初依頼と今後の予定
なんかサブタイトルが雑になっちゃいましたが、そこは目を瞑って頂けると幸いです。
SSSと記されたギルドカードを受け取った俺は、応接室を後にしてギルドのクエストボードに向かった。その際好奇、畏怖、興味等の様々な視線を感じたが、俺が「話しかけるなよ」オーラを纏っていたため、話し掛けてくる者は居なかった。
俺は様々な視線を無視してクエストボードから一枚の依頼書を取り、受付けに向かう。
「これを頼む」
そう言って出された依頼書を確認した受付嬢(今はリルカがいないので名も知らぬ受付嬢だ)は、その瞬間顔を驚愕に染める。
「あ、あの…この依頼はSSSですよ…?失礼ですが貴方ではまだ……」
言い難そうに喋る受付嬢に苦笑しながらギルドカードを提出する。
訝しみながらもそれを確認した受付嬢は、再び誰が見ても分かる程に顔を驚愕に染めた。
「SSSランク⁉︎貴方は先程登録されたばかりですよね?特例での昇格の例は過去に幾つかありますが、い、いきなりSSSは異例です⁉︎一体何をなさったのですか⁉︎」
あからさまに動揺する受付嬢の声を聞いたギルドに残ってた冒険者達は一斉にこちらに顔を向け、近くの人と囁き合う。
「お、おい聞いたか⁉︎」
「あ、ああ…まさかこの目でSSSランカーを見れるとは…」
「てかあいつさっき登録したばかりだろ?何で一気に昇格出来るんだ?」
「それ相応の事したって事だろ…信じられねぇけど……」
「登録初日でSSSになるって、どんな偉業を達成したんだよ」
その様子を傍目に見て俺は大きく息を吐く。それを見た受付嬢は、自分が個人情報を勝手に暴露してしまった事に顔を青ざめさせ、必死に謝罪してくる。
「すいません!すいません!」
「ああ気にすんな。いずれバレるんだ、そもそも自分から言い触らす気は無いが、だからと言って隠す気も無い」
俺は適当に手を振りながら、謝罪する受付嬢に顔を上げる様に言う。
「で、さっさとこの依頼片付けて来るから受理しくれ」
「は、はい……はい受理しました。どうかお気を付けて。それと本当に申し訳ありませんでした」
俺は苦笑しながらそれに返事を返し、カウンターを後にする。
後に残ったのは今だに近くの人と囁き合ってる冒険者とカズトの担当をした受付嬢の安堵の表情だった。
***
「ここか……」
俺は今依頼でバルハム火山に来ている。依頼の内容はこうだ
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依頼場所:バルハム火山
内容:バルハム火山に住み着いたバハムートの討伐
難易度SSS
報酬:白金貨20枚
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依頼主は・・・誰だっけ?確か何処かの貴族だったと思うけど忘れた。
そもそも俺は人の名前を覚えるのは苦手だ。この世界に来てから覚えたのはレティとギルマスのシヴァと受付嬢のリルカの三人だ。そんな俺が一々会った事すら無い依頼主の名前を覚えてる訳無い。
「にしてもバハムートか…」
ーーバハムートーー
竜種の中でも特に凶暴な性格をしており、火山や鉱山等の高所に巣を構える。その獰猛さ故に人を見つけると問答無用で襲い掛かって来る。しかしその反面、他の竜種に比べ知能が低く、人の言葉を理解することは可能だが、発する事は出来ない。危険度SSS。
「なんともまあ、有名な魔物だな…」
付け足すと俺が今いるバルハム火山は徒歩で一週間、馬車では三日の道程になる。
・・・まあ俺が全力で走ったら3時間で着いたけど……
「金には困って無いが、暇だしな…シヴァが王都から帰ってくるとなると手続きとかもあるし少なくとも一ヶ月は後になるだろうし…近い内に魔界にでも行ってみるか…」
