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魔神が行く異世界大蹂躙  作者: 夜桜
六章 対決SSSランカー、アキレス皇国大魔闘祭編
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Aグループ 第八試合

テストとテスト疲れを取るための休憩でかなり遅くなりましたが、更新です。待たせてしまった皆様、本当にごめんなさいm(_ _)m

『さあ!盛り上がりの絶頂だが残念ながら本日は最後の試合です!選手はこの方!

我らがアキレス皇国騎士団団長ガレス・シュナイダー選手VS可愛らしい娘には棘がある!「薔薇姫」ことSランク冒険者キャロン選手!』


「何?ガレスだと?」


和人達は司会に呼ばれ舞台へと上がる人物に思わず反応を示す。


「おお、あれは確かにガレスじゃな」


「ガレスさん、この大会に出るなんて言って無かったですよね」


「私も聞き及んでおりませんね……」


「でもでも、ガレスって強いんでしょ?なら次のミセバの相手はガレスだよね!」


「ガレス……どう仕留めようか……」


物騒な事を呟き出したミセバの頭を和人は苦笑しながら撫でる。


「まぁガレスは強いだろうが、相手もこの大会に出る実力者だ。どうなるかはまだ分からんぞ。だからそんな物騒な事はこの闘いが終わったらにしろよ?」


「和人様……うん……!」


ミセバは和人に撫でられた所を嬉しそうに摩りながら可愛らしく頷いた。


「あー!ミセバいいないいなー!和人様、アタシも撫でてー!」


「ミセバ……あなどれぬな」


「うぅ……ミセバ羨ましい!」


「私も何か物騒な事を言えば……」


とたん、騒がしくなって来た和人達一行。、 だが、騒がしくさせた本人はと言うと


「ガレスの闘いか……面白そうだ」


ヴェル達を順番に撫でながらニヤリと笑う。とても手慣れているように見えるのはきっと気の所為では無いだろう。


順調にハーレムの主たる風格が身に付いて来た和人などお構い無しに本日の最後の試合の合図が鳴り響く。


ーーーーーーーーー


(ふぅ……やれやれだぜ……)


場所は魔闘祭の舞台。ガレスは憂鬱だった。と言うのも、元々ガレスはこの大会に参加する予定は無かった。和人達に大会の出場の許可が出たと伝えた日に、唐突に皇王たるアギエルにお前も大会に出ろと言われたのだ。しかも丁寧な事に、和人達に与える筈のシード枠が一つ余分にあった。そこでなるほど、元より皇王様は自分を大会に出場させるつもりだったのか、と内心溜め息を吐いた。

主たる皇王の命令に逆らえる筈も無いし、なによりガレスとしても大会には興味があった為、大会への参加を決めた。

実際大会に来てみて、やはり面白いとガレスは感じていた。

基本的に依頼でしか顔を会わせる事の無いSSランク冒険者や依頼でもあまり顔を会わせる機会の無いSSSランク冒険者の闘いを間近で見れたのだ。戦闘に通じる者としてこれ程刺激的な事は無い。


自分も早く闘いたい。


そう思いながら自分の名前が呼ばれるの今か今かと待っていた。

和人達にも自分が出る事は伝えて無いので、驚く彼等の姿を見たいと言う多少の悪戯心もあった。

だがそんなガレスの心を打ち砕く事が起こる。それは他ならぬ和人達一行のメンバーによって齎された。


(はぁ……なんだよ次の俺の対戦相手のミセバって言う娘は……)


ガレスは何十年も戦い続けて来たベテランの騎士だ。その為和人達の仲間であり、先程闘っていたローズやミセバ、ヴェルフェンの強さも朧気にだが分かる。

彼女達は他の参加者とは一線を成す強さを持っている。

この間、和人達が王城にやって来た時に見せた戦闘力の高さ。それは自分より確実に強いだろうと思わせるには十分であったが、今回の大会で彼女達の強さはまだ序の口だった言う事を思い知らされた。

