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苦悩の集

誰も彼もが弱者のこの世

作者: 時雨 小夜

某日、病院の一室にて。

 

 死にたくないんだ 誰かが言った

 死にたくないんだ 誰かが言った


 助けたいんだ 誰かが言った

 助けたいんだ 僕が言った


 旅行に行ってみたい 海で泳いでみたい

 お酒を飲んでみたい 猫を飼ってみたい


 君と手を繋ぎたい

 君と喜びを分かち合いたい

 君とお話ししたい 君とキスをしたい


 ベッドの上で、一言も話さない君は

 テーブルの上にあるルーズリーフに、

 震える手で書き連ねる


 僕の知らない君は

 僕の知らない君のまま

 テーブルの上にあるルーズリーフに、

 震える手で書き連ねる


 外の世界を知らない君は

 外の世界を知らない君のまま

 自分に訪れる事はないと知っている幸せを

 ルーズリーフに書き連ねる


 字を書いている時に君は

 いつも微かに笑う

 いつも閉じたままの口の端っこを

 微かに上げる



 でも君は、書き終わった後に泣いてしまう

 平常心を装っていても

 書き終わった後に泣いてしまう

 辛い現実に引き戻され、押し潰される



 君はいつも、無表情のまま

 テーブルの上にあるルーズリーフに

 願いをずっと書き連ねる


 僕が知ってしまった君は

 僕が知ってしまった君のまま

 テーブルの上にあるルーズリーフに

 願いをずっと書き連ねる


 歩いてみたい 走ってみたい

 毎日いい夢を見たい 沢山の友達が欲しい


 朝が欲しい 昼が欲しい

 夜が欲しい 明るい明日が欲しい

 いつも不安な毎日なんて要らない


 君は少しでも触れてしまえば

 簡単に折れてしまいそうな腕を

 必死に動かし、ルーズリーフに書き殴る


 今日も君は 泣き叫びながら

 悲痛に苦しみながら 今日を終える


 僕はただの傍観者 君を空から見ているだけ

 助けてあげたい 助けてやれない


 死にたくないんだ 誰かが言った

 死にたくないんだ 誰かが言った


 死にたくないんだ 誰かが言った

 死にたくないんだ 君が叫んだ

助けたいんだ 僕は叫んだ

助けたいんだ 僕は叫んだ


助けたいんだ 僕は走った

助けたいんだ 僕は走った


君は首を吊っていた。


君のルーズリーフには、

「ずっと好きだった」と、

震えた字で書いてあった…

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