決意
今話の最後の方は砂糖を吐くくらいの甘々です。
12月25日、大幅改稿しました。
「ただいま戻りましたー」
和人達が泊まっているブレイアルの街の宿にそんな声が響いた。
「おかえり……」
「おかえりなさい」
「おかえりー☆」
依頼から帰って来たカレンは、真っ先に和人達の待つ精霊の安らぎ亭に戻った。とにかく和人に会いたかった。会って自分の事を褒めて貰いたかった。
「あれ?皆もう帰ってたの?依頼お疲れ様。和人様とヴェルさんは?」
部屋に入るとそこには昔からの仲間である神獣達だけがいた。
カレンは自分を迎えてくれた神獣仲間達を労いつつ、和人達の居場所を聞く。
「和人様達は現在出掛けているようですね。それに私達も先程戻ったばかりです。偶然とは真奇怪な物です」
そんなカレンの質問に神獣達を代表してスミレが答える。それによるとどうやらスミレ、ローズ、ミセバが帰って来たのは誤差はあっても皆同じく今日らしい。
「そっかぁ……分かったありがと。でも待ってる間暇だし皆で依頼の話でもしない?」
それを聞いて一瞬残念そうな表情を作るカレンだったが、待ってれば帰って来るだろうと判断し、直ぐに切り替えして提案をする。
「そう言えばカレンが帰って来るまでその話はしてませんでしたね。では私からお話します」
そうしてカレンの提案通り、皆はそれぞれの依頼の様子を話しだした。
「私が行った場所は……………」
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依頼の様子の話も終わりに近付き、いよいよカレンの番となった時、不意に部屋の扉が開いた。
「お、皆戻ったか。これで全員だな」
「うむ、皆良くぞ無事で戻ってくれたの」
「和人様、彼女達は?」
「いやー流石和人様です」
和人とヴェルは部屋に入るなり、カレンが帰っていることに気付き、声を掛ける。そこには和人、ヴェルの他に二人の男女ーー光の世界神ファルシオンと、闇の世界神レディアがいた。
「和人様、ヴェルさん、ただいま戻りました。依頼は問題無く達成出来ました!……ところでそちらのお二人はどなでしょうか?かなりの実力者だとは思うのですが……」
カレンは和人、ヴェルの二人に満面の笑みで帰還の報告をするが、直ぐにその後ろの二人と、二人から感じる圧力に気付き、若干の警戒心を露わにしてそう問う。それは他の神獣達も同じようで、ファルシオン達から感じる強者の雰囲気に警戒を強める。それに反応して、ファルシオンとレティも警戒心を露わにして、お互い睨み合う。
「うむ、お疲れじゃ。この二人については後ほど説明してやる」
「ああ、ヴェルの言う通りだ。ファルシオン、レティ、お前等も睨み返すな。
っと……どうやらカレン、お前は新たな力を手に入れたようだな。魔力と魔力の純度が大幅に上がっているぞ」
ヴェルと和人の言葉にまだ警戒心は解かないが、一先ずはと頷く神獣達とファルシオン達であったが、カレンは和人の言葉で一瞬にして目を見開く。
「一目で分かるなんて……やっぱり和人様は凄いですね」
「ん?どう言う事じゃ?」
思わずと言った感じでそう答えるカレンを見て、和人とカレンの言葉の意図が分からないと首を傾げるヴェルと神獣達。それはファルシオン達も同様で、その視線は和人達に説明を求めているのが直ぐ分かる。
「ああ、ヴェルには話したと思うが俺はお前等にとある可能性を感じていた。その事を先ずは伝えておこう。こいつらの事はその後でな」
和人の可能性を感じていたと言う言葉にピクリと反応する神獣達。その頬は僅かに赤くなっている。やはり好きな人に期待されているのは嬉しいのだろう。それを見たレティが何故か焦った表情をしていたが……
「その可能性とはお前等にも以前話した、歴史上数回確認されている神獣とお前等の関係性だ」
神獣達もそれには覚えがあるらしく、うんうんと頷いている。
