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問題発生

 俺は今、大きな問題を抱えている。それは何かって?


 海から帰ってきたお嬢様は暫くの間ピリピリしていた。しかし、それは何時もの事なので問題ではない。


 お嬢様が海に行っている間、松尾さんやベアトリクスさんも不在だった。学校は休みだし、藤井さんや今井さんの監視の元で一日中トレーニングをさせられた。それも今となれば慣れたもので、大した問題ではない。

 

 答えはベアトリクスさんの乳……もとい、癒し成分が大きく減じていた方が問題だった。花代さんが屋敷に居るって? 花代さんのだと大きさが同じでも違うのです。

 もっとも、それも過去の話だ。お嬢様と共に癒しが帰ってきた。ピリピリムードのせいでマイナス分の方が大きい気もするが。


 では何が問題か。俺の本来の仕事である。


 休みが明け、安寿と久しぶりに再会した。図書館に行けなかったことを詫びると「そんな事よりも心配したんですよ!」と言われた。ここまでは織り込み済み。


 問題はその後だ。休み中の話になると、安寿が提供する話題はやっぱりあれである。


「お休み中に竜安寺さんの別荘にリチャード様と行ったんです」


 ああ、海って別荘だったのか。


「竜安寺さんの別荘にもビックリしたんですけど、大きなタコが出てですね」


 海に女の子と言えばタコだよね……って本当に出たんだ。行けなくて良かった。


「で、リチャード様がそれをパパッとやっつけてくれたんですけど、恰好が良かったな~」


 頬を染める安寿。嫌な予感がして俺は見てみたね。何をって? 当然アレだよ。


 好感度:1020475


 百万越えていました。まだ二回程変身を残してそうな上がり方で驚いたね。

 俺、この子を誘惑するとか無理じゃん。


 ついでに確認した俺への好感度も、休み前に6800まで上げたのに4300にまで下がっていた。約束を無視したからか、暫く会わなかったからか。


 だが考えてみれば53万の段階で無理なのだから、大きな問題でもないか。


 放課後。その安寿が優しさを湛えた笑顔で俺に話しかけてきた。


「そういえば、遠足の班は決めましたか?」


 遠足なんてあるのか。初耳だ。


「今度の班は四人から六人って話ですから、良かったら美菜も誘って――」


「馬野クンいる~?」


 噂の健康優良児が教室に現れた。五月女は無遠慮に入ってくると、真っ直ぐに俺と安寿の所にやってきた。


「この前の実技試験では大活躍だったんだよね? 今度はボクと同じ班を組もうよ」


 実技試験の活躍と遠足の班の関係が繋がらないが……。


「丁度、その件を話していたところなの」


 安寿が五月女に説明するように続ける。


「今度は美菜も入れて班を組もうよ……って」


「えー! ボクは遠慮するよ。安寿と王子様にあてられても目のやり場に困るしさ」


 それは同意である。


「いやいや! わたしと王子様は全然そんな……身分も違うし……」


 安寿は茹蛸の様に顔を赤らめ、五月女はからかうように笑う。


「冗談は置いとくとして、ボク達が一緒に組んで一番になっても面白くないからさ。ってことで、今回はパース。代わりに馬野クンを貰うね」


 遠足なのに一番? あと、例によって俺は蚊帳の外。俺のことなのに。


 その時、教室全体に聞き覚えのある甲高い笑い声が響いた。


「オーッホッホッ!」


 ああ、やっぱりお嬢様。普通科の教室なんかに来て何をしたいのですか。嫌な予感しかしません。


「山猿はマナー以前に手癖が悪いようですわね」


 お嬢様も五月女とばっかり絡んでないで安寿とも絡んでください。一応は恋のライバルなんですから。一方的にだけど。


「手癖ってなんだい! 人聞きの悪い」


 デジャヴを憶えるやり取りである。


「人のものを盗むのは泥棒でしてよ」


「いつ、ボクが盗みなんてしたって言うんだい!」


「今、ここで、みなさんの目の前で」


 教室の注目が集まっていた。が、話の内容を理解できた者は一人もいなかっただろう。俺を含めて。


「そこの『馬野骨造』は、わたくし竜安寺貴子の使用人でしてよ。人の使用人を勝手に使おうとするのは泥棒のすることじゃありませんことで?」


 何という情報開示。教室の視線が俺に集中しています。


「し、使用人だからって物みたいに言うなんて酷いよ」


 五月女さんってば、いい子だ。


「あら、物と同じでしてよ。どう使おうともわたくしの自由。それこそ殺そうが何しようとも。首にするまではわたくしの所有物なのですから」


「で、でも……」


「お黙り。使用収益処分は持ち主に認められた権利でしてよ。文句があるなら国の方に仰ってはいかが?」


 お嬢様は五月女を黙らせると、例の高笑い。しかし思った以上に酷いな、異世界。


「その様なことでして、そこの使用人はわたくしの班に加えますので。それではごきげんよう」


 言いたいことだけ言って、お嬢様はどこかに行ってしまった。

 残されたのは、教室の微妙な空気と悩む俺。


 安寿を誘惑する任務は元々達成できないからいいとしても、せっかく仲良くなったのにもう口を聞いてくれないだろうなぁ。教室でもこれから浮くんだろうな。

 いや、それよりもお嬢様と同じ班とか勘弁して欲しい。粗相があったら首にされそうだし。首にされたら野垂れ死にしますよ? 流石に晒し首にはしないよね?


 問題がないと思ったら急に問題だらけになってしまった放課後であった。



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