SSSランク冒険者
アキレス皇国冒険者ギルド。そこは今とてつもない賑わいを見せていた。
「おいおい!久し振りじゃねーかケリアル!元気してたか!」
「僕は元気だよ〜。フレイの方こそ変わりないね。相変わらずぶん殴ってやりたくなる性格してるよ♪」
彼等はSSSランク冒険者【暴風】ケリアル・ゼフィルスと【炎の魔道王】フレイ・アルサム。
フレイはとても楽しそうに。ケリアルは毒を吐きながらだが嫌がる素振り無く話している。誰から見ても二人が仲良しだと言う事がよく分かる光景だ。
そんな彼等を相変わらずだなと言った表情で見守る人物が二人。同じくSSSランク冒険者【雷帝】レイ・ボルトと【魔剣舞姫】ユタネ・ブレイズである。
「まったく……本当あの二人は仲良いわね」
「だな。だがまああいつらは同い年で同じ村出身の幼馴染だ、大目に見てやろう。あいつらもお互いSSSランクになった所為であっちこっちに引っ張りだこだから中々会う機会も無いだろうしな」
そう言ってレイは手に持っている酒の入ったコップを一息で飲み干して追加の注文をした。
「貴方は貴方で真昼間から酒何て飲んで大丈夫なの?」
「俺の酒の強さはお嬢も良く知っているだろ?こんくらい飲んだ内にならないね」
そんな風に何処か楽し気な雰囲気を醸し出す冒険者のカリスマ達に偶然ギルドに居合わせた冒険者達は尊敬の眼差しを向けていた。
「すげぇ……本物の【炎の魔道王】だ……」
「しかも一緒にいるのは【暴風】だぜ……すげぇショットだよ」
「【雷帝】様……なんて逞しいお体なのかしら……」
「【魔剣舞姫】様は本当にお美しい!私もあんな魅力的な女性になりたいわ〜」
「【炎の魔道王】と【雷帝】と【魔剣舞姫】の三人はここに来る途中バハムート狩って来たらしいぜ!」
「マジか!すげぇ!」
そんな言葉が行き交うが、最早慣れてしまっているSSSランク冒険者達は全てスルーして自分のしている事に集中する。
そんな中ギルドの扉が開く音がして、中に居た冒険者達はそれに向かい一斉に振り返る。こんな大物が勢揃いしているのだからそれも仕方が無いだろう。しかし、振り返った先に居た人物を見てまた声を上げる。
「お、おい!【覇王】だぞ!」
「なに⁉︎【覇王】だと⁉︎」
「マジかよ!SSSランク最強の男じゃねーか!」
「【覇王】が来たって事は今ここでSSSランク冒険者勢揃いじゃない!」
「今年の魔闘祭もかなりの見ものね!」
そんな声に出迎えられるた男は、真っ直ぐにフレイ、ケリアル、レイ、ユタネが集まっている席に近付いて行き、微笑みを浮かべながら彼等に喋り掛けた。
「よぉ、久し振りだなてめーら。相変わらず馬鹿騒ぎしてんだな。変わりないようで残念だぜ」
「あら?そう言う貴方は少し老けたかしら?」
「ははっ!相変わらず口の悪いじーさんだなアンタ!」
「僕は去年よりかなり強くなったけどね〜。今年はその汚い口に剣をぶち込んであげるよ♪」
「久し振りだなケディラ。早速だが酒でも飲むか?」
【覇王】ケディラ・フォーゼルは旧友達のそんな反応に楽しそうに笑いながら席に付く。
「ねーちゃん酒樽一つと五人分の……いやレイはもう飲んでるから四人分のコップをくれ」
「ひ、ひゃい!分かりました!ただちに!」
急に声を掛けられたウェイトレスの女性はテンパりながらも言われた物を取りにギルドの奥に引っ込んで行った。
「ははっ、面白えねーちゃんだなー」
ケディラは呑気そうにしながら旧友達の方に向き直る。
「あら?奢ってくれるのかしら?」
「ああ。ここは最年長者として俺が奢ってやるよ。感謝しな」
ケディラは鷹揚に頷き、ドヤッと表現するのが適切だろう表情で皆を見る。
「あら太っ腹ね。ありがとう」
「マジか!ヒャッハー!やったなケリアル!」
