Ⅱ.散華薔薇
少女は青年の腕の中で永遠の眠りにつく。
生存者四名
死亡者十一名
残酷劇は終わりを告げた。
+―…+†+…―+
小高い丘の上、墓標の前に少女が佇む。その手に握られた一輪の薔薇は少女のドレスとよく似た純白の花を咲かせていた。
「お城の庭に咲いていたの。綺麗だからアンジェにも見せてあげようと思って」
悲しげに微笑み、少女は白薔薇を供えた。静かな午後。風音だけが聞こえる。
「私もここに残ることにしたわ。一緒にパパとママに謝らなくちゃだね。帰れなくてごめんなさいって。……ずっと傍にいるわ、アンジェ──」
――私はここで平和を謳い続ける。もうあんな悲劇が起こらないように。だから、ずっと見守っていて──。
また来るね、小さく呟いた少女は踵を返す。少し遠くにこちらへ向かう青年の姿が見えた。少女と目が合ったその瞬間、青年は思わず足を止めた。少女は軽く会釈し、青年の隣を足早に通り過ぎる。振り返った青年の瞳は複雑な色を映し出した。
少女の背中が見えなくなると青年は再び歩き出した。先程まで少女がいた墓標の前で青年はその足を止める。その手に握られた一輪の薔薇は彼の瞳とよく似た漆黒の花を咲かせていた。
「……アンジェリカ」
ひとり呟いたそれは風音に掻き消されてしまいそうな程小さな声だった。じっと墓標を見つめ、青年は動かない。暫くそうした後、青年は黒薔薇を供え、来た道を戻っていった。
彼の背中を見送るように白と黒の薔薇が小さく風に揺れた──。
ここまで読んで下さりありがとうございます。かなり時間が掛かってしまいましたが、やっと完結までもっていくことができました。話の構成や文章などまだまだ甘い点も多くお恥ずかしいですが、この作品を通して色々な方と関わらせて頂くことができ、本当に嬉しく思います。私にとってとても思い入れのある作品となりました。ご愛読、本当にありがとうございました。