。それはナイルにもネロにも、そしてミラルカのためでもある。だがこうなっては仕方がない。犠牲の一つも覚悟しなくてはならない。
兎も角私は、"これをやらかした元凶"を抑えなければならない。駆け足で車両の外に回り、連結口をよじ登って強風吹き荒ぶ屋根の上へと身を乗り出した。
カタンカタンと車輪が鉄を踏む音と、それを遮るような風音が耳を通り過ぎていく。眼前から叩きつける風と塵の礫を薄目で耐えながら、細い視界の中で黒く棚引く影を見つける。慣性に慣れ始めた足を屋根に押し付け、改めてその黒い影を直視する。
「申し訳ないわ、ご迷惑お掛けしたみたい」
黒い毛皮のロングコートと帽子、長く棚引く黄白の頭髪、そして左右から伸びる枝分かれした長い角。
有り体に言えば線の細い貴婦人…だが両手にはドラムマガジン付のアサルトライフル。確実に旅行って風貌じゃない。
「どっこの誰だか分からんが、随分イイ腕してんじゃねぇか、オバサン」
「あら、初対面なのにオバサン呼びは失礼ではなくて?」
「悪いなぁ、育ちが悪いもんでよ。…戦争行くなら買ってやるよ、生憎この電車はそれどころじゃねぇんだ」
「知っているわ、愛しの息子が教えてくれたもの」
「息子…?」
「ええそうよ。『神の身元に御座せられるものは皆等しく神の子である』…そしてその神の教えを賜り、それを広く伝える私は己が生に惑う子羊たちの母である。だから”彼”は息子よ?」
「ああ~なるほど、巷で噂のインチキ宗教か!じゃあアンタも"無関係"じゃねぇってことだな」
「あら、気付いていたくせに」
「何事も"裏取り"ってのは重要なんだ………そうだよなぁ、バーナードッ!!」
「っ!!」
貴婦人が振り向いた先には先頭車両側から屋根を伝って駆け寄りながら拳銃を発砲する駄犬がいた。
まだまだ私たちのいる車両との距離は遠いが、列車が走る慣性と追い風を背にした弾丸は恐ろしい速度と射程を伴って車両の屋根を掠めていく。だが、大きく揺れる車上では正確に狙いを定めるのは難しい。私の足元にも暴れ弾が着弾する。
「当たってねぇぞ駄犬っ!!」
「うるせぇっ!これが精一杯だっつの!!」
「……小賢しい真似を」
貴婦人は頬に弾丸を掠りながらも片手のアサルトライフルを掲げ駄犬に向けて発砲を行う。火力と弾数で勝る分、風下といえどその制圧力は健在だ。バーナードの放った弾幕は瞬時に搔き消され、バーナード自身も屋根から降りて退避せざるを得なくなる。
「…貴方もよ、女狐!」
「ちっ!」
駄犬に注意を割いているうちに接近し転送した剣で切りつけようと懐に潜り込むも、それを気取られて至近距離でもう片方のライフルを発砲される。即座に身体を回転し距離を取って回避するも、右腿を銃弾が掠る。
「貴方は風下がお似合いよ。残念だったわね、私を刺せる好機だったのに」
「…ッケ、この距離からでもアンタの弾丸、全部捌いてやるよ…」
「それはどうかしら?」
「……っ!?」
踏ん張りを利かせていた右足の感覚がおかしいことに気付く。弾丸を掠った部分から先の感覚が無くなり、自分の意志とは関係なくガタガタと震えはじめる。
「なんっ……だこれ……!?」
震えは徐々に大きくなり、そしてバランスが保てなくなった私はそのままその場にへたり込む。もはや震えなどと言うものでは無いほど暴れ出した右足は、感覚がないままゴキゴキと折れ曲がり、再起不能なほどに拉げてしまった。
「うそ……だろ…足が………」
「先程、なんと仰いました?」
「っ!!」
足に気を取られているうちに、額に銃口を突き付けられる。
「威勢のいいこと言ってましたわね、私の弾丸を全部捌く…やってみて下さいまし?」
「………っ……っっ……!!」
左腕は無くし、右足は潰れ、もはや立つこともままならない。動けないことが、ここまで怖い。恐怖、絶望、それらがいっぺんに襲い掛かってくる。今私にできることは、眼前の銃口を受け入れる…それしかできない。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「っ!」
貴婦人の背後から、隠れて距離を詰めていたバーナードが叫声と共に現れる。貴婦人はもう片方のライフルをバーナードに向ける。
「よ…よせバーナード!!やめろぉ!」
コイツに撃たれたら、撃たれた部分から身体の主導権を乗っ取られる…きっとそれがコイツの能力だ。今のままでは圧倒的に制圧力が足りない。焼け石に水だバーナード!