例えこの試合に勝ったとしてもそんな彼女達の一人と闘わなければならないと言う現実に気分は自然と重くなる。


(戦う者としては強い相手との実践はとてもありがたいことなんだが、相手との実力差が余りにもあり過ぎると相手にならな過ぎて意味が無いんだよな……)


ガレスはそう思考しながら目の前に立つ扇情的な格好をした女性に視線をやる。


「うふっ、何かしらオジサマ?」


ガレスの前に立つ女性、キャロンは、ガレスの視線に気付くとその豊満な胸を見せ付けるような姿勢を取った。


薔薇姫と呼ばれるキャロンは、下着のような形状をした赤色の布で豊満な胸を覆い、同じく赤色のパレオのような物で腰を覆った獣人の女性であり、ウェーブのかかった髪の頂部に猫のような耳を付けている。パッと見だと水着のように見える。


「いや、何でもねぇ……始めるか」


ガレスは腰に帯びた長剣をスラリと抜き放った。水晶の如く澄み切ったその剣は銘を「青薔薇の剣」と言う。


「あら、オジサマは私の姿に何も感じなかったのかしら?」


キャロンはそんなガレスに少し驚いた表情を見せ、そして好戦的な笑みを浮かべた。


「楽しくなりそうね」


キャロンの戦闘方法は自身の肉体を武器とした色仕掛けである。自身の肢体を惜しげも無く晒し、動揺した相手の隙を素早く突く一撃必殺。それがキャロンの最も得意とする戦闘方法だ。

だが世の中にはそれが通用しない者も多い。魔物とかもその最たる例だ。その為キャロン自身の戦闘能力は比較的高い。

対人では色仕掛け、対魔物ではスピードを生かした高速戦闘。この二つの戦闘技術でキャロンはSランク冒険者まで上り詰めた。


「速いな……だが動きが単調だ!」


ガレスも頭を戦闘に切り替え、先手必勝とばかりに突っ込んで来たキャロンに冷静に対処する。


「っと……強いですねオジサマ」


キャロンは自身の喉元目掛けて一直線に振るわれた剣を自身の相棒たる短剣で軌道を逸らし回避した。


「油断するな!」


だがその時には既にガレスは次の動きに入っていた。

逸らされた剣の勢いを利用して迷い無くキャロンの間合いに大きく踏み込む。


「なっ!?」


キャロンはそんなガレスの突然の動きに驚き、咄嗟に後方に大きく跳躍して距離を取った。


「ほう、これを避けるか」


ガレスはキャロンに野性味溢れる笑みを向けながら言う。

他者から見ればガレスの表情はただの笑みだ。しかしそれを向けられる本人は突然身体を縛られているような感覚に陥った。


「う、く……」


それでも何とかその感覚を振り払い、短剣を握り直し、油断無くガレスの動きを観察する。


「ほう、これを断ち切るか」


ガレスは完全に戦闘モードになりキャロンに武器を向けた。

ガレスの二つ名は「青薔薇の静獣(ローズブル・ビースト)」。由来はガレスの持つ魔剣「青薔薇の剣」とガレス本人の戦い方から来ている。

ガレスの戦闘はとても激しく静かなものだ。

ガレスは戦場に出ると必ず先陣を切る。そして単騎で敵を何人も纏めて派手に吹き飛ばす。それは正に獣の如き荒々しさである。当然敵の意識はガレスに向く。そこにガレスの部下達が斬り込むのだ。


だがガレスの本領が発揮されるのはここからである。


ガレスの部下達が敵陣に斬り込むと同時にガレスは一瞬にして気配を極限まで消す。そして部下と争っている敵を意識の外から次々と倒して行く。それは余りにも静かであり、事前にガレスの戦い方を知っている部下でさえも一瞬では気付かない。ガレスが出る戦場は戦と呼ぶには余りにも静かに終焉を迎えるのだ。