「と言ってもここの酒樽程度、大した額じゃないけどね。でも感謝はしてあげる♪」
「おっ?俺にも奢ってくれるのか?」
「ど、どうぞ〜」
そうこうしているうちに先程のウェイトレスが酒樽を持って、よろよろと皆が集まる席に近付いて来た。
「おう、ありがとな」
ケディラはウェイトレスが運んで来た酒樽を難なく片手で受け取り、一緒に持って来て貰ったコップをそれぞれに配って酒を煽り始める。
「で?最近の調子はどうよ?」
「そうね、依頼でベヒモスが出たとか言うのがあったからSSランク冒険者数名と組んで討伐したわね。大きいだけのノロマな奴なんて私からしたらいい的よ。正直一人でも余裕だったわね」
「俺は大した事はしてないな。強いて言うなら下級竜の巣があったから殲滅したって程度だ。終わった直後に怒り狂った上級竜がいきなり襲って来たのには少々驚いたけどな……ぷはぁー!酒が美味い。」
「俺はこの前古代竜の若竜クラスを倒したぜ!あいつ、硬くて大変だったな〜」
「僕は最近は依頼を受けて無いから特に無いな〜。フラフラと旅してた♪」
そしてSSSランク冒険者達は酒を煽りながらこれまでの武勇伝を語り出す。それはどれも一般の冒険者からしたら雲の上の出来事であり、皆一様に聞き耳を立てつつSSSランク冒険者達に尊敬の眼差しを送る。だが、その冒険者達のうちの一人が発した言葉にSSSランク冒険者達は激的反応を見せる。
「すげぇ……危険度SSSランクの魔物やAランクの魔物の群れがあっさりと倒されてるじゃねーか……」
「やっぱりSSSランク冒険者は格が違うな……」
「そういやこんな話知ってるか?【瞬速の絶対者】や【竜姫】がソロでデスピナスと火竜の番を倒したらしいぜ」
「マジかよ⁉︎デスピナスって災害級上位だろ?あんな化け物ソロで倒せるのかよ⁉︎」
「と言うか【竜姫】って誰の事?」
「ん?知らないのか?【瞬速の絶対者】のつれの超綺麗なねーちゃんで、つい最近2人目のEXランク冒険者になったやつだよ。戦い方がドラゴンのように荒々しく美しいって事で【竜姫】って言う二つ名が付いたらしいぜ」
「EXランク冒険者がそんなポンポン誕生していいの……?」
「それ相応の事をしたって事だろ?信じらんねぇけど」
【瞬速の絶対者】、【竜姫】その名が出た瞬間SSSランク冒険者達の酒を煽る手がピタリと止まった。そして次の瞬間には膨大な威圧感が彼等から迸り、周囲で騒いでいた冒険者達は皆一斉にその威圧感に気圧されフリーズした。
「EXランク冒険者……そう言えば今回の大会には彼等は出るのかしらね?」
ユタネの声は決して大きくは無かった。しかしその声はシーンと静まり返っているギルドに確かに響き渡った。そしてその声に含まれる闘争心を感じて他の冒険者達はタラリと冷や汗を流した。
「俺様等を差し置いてEXランクになった奴等か……面白そうじゃねーか」
「噂では【瞬速の絶対者】ってまだガキなんだろ?どんな奴だろうな」
「【竜姫】……初めて聞く名前だ♪何時の間にEXランク冒険者になったんだろ?」
「どちらにせよ大会に出るのなら嫌でも会う事になるだろうよ。その時を楽しみにしておくとしよう」
SSSランク冒険者達は皆一様に獰猛な笑みを浮かべてまだ見ぬ強敵に思いを馳せながら酒を煽る。
だが一週間後の大会の日、彼等は知る事になるだろう。自分達が今ここで話していたEXランク冒険者の実力を。そして知るだろう。SSSランクと言うとてつも無く高い壁を超えたEXランク冒険者と言う者の存在を………
「そう言えば以前、こんな事があったんだーー。あれは旅で海を渡ってる時の事なんだけどーーーー」
まだEXランク冒険者の事を知らないSSSランク冒険者はこの日、それぞれの身に起こった出来事を夜通し話し合った。