「やめるワケねぇだろっバーーーカッッ!!!!」
「往生際が悪いのね」
貴婦人が発砲を敢行する。しかしバーナードはそのまま突進を止めずこちらに走り続ける。
弾丸が当たる直前、両腕に装備していた二枚の盾を展開する…さっき私達が乗客をいなす為に転送していた、二枚の盾だ。
「っ!!」
「こんだけ速ぇ慣性と向かい風が乗ってりゃあよぉ!この程度の盾でもなんとかなるもんなんだよォ!」
しかし銃弾の雨を受け続ける中で次第に削られていく二枚の盾。最後にはそれらを手放し、貴婦人に向かって放り投げる。後ろから風を受けたボロボロの盾は恐ろしい速度で貴婦人に迫り、そして至近距離で大きく破裂した。
貴婦人もその勢いで跳ね飛ばされ、私の上空を通過しながら一つ後ろの車両の屋根へと転落する。
「お前…バーナード!…なんで逃げなかった!」
「けっ、ボロボロになりやがって……いいか?伴侶のシモの世話すんのはオレの役目なんだよ!こんなトコで死なれちゃ困るっつーの!」
「……ハァ……ほんっとアンタ嫌い……でも助かったわ」
一度は諦めかけたが、このクズのお陰でなんとか気持ちも持ち直せそうだ…今回ばかりは本当に感謝しかない。
「…動かなくはなったけど、足の感覚が戻ってない」
「まだくたばっちゃいねぇか、あの女…」
「出来ればもう戻って欲しくはないな…どんな痛みになるか見当も付かん」
バーナードに抱きかかえられ、飛んでいった貴婦人を見下ろす。
大きな外傷は見られないが、吹っ飛ばされた勢いで片方のライフルを落としたようだ。さらに打ち付けられた方の角が折れている。
「…ところでアンタ、運転室に行ってたんじゃないのか!?」
「ああ、行ったさ。きっちりしっかり制御盤はブッ壊されていた上に、そこの女がアホみたいな"すれ違い事故"を起こしたせいで緊急停止用の弁もイカれた。加速しきったまま、もうコイツは止まらねぇ」
「はぁ!?それじゃあどうすんだよ!?」
「どうもこうもねぇよ!今から打開策考えんだよっ!」
「ほんと使えねぇよアンタ!!」
「あぁ!?もういっぺん言ってみろよこっから降ろすぞテメェ!」
呆れた…この女を倒してもこっから降りられなかったら結局全員お陀仏じゃねぇか…どうすんだよこれ…。
「…遠巻きだが、そろそろカンバスタが見え始めてるぞ」
「ああ、ヤバいのは間違いねぇし、向こう側も異変には気付いてるだろうよ。だから…」
そう言って、バーナードは懐から携帯端末を取り出す。
「もう"連絡済み"だ。こっちからは打てる手がもう無ぇからな」
―――――――――
「あーあー、もしもし、聞こえてるか?」
「こんな時になんの用だ」
「悪ぃ、折り入ってテメェに頼みたいことがある。早急だ」
―――暫く前のこと。洞窟内の調査を終え、バギーに乗り込んだシェパードのもとに一件の通信が入る。
声からしていい加減で粗野な印象を抱くその男性への心象が地に落ちていることもあり、普段は冷静で理知的な彼の声の端々にも強めの怒気が混ざる。
「その前に一つ、君に聞きたいことがある。昨晩に連絡を出した筈だが一切反応が無かったな?あれはどういう了見だ」
「ちょっとこっちも立て込んでてな、それどころじゃなかったんだ」
「立て込んでいる…だと?君のスケジュールは把握している。君は業務時間外ではなかったか?」
「差し込みの予定が入ったんだ。だから出られなかった」
