表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔神が行く異世界大蹂躙  作者: 夜桜
六章 対決SSSランカー、アキレス皇国大魔闘祭編
76/82

酒と料理と酔っ払い

「ほう、中々美味いな」


「うむ」


「美味しいですね!」


「真、美味です……」


「美味し〜♪お代わり!」


「私も……」


「おいおい、あまり俺の財布にダメージを与え無いでくれよ……」


和人達は現在、ガレスのオススメである、「ブルームーン・アキレス」と言う、ちょっと洒落た店に来ている。

ここはアキレス皇国限定の店であり、扱う食材もアキレス皇国の近辺で取れる物ばかりだ。

例えば今、和人が頬張っているのは「スロウスボア」と言うCランクの魔物の肉であり、程良く付いた脂身と、食べ応えのある食感が癖になる。

また、ヴェルやカレンが食べているのは「美肌海月」と言うアキレス皇国近海の海から取れる全長50Cm程の高い美肌効果を持つクラゲを贅沢使った女性に大人気の食材もある。

そこそこ高級な店ではあるのだが、騎士団長をしているガレスの稼ぎなら十分に味わえるレベルであり、平民であっても偶になら味わえる。


「にしても本当に良い所だなここ。この値段でこのレベルの食事が出来るなんてな」


「そうだろ?俺も昔ここを発見してからは妻と子と月一で来てるんだぜ。うちの息子はここのハンバーグが大好物でな」


ガレスは少し酔っているのか、家族の事を自慢し始めた。


「思えばもう息子もう15か……今年、騎士団の入学試験を受けるんだよなぁ……」


「親馬鹿め」


この世界では一般的に15歳で成人を迎え、酒を飲む事が可能となる。その為和人も遠慮無く酒を煽っているのだが、どうやら魔神様は酒では酔わないらしい。

しまいにはどうでも良い愚痴を言い出したガレスの様子にはぁーっと溜め息を吐き、つまみとして頼んだ「ジェットスクワイド」と言うCランクのイカ系の魔物を頬張る。


「それでよ〜、俺は妻に言ったんだ『お前をもう二度と泣かせない。だから、結婚しよう!』ってよ〜。それで結婚したんだけど、今や俺が尻に敷かれてよぉ〜」


「そろそろ帰るぞお前等」


酔っ払い(ガレス)は放っておき、そろそろ帰ろうとする和人であったが、ここで一つ疑問に思う事がおきた。


(ん?やけに静かだな……)


この店に来てからそろそろ三時間程経つが、何時の間にか一緒に来てた筈のヴェル達の声が聞こえ無い事に気付いた。


「おい、やけに静かだがどうしたんーー」


疑問に思い振り返ると、そこには衝撃的な絵面があった。


「むぅ……ますたーはどこだぁ」


「んみゅー……かずとさまぁ……」


「かずとしゃまぁ〜……」


「zzz……」


「和人様……助けて……」


そこにはトローンとした表情のヴェルと、顔を上気させてうっとりした表情になったカレンと、だらしなく服を着崩したスミレが、全体重をミセバに預けるようにしてしなだれかかっていた。その隣ではローズが気持ち良さそうに熟睡している。


「ミセバ……大体想像は付くが、状況の説明を頼む」


和人は眉間を抑えながら三人を支えるミセバに問い掛ける。


「和人様がガレスに絡まれている時、ヴェルさんとカレンとスミレがお酒を飲んでしまいました……そしてこの状況になりました……ローズは……勝手に寝てました……」


何時もの無表情が嘘のように困った表情を作るミセバ。和人は思わずふらつき、近くにあった椅子に座り込んでしまった。


「はぁ……参ったな……まさかこいつらが酒に弱いとは……」


和人は仕方無い、と溜め息を吐き、周囲を見回す。どうやらちらほらいた客も帰ったようで、現在和人達以外には人がいない。この店の店員も今は他の客達が食べた食器を洗っているため、和人達の事を見ている人物は一人もいない。


