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魔神が行く異世界大蹂躙  作者: 夜桜
五章 神獣大激突編
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ローズの依頼

今回はローズだけです。

秘境の洞窟。ここらは、洞窟全体に何らかの特殊な魔力が通っており、和人でさえ中に転移することが出来ない。

そこに住み着く魔物達は、どれも凶暴な性格をしており、獲物を見付けると脇目も振らずに襲い掛かって来る。


「ガルム〜♪ガルム〜♪」


そんな危険な場所に見るからに場違いな少女が鼻歌を歌いながらスキップで進んでいる。

その少女は言うまでもなくローズだ。


ローズは両手に付けた爪をブンブン振り回しながら襲い掛かって来る凶悪な魔物達を意図も容易く屠って行く。

この武器は和人から貰った物で、魔物を攻撃する際、手首に付けたアイテムボックスを自由に発動させる事が出来る。つまりこれは攻撃した際魔物が生き絶えておれば、そのまま別空間に放り込めると言う訳だ。

スピードファイターのローズは、スピードを緩める事を嫌う。その為、常に動き続けながら倒した魔物アイテムボックスに放り込める爪は、自分の長所を活かせる最高の武器なのだ。


「和人様がくれたこの武器凄〜い♪らっくらくらっくらく♪」


そんな明るい声を出しながら魔物を切り裂く姿はとてもシュールである。身体を染める魔物の返り血もそれに拍車を掛けており、シュール差倍増だ。

しかし、そんなローズの余裕も、直ぐに消え失せる事となる。


「むっ?何かいやーな気配……」


ローズが今いるのは秘境の洞窟の真ん中辺りであり、かつての高ランク冒険者が探索出来た限界地点である。

ローズが感じた嫌な気配は、和人が懸念していた事態を起こした。


「ヴォォォォオ‼︎」


洞窟の奥から現れたのは7つの頭に7本の角、7つの目を持つ化け物。


「キリム?」


ローズは首を傾げながらその異形な生物の名を呟やいた。


「ヴォォォォン‼︎」


「まさかこんな所でキリムに遭遇するなんて……ついてな……っ⁉︎」


キリムは、7つ目を一斉にローズに向けて、次の瞬間には一瞬前までローズがいた場所に現れ、7本の角を振り抜いていた。

咄嗟に後方にバックステップする事でキリムの角を回避したローズは、和人から貰った爪を構えて戦闘態勢を取る。


キリムは獲物を捉えた感触が無かった事に首を傾げ、辺りをキョロキョロと見回していた。そこにローズは極限まで気配を消して忍びより、急所への一撃で倒そうと試みるが、野生の本能でか、ローズが爪を振り下ろす瞬間に咄嗟に前方へ跳躍し、着地と同時にローズの方に体を向けて威嚇をする。


「まさかこれが避けられるなんて……自信無くしちゃうな〜……」


あくまで口調は普段通りだが、その声音には微かな動揺が混じっている。


「ヴォウ‼︎」


キリムは単純な身体能力では勝て無い事を悟り、戦闘方法を変えて来た。

キリムは7つの目をそれぞれ別の方向に動かし、その内一つに捉えた場所に向けて跳躍をした。


「何するつもり?」


ローズは何かが来ると思い、跳躍したキリムの方に視線を向け、驚愕した。


「嘘でしょ……」


キリムは7つの目をフルに使い、次々と壁から壁へ、壁から天井へと立体的に動きながら襲い掛かって来る。


「うわっ!」


流石のローズでもこの動きは読めず、急に背後から飛び掛かって来たキリムに自ら転ぶ事で何とか回避する。


「めんどくさいなー。だから災害級以上の魔物は嫌いなんだよねー」


そう、キリムは災害級の魔物であり、今回の目的のガルムより圧倒的強者なのだ。

では何故キリムでは無くガルムの討伐依頼だったのか。その理由は単純だ。それは依頼者が遭遇して帰って来れたのはガルムだけであったからだ。運悪くキリムと遭遇してしまった人間は例外無く殺されてしまっている。殺されているのなら依頼する事等出来る筈が無い。その結果この場所にはガルムより危険なキリムが存在しているにも関わらず、そのキリムはずっと放置されてしまっているのだ。