この時点でシェパードも異変に気付く。バーナードとの通信がやけにノイズがかっていること。バーナード側の環境音が酷くうるさいこと、そしてバーナードの声色が、いつもと打って変わって余裕がなさそうなこと。なにか不可解な事情を感じ取ったシェパードは、内に滾る憤りを一度引き、バーナードに会話の主導権を譲る。
「……出られなかったのなら仕方無い。で、今回君からの一方的な要件は何かね」
「ああ、頼むから真面目に話を聞いてくれ!」
「さっさと喋れ!君はいつもいつも言い訳がましく前置きが長いんだよっ!」
「わかった!わかったから!!……今オレは訳あってトラッシュラインに乗ってる!社内で『列車強盗』が暴れたお陰でブレーキが効かなくなっちまった、このままじゃカンバスタが火の海になるぞ!!」
「なんだとっ!?今どの位置にいるんだ!」
「加速が付きすぎてて分からねぇ!!だが遠目でカンバスタの渓谷が見える辺りにきた、殆ど猶予はねぇぞ!!」
「もう少し余裕を持って連絡することは出来なかったのか!?」
「立て込んでたんだ!いろいろとな!!兎に角こっちじゃもう列車の制御ができねぇ!!だから…………せめて民間人への避難誘導だけでも頼む!公安の権力使えば今からでも遅くはねぇ筈だ、一人でも多く犠牲者を減らしてくれ!同僚として後生の頼みだっ!!」
「……っ!!」
「腐ってもこいつは保安官である」…バーナードの真っ直ぐな"頼み"から感じ取ったその意志にシェパードはハッとすると共に頭を抱えた。ずる賢い男である…シェパードが"そう頼まれれば断れない"ことを知っていないと出ない言葉の羅列。自己犠牲的な精神性。緊急事態に於いて最も効率的な決断。そして、仮に方便だとしてもそれを貫かざるを得ない状況とその覚悟を、シェパードは不服に思った。
生真面目であるが故に、シェパードはそういった"調子のいい奴"が頗る嫌いであった。
「…それは、君の独断か?」
「あぁ?」
「列車である以上、君以外の乗客も乗っている筈だろう?それらの人命は"犠牲者"に含まれないのかね?」
「だがよぉ!こっちゃもう手立てが…っ!」
「無い知恵絞るのは君の十八番だろう!情けないこと言う前により最善の道を考えろ!こちらも、犠牲者を出さぬよう最善を尽くすつもりで事に当たらせてもらう」
「っ!…恩に着るぜ!」
「…私も、君から聞き出さねばいけないことが山ほどある。腹の虫がおさまるまでは生きててもらわないと困るんだ、死に逃げなどさせてやるものか……!!」
そして何より、自分の嫌いなそいつの要件を100%飲むことは、プライドが許さなかった。だから無茶を押し通す、より良い"結果"で証明する。やけくそ気味だがそう取り付けた。
「…!ああ了解、期待してるぜ」
「いいか、君の命は私が預かることになるんだ、これ以上厄介事は持ち込まないでくれたまえ!」
そう言って通信を打ち切る。奥歯を噛みしめ、眉間に寄せたしわの数が増えていく。紳士たる彼の良心が、鳴らしたい舌打ちをぐっとこらえて口の中に押さえつける。
驚きの剣幕を横目にしたレンドロスが冷や汗混じりにため息を吐く。
「…厄介な同僚を持つと大変だなぁ」
「ああ、全くだ!」
「そんで、次の目的地は?」
「一度街に戻る!一刻も早く、まずはこの状況を全て伝える!急ぐぞ!」
バギーのエンジンを最大に吹かし、一路カンバスタへと戻るシェパードとレンドロス。