「よし、レティとファルシオンに手伝って貰おう」


和人は手首に嵌めた黒薔薇の腕輪と、首に下げた金色の鍵に手を掛け、レティとファルシオンを呼ぶ。

黒薔薇の腕輪と金色の鍵は一瞬強烈な光を出したかと思うと、目の前に跪く二つの影が現れた。闇の世界神レディアと光の世界神ファルシオンだ。


「お呼びですか、和人様」


代表としてレティが問い掛ける。


「ああ、すまないがちょっと手伝って欲しい事があってな」


「何でもおっしゃって下さい和人様」


続いてファルシオンが言う。


「まぁ、そんな大した事じゃ無いんだが……」


和人は申し訳無い気持ちになりながらも、泥酔状態の三人を指差した。

レティとファルシオンはそちらの方を目で追い、そこにあった状況にうっ!と顔を顰める。


「あいつら運ぶの手伝ってくれない?」


「嘘でしょ……」


「えぇー……」


レティとファルシオンは如何にも嫌そうな顔になるも、和人の命とあればと不承不承であるが了承した。


「すまないな二人共。今度何か礼をするよ」


和人もこんな事に二人の力を借りる事に情け無い気持ちになるが、力はともかく、体格的に和人とミセバだけでは四人も運べ無い。


それぞれ和人はヴェルを、ミセバはローズを、レティはスミレを、ファルシオンはカレンを抱え、店の外に向かう。


「あ、ガレスはどうしようか……」


出口を潜る寸前、和人はふと思い出し、酔い潰れているガレスの方を見る。が、直ぐにまぁいいかと考え、そのまま店を出た。


***


「う、うーん……」


和人達が帰った数十分後、ガレスは徐に目を覚ました。


「あれ?俺何して……」


そこまで考えた所で意識が完全に覚醒し、酔い潰れる前の事を思い出した。


「ああ、和人達と飲んでたんだっけ……ってあれ?そう言えば和人達がいないな……」


そこまで考えが至ったところで、自身が突っ伏していた机の上に一枚のメモが残っている事に気付いた。


「これは?」


疑問に思い、拾い上げると、そこに書いてあった事に顔がどんどん青ざめて行く。


「マジかよ……」


メモの内容はこうだ。


『ガレスへ

俺達は一足先に帰る。約束通り飯は奢って貰うからな。伝票はこのメモの近くに置いておくのでよろしく。』


書かれた通り、近くには確かに伝票らしき物が伏せてあった。

ガレスはそれを恐る恐る取ると、思い切ってひっくり返した。そしてその金額を見て遂には再び気絶をしてしまった。

伝票に書かれた金額、銀貨六枚と大銅貨四枚。分かり易く日本円で明記すると6万4千円である。

ガレスの財布は犠牲となったのだ……


***


時は戻り、和人達が宿に着いた時の話である。


和人達は酔い潰れたヴェルとカレンとスミレに、ただ眠くなって寝てしまったローズを運び終え、借りている大部屋にて座り込んでいた。


「これからはヴェルとカレンとスミレには酒を飲ませ無いようにするぞ」


「賛成……」


「僕もあれはもう御免です……」


「珍しく気が合ったわね、ファルシオン……」


彼等の姿は明らかに憔悴しており、とてもじゃないがただ人を運んで来ただけとは思えない。


「まさか、こいつらが酒に弱いだけで無く、酒癖も悪いとはな….…」


そう、ヴェル達はただ酔っ払うだけで無く、酔っ払った状態で暴れるのだ。それらの一部始終がこちらである。


〜〜〜〜〜

〜〜


「ねーねーますたー」


「なんだ、ヴェル」


「えへへー好きー」


「うおっ!?」


「あーゔぇるさんだけずるいですよーかずとさまーわたしもお願いします」


「きゃっ、ちょ、暴れ無いでよ!」


「ぼくもぼくもー」


「ぐえっ、ちょっと首に締めないでー!」


「zzz」


「私も酔っ払えば和人様に……」


「勘弁してくれ……」


〜〜〜〜〜

〜〜


「あれは大変だった……」


「結局酔って眠るまでの間ずっとでしたからね……」


「僕なんて殺されかけましたよ……」


「すまんな……」


和人達がぐったりとしている横で、ヴェル達は気持ち良さそう寝ている。


「取り敢えず俺達も寝るか……本当は色々と話したかったが、悪い、俺はもう無理だ。それに明日も大会の続きがあるしな」


「和人様、一緒に寝る…….」


「僕達も疲れたんで帰りたいんですが……」


「神器に戻るのも辛いです……」


「そうだな……ならレティ、ファルシオン、お前達も今日はここで寝ればいい」


和人はそう言うといそいそと自分の分のベッドに入り込んでしまった。


「そうさせて頂きます……」


「和人様と同じ部屋で……私、もう死んでも良いわ……」


「和人様……」


ファルシオンは空いているベッドに入り込み、レティとミセバは当たり前のように和人の左右のベッドに入り込み、それぞれが眠りに就いた。


こうして夜は更けて行く。

気分転換に現在更新凍結している「Heaven&Hell Online」を少し書きたいと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