そんなガレスのは一対一の戦いであっても相手はガレスを見失う。


「なっ!?消えた!?」


キャロンはたった一瞬前まで自身と武器を交えていたガレスが唐突に消えた事に大きく動揺した。その動きを捉えていたのは和人達とSSSランク冒険者のみであり、他のSSランク冒険者クラスの人々ですらガレスの姿を見失っていた。


「終わりだ小娘」


直後キャロンの右からガレスの声が聞こえた。

キャロンは咄嗟にその方向に向けて短剣を振るうが、何かを捉えた感覚は無い。そして次の瞬間には意識が暗転し、結界の外に倒れ込んだ。


「まだまだだな小娘よ」


『し、勝者ガレス選手‼︎』


状況が理解出来ていないが司会の仕事は忘れ無い。司会の声が会場に響き渡り、勝負の結界が伝えられた観客達から本日最も大きな歓声が浴びせられる。

その歓声を背にガレスはゆっくりと舞台を降りて行った。


ーーーーーーーーーー


「よう、ガレス。まさかお前まで試合に出ているとはな。さっき集まった時には気付かなかったよ」


試合が終わり、舞台を降りて来たガレスに和人達が声を掛ける。


「おう、和人か。いや、俺もお前達に伝えに行った後に皇王様に聞かされてな。まぁ戦闘に精通している者としてはこの大会への出場はありがたい事だと思ってな」


「ガレスよ、お主中々強いのぉ。お主ならSSSランク冒険者達ともそこそこ良い勝負が出来るのではないか?」


「ははっ天下のEXランク冒険者様にそう言って貰えるとは光栄だな。でもそうだな、俺としても腕には自信はあるがお前達には勝てる気が全くしねぇな」


ガレスは苦笑しながらそう言い放つ。


「あはは、確かに僕達としてもそう簡単には負けるつもりは無いですよ」


「真、その通りです。私達だって腕に自信を持つ者ですからね」


カレンの言葉にスミレが補足を加えて話す。その姿からは確かに自身に対する絶対的な自信を感じる。流石は覚醒済みの神獣達である。


「でもでもガレスはとーっても強かったよ!アタシも戦ってみたい!まぁ負ける気はしないけどね!アハッ☆」


「ガレス……潰す」


「いやいや、それ冗談になってねぇってそれ。と言うかミセバっつたか?潰すってのはやめてくれねぇか、マジでそうなりそうで怖いんだが……」


ガレスはミセバの潰す宣言に冷や汗を流しながら告げる。


「くくっ、御愁傷様だなガレス。骨は拾ってやるよ」


「おいおい、縁起でもねーこと言わないでくれよ和人……俺は次の試合の事を考えると今から腹が痛くなって来る」


ガレスは冗談混じりにそう言う。

向こうで司会が終了の宣言を行っているのを尻目に、和人達は和やかに会話を続ける。


「おっ、そうだお前達この後暇か?美味い飯屋を知ってるんだが、行かないか?」


「ほう、それは興味深い。ガレスの奢りな」


「いや、奢らないぞ?」


「ガレス、馳走になる」


「いや、だから……」


「ガレスさんご馳走様です!」


「え、あの……」


「それはありがたいですね。私もご小藩になります」


「いや、だから……」


「やったー!ガレスの奢りだー!」


「そもそもお前達の方が金あるだろ……」


「ガレス……今だけは仲間……」


「あの、話を……」


「よし、そうと決まれば早速行くぞ。ガレス、案内しろ」


「え、いや、ちょっと……」


慌てるガレスを置いて和人達は意気揚々と会場の外へと向かって歩き出す。


「マジかよ」


一人取り残されたガレスは呆然と呟き、はぁーっと溜息を吐く。


「おい、ガレスさっさとしろよ!俺達は腹減ったぞー!」


会場の出口付近で和人達の呼ぶ声が聞こえる。


「あー!もう分かったよ!奢りゃーいいんだろ奢ればよ!」


ガレスはもう一度はぁーっと大きく溜息を吐き、和人達のいる出口の方へ向けて歩みを進めた。


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