走り出す地平線の先からうっすらと、悲鳴を上げるトラッシュラインの金切り声が聞こえた気がした。
―――――――――
「ってなワケで、一応"遺言"はあっちにいるウチの同僚に残しといた」
「結局助かる保証はねぇのかよ」
「無茶を言うな、これでも善処してる方だと思うぜ?とにかく今は、そいつが起き上がる前にフン縛ってこっちも思いつく限りのことをするしか無ぇ!だからやるぞ!!」
「こっちは身動きも取れないんだが」
「テメェは能力とアタマだけ貸してくれればいい」
そう言って私を抱きかかえたまま伏した貴婦人の方へ足を進める。しかしその足取りは徐々に重く、覚束無くなっていく。
よく見てみれば額には驚くほどの脂汗、動悸も荒くなっている。
「……おい、アンタまさか」
次の瞬間、ガクンと両膝を突いて倒れるバーナード。放り出された私ははじめて、赤く染まったスーツと右脇腹の銃創を目にする。あの突撃の最中、掠ってしまったたった一発の弾丸…。
「おいバーナード!!意識はあるんだろうな!?」
「…ッハァ、チクショウ!なんとか耐えれると思ったのに、カッコつかねぇなぁ………!!」
「全く、手間をかけさせますね…」
背後から、伏していた筈の女の声が聞こえる。こちらにライフルを構えているであろうことが、気配で分かる。
…そして弾丸を受けたということは、そこから主導権を奪われるということである。倒れたバーナードの下半身がガタガタと震えだす。
「……クソッ…いいのかアンタ!アル達を殺したとしても、このままじゃ結局この列車は止まらねぇぞ!!全員一緒にお陀仏だ!」
「あら?なにを言っているのかしら?殺したりなんかしないわよ」
「っ!?ぐっ……!?」
脳髄を刺されたような強烈な頭痛、そしてキィンという強い耳鳴り……外の音の一切が消えてなくなる、目の前が霞んでいく。その中で、あの女の声だけが鮮明に聞こえる…。
『貴女は私のチカラを、主導権を奪う力だと思ったのね?』
『でも残念、少し違うわ。私のチカラは、少しでも私の血を分けた人を"家族"にする力』
『今から貴女も、そこで倒れてる子犬さんも、みんな私の"家族"になるの』
『これから貴女達は私の子供になるのよ?それはそれは幸福な事ですわ』
脳に響くそれらの言葉に、抗うのが精一杯だった…今にも"家族"へと引き摺り落ちそうな意識を、口内の肉を奥歯で噛みしめ、痛覚で正気に戻す。
『さあ、"家族"になるのです。貴女は私の大切な子よ…口の中を痛めるなんて、野蛮なことはしないように…さあ、私に全てを委ねなさい…』
しかし徐々に、その"意識の抵抗"の主導権すらも奪われていく……噛みしめる力が、解けていく…。
『そう…いい子ね…貴女は』
「本当に気が置けない人だなぁ、全く」
『っ!!』
急に痛覚が戻ってきた。噛みしめていた口内の痛みも、拉げた足の激痛も、そして何より、目の前が鮮明になった。
鮮明になった眼前に飛び込んできたのは、貴婦人と戦うミラルカの姿。
こちらに気付いたミラルカが何かを語りかけている。だが耳はまだ聞こえない。それどころか、意識が覚醒してる筈なのにまだあの貴婦人と"誰か"が頭ン中で会話している!
『貴方はいったいどこから…!?』
「何処から?ボクはずっとココにいる。コイツはボクの"入れ物"なんだから」
『……まさか、先客がいるなんて…』
"入れ物"…?私のことを"入れ物"って言ったかこいつ…?