「俺はそれをお前達と同一人物だと思っているんだ。何故ならお前達に以前聞いた他の神獣はいるのか?と言う質問にお前等はいないと答えたからだ」
「ち、ちょっと待って!何でそれだけでアタシ達と同一人物ってなるの?まったく覚えが無いよ!」
和人の言葉に思わず質問するローズ。
ローズの言葉使いにピクリと反応を示すファルシオンとレティだったが、和人とヴェルがその事を指摘しないので特に何かを言うことは無かった。
「ああ、それも説明する。ま、それは簡単だ。それにはこの前の依頼の報酬でヴェルが貰った武器、応龍の剣が大きく関わっている」
ローズの質問に対して和人はローズの頭を撫でながらそう答える。ローズはとても気持ち良さそうにしており、それを見た他の皆は羨ましそうにしていた。
「あの剣には何故かカレンと同じような魔力が流れていた。でもそれはカレン自身では絶対に気付けない程綺麗にカレンにマッチしていた。……それでもカレン自身、応龍の剣には何かを感じていたようだがな。ま、ここからは口で説明するより実際見せた方が楽だろう」
和人は女性陣から浴びせられる視線に気付く事無く、空間魔法を発動させた。
「ここは俺が創り出した世界。何も無いけど広さだけはある」
そこはアナザリアととても酷似しているが全ての物が逆になっている世界。
「まぁ見ての通りアナザリアをイメージしてあるが、ここには俺とお前等しかいないし、建物など一個も無い。当然生き物も俺達以外存在していない。それに見ての通り上下逆さまだ。細かく創る事は可能なんだが、今はこれで十分だろ。
さてカレン、早速だがお前の新たな力を見せてくれ」
和人の言葉にカレンは頷き、応龍の姿となって空へ飛び立つ。そして応龍の剣を自らの額に突き立てた。
「カレン!何してるの⁉︎」
「早まってはいけません!」
「死んじゃだめ……」
その様子にスミレ達が悲壮の声を上げて静止する。まあしかしミセバの言葉はあってもなくてもどうせ聞こえて無いのだから意味が無いと思わないでもないが。
閑話休題
「お前等、落ち着け。別にカレンは自害をしようとしているわじゃない」
和人の言葉に漸く落ち着きを取り戻すスミレ、ローズ、ミセバの三人。そして改めて上空のカレンに視線をやる。そこには既に驚き不安等無く、皆和人の言った事を信じているようだ。それにはファルシオンとレティの二人も思わずと言った風に感心を示す。
「行きます!」
カレンのその声と共にカレンの体からは物理的圧力を持つ膨大な魔力が迸り、スミレ、ローズ、ミセバは思わずと言った感じで膝を付く。
ファルシオンとレティの二人も、膝を着く程では無かったが、その表情には驚愕がありありと浮かび上がっていた。
流石にヴェルはそこまででは無いが、その表情は微かにファルシオンと同じく驚愕が浮かんでいた。今この魔力の中を平然としているのは和人ただ一人であり、その和人もこれほどまでに強くなるのかと内心おどろいていた。
その魔力は人間形態でのヴェルの出せる本気と同等であり、竜形態のヴェルともそこそこまともに打ち合える程である。
「ここまでだとは、な……」
「うむ、この魔力……この姿の私と同等かもしれんな……」
「僕達も和人様達の前では霞むけど、かなりの強い筈なんだけど……」
「その私達と同等とは……驚きました……和人様、彼女達は一体何者なのですか?」
そこに現れた氷応龍ニブルヘイムこと覚醒応龍に対し、和人とヴェルは素直な感想を述べる。しかし、ファルシオンとレティにはそこまでの余裕が無く、冷や汗を流しながらそう話す。
「和人様、これが私の新たな力です。……もっとも和人様はとっくに気付いていたようですが……」
覚醒応龍は和人にそう問い、それに対する和人の返答はイタズラが成功した少年のよう笑みだけであった。もっともカレンにしてみればそれだけでも十分答えが伝わる物であったが。
「カ、カレン、その姿は?」