「でも、こいつなら和人様へのお土産になるかも!」


そう言う考えが頭に過った瞬間、ローズの体は光に包まれた。そしてそれが晴れた時、その場にいたのはキリムより巨大な体躯と九つの尾を持つ狐であった。その体毛は白に近い黄色であり、その狐がローズだと言う事はそれだけで分かる。


「ヴォ……」


本来の姿となったローズから迸る威圧感に、流石のキリムも怯み、立体的な動きを一瞬止めてしまった。


「隙ありー!」


そんな絶好の隙を見逃すローズでは無く、その一瞬の内に自前の強靭な足で地面を蹴り、キリムの背後に回り込んだ。そしてそのまま速度を緩めずキリムを地面に叩き付けて抑え込む。そして九つの尾の二本に強大な魔力が込め始める。その尾からは、青と黄色二色の炎が放たれ、それらは抑え込まれて何もする事の出来ないキリムに吸い込まれるようにしてぶつけられる。


「ヴォ?ヴォォォ⁉︎」


しかしその攻撃を受けたキリムには傷一つ無く、その事に疑問の声を上げるが、次の瞬間には自らの身体に起きた異変に気付いて悲鳴のような声上げる。


「青い炎は魔力を奪い、黄色の炎は体力を奪う。和人様にはこれ以上の攻撃しても効かなかったけど、君にはこの程度でも十分効くよね♪」


やがてキリムの暴れる力は弱くなり、そしてそのまま生き絶えた。体力が奪われたら動く事が出来ず、魔力が奪われたら生命を維持出来ない。これは全ての生物に当てはまる物であり、この法則から外れられる物は存在しない。


「しゅーりょー♪次こそガルム見付けるぞー!」


キリムを別空間に放り込み、元の人型に戻って改めてガルムを探す始めるローズ。何故態々人型に戻るかと言うと、九尾の姿のままだと全ての魔物が逃げてしまうのでガルムを見付けるどころじゃ無くなってしまうからだ。その為、人型になる事はとても重要な事なのである。

しかしこの辺りは先程の戦闘で殆どの魔物が逃げてしまっているので、結局は移動をしなければならない。


「うーん……ガルムはSSランクの魔物だからもうちょっと入り口の方かなー?」


秘境の洞窟は最深部まで到達されていない。つまりガルムが目撃されたのはもっと入り口付近だと想像出来る。

結果、その判断は正解だった。


「ウオオオン!」


洞窟を更に歩く事数時間、ローズは遂にガルムを発見する事が出来た。


「アハッ☆みーつけた♪」


ガルムは狼に近い姿をしており、顔には四つの真っ赤な目が輝き、一目見るだけで獰猛な性格だと判断出来る。どうやらガルムは狩りをしていたようで、ローズが見付けた時は、鋭い牙が丁度獲物を捉えた瞬間だった。


「食事中かー。ま、関係無いけどねー」


そう呟きガルムに向かって爪を振り下ろす。


「ウオン⁉︎」


ガルムはギリギリで気付き、咄嗟に回避するが、完全には回避する事が出来ず、肩に当たる部分に深く爪が食い込んだ。


「まだまだー!」


それを確認したローズは、そのまま肩を抉るように爪を引き抜き、こちらを威嚇するガルムに向かって無邪気な笑顔で飛び掛かる。

ガルムもただやられるだけでなく、流石はSSランクと言ったレベルの反撃をして来るが、やはり神獣たるローズには敵わず、どんどんと生傷を増やして行く。最早胸元は自らの血と先程仕留めた魔物の血で真っ赤に染まってしまっている。


「トドメだー!」


そして遂にローズの爪がガルムの脳天を捉え、ガルムの意識を永遠の暗闇へと落とす。


「依頼達成!ブイブイ♪」


満面の笑顔でピースをするローズは、傍から見ると年相応の無邪気な少女と言った印象を抱かせる。ただし魔物の返り血を大量に浴びていなければ、だ。


「かーえろーっと。和人様アタシの事褒めてくれるかなー?」


そう言いながらローズは可愛らしい笑顔を浮かべたまま洞窟の外へ向かって歩き出した。

次回はカレンの依頼風景です。その後和人視点に戻ります。

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