新たなる可能性
遅れて申し訳ありません!短いですが投稿します!
「随分と多いな……」
魔闘祭当日、和人やヴェル達の姿は大会が行われる会場であるコロシアムにあった。
このコロシアムの存在は街に着いた時、直ぐに気付いたが、ここが魔闘祭の会場となる事は知らなかった。そのためガレスに聞くまで魔闘祭の存在を知らなかったのだ。
「確か予選は事前に行われているんじゃったな。ガレスの話によると私達を含めて12名が特別枠での出場になっておるらしいのぉ」
王城から帰ってから数日後、ガレスが無事枠を取れたと報告に来たのだ。その際本戦の三日前に予選があると言う事と、和人らの他にSSSランク冒険者五人が特別枠で出場する事が告げられた。
本戦は和人達とSSSランク冒険者の五人、それに予選を勝ち抜いた20人を加えた計32人でAグループ、Bグループにと別れて行われる。
「確かSSSランク冒険者達ですよね?僕達よりランク上だけど強いのかな?」
「いや、流石に人間では最強と言われているが、正直な話お前達の敵じゃないだろうな。精々他の奴等よりは面白い戦いが出来るって程度だ」
「つまり真の敵は身内……と言うわけですか。楽しみですね」
スミレが好戦的笑みを浮かべて呟く。早く新たな力を試してみたいのだろう。流石に神獣の姿になる事は禁止にしているが、強化された能力は人間形態でも十分に力を発揮する。
「それじゃあ和人様やヴェルさんとぶつかったからアウトだね☆でも楽しみ〜♪」
「同意……」
ローズもミセバもやる気は十分だ。ただし和人やヴェルに勝つ事は既に諦めているがそれには目を瞑るとしよう。
『大魔闘祭本戦出場者は集合場所に集まってください。繰り返します、大魔闘祭本戦出場者は集合場所に集まってください』
そうこうしているうちに音声を拡張する魔道具を通して本戦出場者の招集のアナウンスが流れる。
「いくか……」
和人達はそれに従い集合場所であるコロシアムの選手入場門に向かい歩きを進める。
「ん?」
集合場所に着いた和人達は、不意に睨み付けるような視線を多数感じたのでそちらを横目でチラリと見る。和人に一瞬遅れてヴェル達もその視線に気付いたのか和人と同じ場所を見る。
視線の主は和人より先に着いていたと思われる五人の男女。人間やエルフと思われる耳の長い者や獣人と思われる獣のような耳を持つ彼等は和人達が自分達の視線に気付いた事を確認すると、更に目に力を込めて睨み付けて来た。
(ふーん……あいつらがSSSランク冒険者か。確かに人間にしては凄まじい魔力だ)
和人はそんな視線を物ともせず冷静に相手を分析する。その様子にSSSランク冒険者は相手にもされていないと勘違いしたのか、最早威圧を含む視線を向けて来る。
(SSSランク冒険者の癖に感情に呑まれ過ぎだろ……)
「マスター……」
ヴェル達も同じ結論に至ったようで、言葉は無くてもその視線の意味は十分に伝わった。
「ああ、気付いている。情け無い奴等だ」
和人達は知らないが、彼等はこの世界の住人にしてはかなり理知的だ。ただ単純に自分達を差し置いてEXランク冒険者になった和人達が気に食わないだけで、視線も「自分達のような強者だって存在するんだぞ」と言う意味を含んだ軽い威圧程度の意味合いだ。しかし常人より遥かに鋭い感覚を持つ和人達にはこう言う意味に聞こえた。即ち「お前達より自分達の方が絶対に強い。調子に乗るな」と。これは完全に挑発にしか聞こえ無い。それ故和人もそれ相応の反応を返す。
「ただ睨まれるてるだけってのは、気持ちの良いものでは無いな」
そう呟き、和人は視線の先のSSSランク冒険者に和人からしたら本当に微量ではあるが威圧を飛ばす。一瞬だけ辺りの風が不自然な動きを見せた。
「「「「「‼︎⁉︎」」」」」
他の者達からみたら大した事の無いその事象。しかしその一瞬は彼等に激的な反応を齎した。
あの威圧は和人からしたらの微量である。しかし当然これに人間や獣人達が当て嵌まる筈も無い。
彼等は一瞬にして顔面を蒼白にしてバッと和人達から目を逸らす。
それに満足気に頷いた和人は、最早興味も無いとばかりにヴェル達との談笑に入る。
和人は腰に差してある「神喰らいの神剣」をそっと撫でて早く始まらないかなと内心心踊らせていた。
SSSランク冒険者side〜
「あれはやばいだろ……」
「うん、正直相手になるか分からないね……」
「ケリアルでもそう思うか……だが確かにあれは洒落にならんな……」
「ええ、彼相手に1秒と持たせられる自信無いわね……」
「ははっ、人類最強の冒険者とか言われてた俺が馬鹿みてぇだ」
上からフレイ、ケリアル、レイ、ユタネ、ケディラである。彼等はこの世界で最強の者達であった。それ故彼我の実力差をはっきりと分かっていた。自分達では束になったとしても間違い無く勝て無い、と。
「しかも、あのボウズと一緒にいた女達……あいつらもただものじゃねぇな……あのレベルの威圧でも全く動じてねぇ……」
和人が放った威圧は彼等SSSランク冒険者や、上位のSSランク冒険者クラスで無いと認識する事すら出来無い程の一瞬のものだった。それを彼女達は認識していても歯牙にもかけなかった。いくら仲間と言えどそれは異常であると言わざるを得ない。
「参ったわ……もしかして”あの力”を使わないと勝負にすらならないかもしれないわね……」
「ああ、出来れば使いたく無いな」
「でもどうせ一般人には分からないだろうし問題無くね?てか、そうでもしないとマジで今大会何も出来ずに終わるぞ」
「悔しいけどフレイの意見は的を射ているね。僕も”あの力”を解放するとするよ」
「そう、だな……確かに”あの力”を使えば勝て無いまでも、そこそこの勝負は見せられと思うが……」
そこまで言ってケディラが何か呻くような声を上げる。
「どうしたの?何時もの貴方らしく無いわね」
ユタネがケディラのその様子に怪訝そうな表情で尋ねる。
「いや、いくら良い勝負をするためと言ってもこんな大会で”あの方”の力を借りても良いのかなと思ってな……」
「ああ、なるほど……」
その言葉の意味に気付いたのか、ユタネまでも何かを考えるように目を瞑る。
「とにかく”あの力”の事は今は置いておこう。今は開会式を無事終わらす事だ」
そこにレイの声が割って入って来て二人の思考を止める。
ケディラとユタネは続々と集まって来ている他の選手達の姿を確認して一先ずは思考を止めて自分達の位置に戻って行く。その姿を見ている者がいる事に気付く事無く……
「あの力?あの方?……まさか、な……」
SSSランク冒険者達を見つめる少年、間上 和人はある可能性に考え至り、直ぐ様客席にいる筈のファルシオンとレディアに念話を入れる。
『ちょっと気になる事がある。お前達、SSSランク冒険者をよく観察しておけ』
『『了解しました』』
和人の言葉に肯定の意を示すファルシオンとレディア。それを確認した和人は満足気に頷き、念話を切る。
「この大会、思ったより楽しめそうだ……」
念話を切った和人は、この大会に期待を膨らませ、ニヤリと口角を上げて静かに本戦が始まるのを待つ。
今別の話を全話書き直しをしているのでこの小説の更新が暫く遅くなるかもしれません。書き直し終了次第この小説も進めて行きますので、それまでどうかよろしくお願いします