余りの威圧感に呻きながらもスミレは皆を代表してカレンにそう問い掛ける。それに反応してスミレ達の方に向き直ったカレンに、今のカレンの威圧感と同等の威圧感が飛んできて、お互いの威圧感を打ち消し合った。
「おいおい……カレン、お前はどうやらまだその姿を使えこなせてないようだな?仲間にそんな威圧感をぶつけてどうする」
何処か呆れたような声だが、そこにはとても暖かい何かが含まれており、スミレ、ローズ、ミセバは無意識にその声の主を見やる。
「大丈夫かお前等?……あれが俺がさっき言った言葉の真相だ。恐らく応龍の剣は元々カレンの体の一部だった物だ。そしてそれを落とした際にこの姿に関する記憶がそっちに着いて行ってしまったんだろう。あの受付嬢が言ってた事が本当ならお前等が真の姿になるための鍵も応龍の剣みたいな形で何処かにあるんだろうな」
和人の説明に神獣達は自分達もカレンと同じ力を得られるかもしれないと言う事に感動し、さらにそうすれば和人の為にもなると考えて皆やる気を出す。
「和人様!アタシ達もカレンみたいに強くなってもっともーっと和人様の役に立つね!」
「私も和人様の為に全力で尽力致す所存です」
「私も皆と同じ……」
カレンの真の強さを目の当たりにした他の神獣達は、自分も和人の為にと決意を口にして上空のカレンを仰ぎ見る。
「僕もこの力でもっと和人様のお役に立てるように頑張ります!」
そう言いながら元の姿に戻るカレン。そして和人達の目の前に着地するすると、徐に和人の唇に静かにキスをした。
「⁉︎」
「あー!カレン抜け駆けだ!」
「流石にこれは許しませんよ」
「カレン……ずるい……」
「まさか彼女達も……」
「やっぱりのぅ」
上から和人、ローズ、スミレ、ミセバ、レティ、ヴェルだ。
和人は不意の出来事に驚き声も出せず、ローズ達とレティはカレンを羨まし気な、ヴェルはカレン達の気持ちに気付いていたらしく、やはりなと言う反応をそれぞれしていた。
「へへっこれからも宜しくお願いします和人様!」
そう言ってカレンは来る時に和人が作った空間の亀裂を通り元の世界に戻って行った。
「マスター、起きないかマスター!」
カレンが去った後、ヴェルは呆然とする和人を起こしてあげた。
「ん?あーヴェルか……すまん、ビックリしちまっててな……」
「何を今更。カレン達の気持ち等出会ったその日に気付いていたわ。マスターが鈍感なんじゃよ」
ヴェルはクスクスと笑いながら和人の唇に優しいキスをする。
「私は構わんよ?そもそもこの世界は一夫多妻制じゃし、何も問題あるまい?」
ヴェルは和人の唇から離れながら何か話し合っている三人の神獣達と、少し離れた所でファルシオンに八つ当たりしているレティを見てクスリと笑う。
「勿論私が一番にじゃがな」
そう言って再度和人にキスをする。今度は舌も入れて、だ。
「ヴェル……」
そんな恋人に対して和人は優しく頭を撫でてやり、自分の舌もヴェルと絡ませる。
何かを話し合っていた神獣達はその後カレンを追うようにこの世界から出て行く。世界神の二人も、邪魔はしてはいけないと判断したのか、大人しく自らの神器の中に戻って行った。ファルシオンは多分力尽きたからだろうが……
次の日、何故か和人はやつれていてヴェルはツヤツヤしていたとか。何があったかはご想像にお任せしよう。
おまけ
「僕なにやってんだよ〜!」
「和人様にき、キスとか〜〜〜////」
カレンは一人ベッドの上でゴロゴロと恥ずかしさに悶えていた。そしてそれはスミレ達が戻って来るまで永遠と続いたそうな。
おまけ2
「もうっ!あの娘達は何なのよ〜〜〜!」
「ちょっ、レディ、やめ、痛い痛い!あ、それはそっちに曲がらn……ぎゃーーーーーー⁉︎⁉︎」
和人が便利だからと言って創ってあげた、神器の中にいる状態でもお互い会うことの可能な空間内にて、レティの怒りの声とファルシオンの悲鳴が長時間響き渡ったとか。
おまけ2で出てきた神器の中にいる状態でもお互い会うことの可能な空間は今後も出る予定です。
感想・ご指摘是非お待ちしています。