そう、この世界には一つの世界に二つの次元がある。人間達が住んでいる”アナザリア”そして魔人等の魔族が住む”魔界”この二つが存在している。
この二つの世界は同じ世界の別次元に存在する。
人間達が住んでる人間界と魔族が住んでる魔界は、遥か昔にあった大きな戦争以来、相互不可侵条約を結び互いに不干渉を貫いていた。
(それが最近きな臭くなって来てんだよなぁ……)
「神の知識」は神の記憶を全て把握する事が出来るスキルだ。それは俺の物になっても変わらない。その記憶に最近魔族の動きが活発になっているというものが追加された。どの神の記憶かは不明だが、それによると新たな魔王の誕生により、古の大戦を再び起こそうと企んでいるらしい。
前回の大戦で魔族側が勝利した際に、魔族側は「金輪際我らに関わるな」と言った条件を人間側に突き付け、人間側がそれを呑んだ事により終戦した。
しかし、今になって魔族側は人間との戦いを望んだ。なぜか?その理由は単純で、新たに誕生した魔王が人間を怨んでいるからだ。魔王曰く「人間側が我らの神を否定した」らしい。
どこで知ったかは分からないが、その新たに誕生した魔王は、レティを他の神々が共闘して陥れた事を知ったのだろう。
それを聞いた魔族達は、一人残らず憤った。何故かその魔王の言葉には何処か納得の行く部分があったのだ。
そして今、魔族達はその魔王を筆頭にした軍を編成し、それを強化しているらしい。人間界に再び攻め入る為に…
「こいつは荒れるよな…」
俺は「神の知識」に追加された内容を思い出し嘆息する。
この魔王と俺の意見は似ている。魔王は自分等の神を陥れた神々の信徒である人間を怨んでいる。そして俺は人間達が信仰している神々を殺したい。これは接触してみるしか無いだろう。
(話し合いで解決出来るのか分からないが、それはそれでいいだろう…寧ろ荒事の方が俺には向いてるしな…)
「グルルルァァァ‼︎」
「っと、考え事していたらいつのまにか獲物が目の前に」
まあさっきから気付いてたけどな。そもそもこんな全長15mもありそうなデカブツを見逃す事がありえない。
「さて、とさっさと帰りたいんで速攻で終わらしてもらうぞ」
「グルルルァァァァ‼︎」
バハムートは一声吼えると俺に向かって全力で突進して来た。常人ならこれで死んでいただろう。だが・・・
「おせぇ!」
俺は生憎常人じゃない。
俺は迫り来るバハムートに向かって詠唱破棄で魔法を発動させる。やろうと思えば無詠唱でもやれるが、唱えたのは気分だ。
「【無酸素領域】」
その瞬間バハムートは大きく背中を仰け反らせ、体をビクンビクンと痙攣させた後、泡を吹いてその生に幕を閉じた。
「まだヴェルズの方が強かったな…こいつSSSじゃなくてSSで十分だろ…」
俺はバハムートの死体を見下ろしそう呟く。
こいつを仕留めた魔法【無酸素領域】は文字通り相手の周囲から酸素を無くす魔法だ。これによって相手は呼吸が出来なくなり、その時取っていた行動によっては死に至る事もある。因みに今回は完全に相手の自爆だ。あんな激しく呼吸しながら俺の【無酸素領域】に突っ込むとは、本当に馬鹿だな……
俺は死んだバハムートを別空間に放り込んで山を降りる。
(明日か明後日にでも魔界に行ってみるとするか……)
余談だが、ギルドに戻ると当たり前だが依頼達成が早過ぎる事に突っ込まれた。なので仕方無くバハムートの死体を見せる事で納得して貰った。その際に見た俺を担当してた受付嬢の顔は見ものだったとだけ伝えよう。
なんかそのことで「瞬速の絶対者」とか言う二つ名をギルドに居た冒険者、受付嬢に付けられたが、害は無いしまあいいだろう。
俺は報酬を受け取りギルドを後にする。
因みにその際、旅支度をし終えたシヴァに
「これゃあまた派手にやったなガッハッハッハー!」
と笑われた。何故だ?
これにて一章終了です。次回からは二章に突入します。予定では魔界の話です。