「おっと、起きちゃったみたいだね。キミの中の"不純物"は全部追い出しといたよ。殺るならさっさと殺っちゃいな、ヴィンプロッソ」
"誰か"がそう言ってパチンと指を鳴らすと、無音だった聴覚が一斉に周りの轟音を拾い出す。漸く意識が覚醒した。
「ちょっとー!あんだけ勢いよく出てったんだから寝てないでよー!!」
不服そうな声を漏らすミラルカが貴婦人の周囲を飛び回りながらかく乱している。
拉げた足はもう役には立たないが、ここで役に立たなきゃバディとして面目が立たない。
右手から鎖を転送し、風に乗せて貴婦人のライフルへと投げつける。鎖はライフルに絡まり、彼女の動きを阻害する。
「貴女……っ!なんで"居る"の!?"家族"にならないの…!?」
「さあな、アルにもよく分からねぇが……今はこっちが風上だっ!良いようにはさせねぇぞ、やっちまえミラルカ!!」
「あいよーっ!」
絡まったライフルと私に気を取られた貴婦人に死角から、ミラルカがその顔面に強烈な蹴りを入れる。
その勢いで頭に被っていた帽子が吹き飛んだ。帽子の裏に隠れていた、山羊のものとは思われがたい薄ピンク色の耳が曝け出される。
「……アンタ、なんだそれは?」
「くっ…!」
見られてはいけないものを見られたかのように、曝け出されたピンクの耳を咄嗟に手で隠す貴婦人。
「貴女ともう一度"接触"することで…漸く貴女のことが分かりました」
「っ!?貴方、なんで…!?」
貴婦人の背後に、負傷したナイルを支えたネロがスゥ…と姿を現す。
その様子に貴婦人はまたも驚愕とした表情を表す。
「貴女に一度身体を乗っ取られかけた際、ボクの中にあった"自分の姿"と向き合いましたし、ネロに抗生剤も打たれています…そもそも、その銃弾のメカニズムはボクが開発したものです。原理さえ分かれば、貴女の"能力"はそこまで完全なものではない」
「……嘘でしょう?……貴方は、貴方は今まで、私の"家族"だったでしょう!?今更どういうことなのよ!?」
「…申し訳ありません、今まで気付きませんでした…どうやら貴女は、ボクの知っているマザーとは…ボクら兄妹が尊敬していた"シスター・アン"とは、別人だったようです…」
「っっ!!」
「今の貴女は"黒山羊"なんかではありません……貴女の本来の姿は"豚"、そうですよね、ザナドゥ教団指導者兼、『偽りの黒山羊』団長アン・ドゥ……いえ、アンナ・ハルシュドットさん」
お久しぶりでございます。またも前回から2~3か月ほどお待たせいたしました。
今回はついに相手の首魁との一騎打ち(?)になりましたが、書いてるうちに相変わらずジャーノンさんが主人公とは言えないくらい活躍していない…牙が抜けすぎてますねこの主人公。
登場して一貫してジャーノンさんから"貴婦人"呼びされている敵さんですが、後半にナイルくんが喋ってくれたとおりアン(アンナ)という名前になります。この作品の登場人物、基本的に名乗りを上げずにおっぱじめるのでモノローグに名前を反映させるのがめちゃ大変です。
ジャーノン(下半身負傷)、バーナード(戦闘不能)、ミラルカ、ナイル、ネロが全員そろってアンを囲んでいる、オマケに装備も剥がされているのでアンにはもう逃げ場ありませんね。相手のボスにしては呆気ないカンジですが、元々戦闘面はそこまで得意な人でもないので許してください。
しかし列車は止まってませんしもう暫くは緊急事態が続きます!お話がどんな終点に向かうのか、乞うご期待よろしくお願い致します。次回の更新も、期待しない程度に首を長くしてお待ちくださいませ。




