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お嬢様の自慢話

 マサラ鉱山に着いたのは早朝であった。あの後からの俺の待遇はかなり劣悪であった。停車する駅では外での見張りは毎回俺の役目だった。しかも頼りないからと他の使用人付き。でもってこの使用人たちに「お前が頼りないから俺達まで」とか「お嬢様のご機嫌が斜めじゃないか」とか「無駄に時間を浪費したからお嬢様の試験に合わせて強行軍になったじゃないか」なんて文句を言われるわけだ。

 そういえば俺も試験があったんだよな。字すら読めないけど。あと、安寿に謝らなきゃ。携帯がないと不便である。って、元の世界では携帯を使う相手がいなくなってたな。なんてちょっぴりおセンチにもなる。

 なんでこんなに考えがまとまらないかというと、実はほとんど寝ていない。いや、それ以前に休んでいない。駅に宿泊する際には、常に不寝番をやらされていた。他の人達は交代しているっていうのに俺は徹夜だ。でもって、馬車は揺れる。肉体的にも精神的にも疲れ果てていた初日こそ眠れたものの、今は寝られない。そして昨日の夜からマサラ鉱山へは駅での宿泊無しで一気に来たのだ。理由は勿論、お嬢様の試験な訳だが「お前が逃がすから時間が厳しくなったんだ」と馬車の中では針のむしろ。もうやだ、帰りたい。せめてベアトリクスさんの胸の中で眠りたい。けど、そんな事になったら怖い事になる気もする。だって「ヤる?」なんて躊躇(ちゅうちょ)なく言っちゃう人だし。そのシチュエーションならどっちの「ヤる」なのかはわからないな。疲労が限界で考えがまとまらない。自分でもなにを考えているのかわからなくなってきた。



 マサラ鉱山とされる場所は石の壁で覆われ城郭都市といった感じにも見えた。もっとも本当の城郭都市は見たことがないので実際はどうなのか知らないけど。

 お嬢様一行が到着すると門が開かれる。例によって、ずらりと人が並んで出迎えた。なんでも騎馬が先発してお嬢様の出発等を伝えているらしい。ご苦労な事である。

 お嬢様一行は城壁に囲まれた町の中を視察するという。随行するのはバトラーさん初め数人だろうからようやく休める。

「馬野。付いてらっしゃい」

 わーい。お嬢様命名の名前を呼んで貰った。って、何故か随行メンバー入りするし。

「今回はあなたにはわたくしの偉大さを知って頂かないとなりませんからね」

 ここでオーッホッホッと高笑い。言われてみればそうでした。色々ありすぎて忘れていました。


 役所っぽい所に案内された俺らに、代官と紹介された中年男が地図やら書類やらを片手に色々と説明する。今期の魔鉱石採掘量とか値段とかをお嬢様に言っているがチンプンカンプンだ。魔鉱石と魔晶石はわかったが、新式の魔鉱石の掘り出し方法諸々を聞かされてもわからないし、正直興味もない。いや、この世界の住人になるなら興味を持たなくっちゃいけないのだろうけど、眠いし疲れている。頭に入るわけがない。そしてこの町の面積なのだが、これは地図に数字が浮かんだ。


 面積:60.23平方キロメートル


 よくわからん。ピンとこないし、なぜ出たかもわからない。そう思っていると数字が変化した。


 面積:東京ドーム4633個分


 あ……うん。なんか広いのか狭いのかわからない。ピンと来るようで全くピンとこない代表例だよね、この表記って。

「なにをしてらっしゃるの」

 いつの間にか移動しようとしていたお嬢様に怒られた。

「次は魔鉱石の採石用の魔道人形を見せて差し上げますわ」

 そんなことを言われて出てきたのはなんとロボットであった。ロボットってだけでかなり衝撃的なのだが、そのデザインがなんとも……既視感(デジャヴ)? 黒いボディに金色の長くて細い手足、そして大きな目。美人系を想像した? 残念、21エモンのゴンスケでした。もっとも、正確に覚えている訳ではないので大体こんな感じってことなのだが。

「魔晶石を利用したゴーレムも開発中ですのよ」

 そして見せられたのは大きな人形である。


 高さ:326cm 重さ:15t


 なんだって。なんだか凄そうだが、異世界人基準ではどうなのだろう?

 だって……


 武力:64


 胸の所から出ている数値である。魔力が強いのかというと、


 魔力:36


 ってことらしい。


 それでも一つだけ言える事がある。俺よりも遥かに強い。

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