和人達の休日
今回も短めです。
また、少し報告がありますので、あとがきを確認下さい。
「じゃあ俺は帰る。昨日も言った通り帰りは自力な」
「はい、ありがとうございます。では行って来ます」
和人は神獣達をそれぞれ依頼場所付近に転移させた後は、ブレイアルの街の宿に戻り、ヴェルとこの街を散策する事になっている。
因みにカレン達のランクを上げさせる為に受けさせた依頼で、またもや受付嬢や偶然ギルドにいた冒険者達が盛大に顔を引き攣らせるという事があったが特にそれを気にする事は無かった。
「ただいま」
「おっ!マスターお帰りなさい。全員の転移は終わったのか?」
「ああ、たった今最後にカレンを転移させて来た。まったく……めんどくさかったぜ……んじゃ早速行こうぜヴェル」
和人はカレン達を運ぶ際、先ず彼女達を門から外に出し、街から見えなくなるのを確認した後、転移でカレン達の所に跳び、そこから更にそれぞれの依頼先の近くまで転移させた。そのため、かなりの手間がかかったのだ。
「ふふっ、お疲れ様じゃ。この街の散策楽しみじゃのう」
ブレイアルの街はアキレス皇国の領地の中でも、特に治安が良いのもあり、和人のような冒険者から、他所の国の貴族や商人まで幅広い層に人気がある。その為、特にイベントが無い時でもかなりの人数がこの街にやって来ており、常に活気に満ちている。
「お、あれ美味しそうだな。買ってみないか?」
「そうじゃの。私も気になるし買っておこうかの」
歩く事数十分、二人は串に何らかの肉が付いた物を売っている屋台を見つけ、それに興味を示した。
「親父、その美味そうなやつ二本買おう」
「おうよ!二本で銅貨2枚だ」
「おっと、生憎銅貨を持ち合わせて無くってな。銀貨で頼む」
「はいよ。銀貨1枚から銅貨2枚を引いて……ほれ、大銅貨9枚に銅貨8枚だ。にしても兄ちゃん、そんな可愛い嬢ちゃん連れてる何て羨ましいねぇ。ほれ、こいつはサービスだ」
そう言って屋台の親父は和人が買った物と同じ物を二本追加してくれた。
「いいのか?」
「遠慮すんな!若者はたくさん食ってたくさん寝る!それが一番の仕事だ」
和人は屋台の親父に礼を言ってヴェルと串焼きを二本ずつ持ちながら通りを進んで行く。
「なぁヴェル。あいつらはどんな魔物狩って来ると思う?」
「そうじゃなぁ……確かカレン以外全員SSランクの依頼を受けたんじゃったな……」
「ああ、本当は全員にSSSランクとかを受けさせたかったんだが、生憎SSSランクの依頼が一個しか無かったからな。しかもその依頼の内容はカレンが一番合ってたし」
と、二人は普通の冒険者が聞いたら卒倒しそうな話を他愛も無い話のようにして盛り上がっている。
「確かミセバが危険度SSランクの魔の海域で、そこに住み着いたリヴァイアサンの討伐で、ローズが同じく危険度SSランクの秘境の洞窟で、ガルムって名前の魔物の討伐だったかな。んで、スミレが危険度SSSの死滅平原の入り口付近に住み着いたシームルグとか言うSランクモンスターの群れの殲滅、そんでカレンが危険度SSSランクの竜の谷って言うドラゴン系統の魔物が多種多様に生息する場所でゲオルギウスとか言う災害級のモンスターの討伐だったな」
「ふむ、魔の海域は場所によっては災害級や天災級が生息するが大丈夫かの?それにリヴァイアサンも個体によっては災害級相当にもなるらしいしの」
魔の海域はSSランクと指定されているが、中心部に近くなればなるほどランクが上がり、最終的には絶望級になると言われている。それなのに何故SSランク程度に指定されているかと言うと、そこまで行って帰って来れた者が一人もいないからだ。帰って来れていその場所の危険度が分かる筈も無い。
また、リヴァイアサンも長く生きた個体は100mを超えて、一つ動く度に大津波を起こす程になる事もある。それ故の心配だったが、和人は大丈夫だと頷いて、その根拠を述べる。
「その心配は無い。転移した時ついでにそれらの様子を見て来たんだが、リヴァイアサンが生息しているのはまだ入り口の方だった。それにリヴァイアサン自体もまだ生まれて十数年程度だったからな。ま、ミセバなら天災級くらいまでなら何とかなるだろう。それよりも俺は秘境の洞窟に行ったローズと竜の谷へ行ったカレンが心配だ。スミレの依頼ははっきり言って他の奴等より圧倒的に楽だから心配はいらんがな」
和人の言葉に首を傾げるヴェル。どうやら何故ローズとカレンが心配なのかが分からないようだ。
「ローズが行った秘境の洞窟は洞窟全体に特殊な魔力が通っていて中への転移や中からの転移が出来ない。しかも秘境の洞窟の最深部に辿り着いた人もいないから何があるか分からないんだ。
そんでもって、カレンが行った竜の谷はSSSランク以上のドラゴンが普通に住み着いている。それに今回の討伐対象のゲオルギウスのような災害級や場合によっちゃ天災級のドラゴンも生息している。
ゲオルギウスは同じ災害級でも俺が倒したデスピナスよりは格下だし、そもそもカレンがそう簡単にやられるとは思わないが、最も危険なのは確かだ」
「成る程……だが手を貸すことは無いんじゃろ?」
「ああ……今回行かせたのはあいつらのランクアップして貰いたいってのが理由だが、それと同時にあいつらの真の実力を知るってのもある。それに、俺の仮説が正しければあいつらにはとある可能性がある。それを確かめるのが今回の依頼の一番の目的だ」
そう言って和人は応龍の剣とジェシカ達に聞いた未確認の神獣の話を頭に浮かべた。
「さて、ここでこう話していても仕方無い。とにかく街を回ろうぜ。っと……それならファルシオンやレティも呼ぶか。てかそういやまだカレン達にこいつら紹介してねぇな。帰って来たら紹介するか」
「うむ、良い考えじゃな。ファルシオンとレティも喜ぶじゃろ。にしてもマスターは素晴らしいが、たまに抜けてるところがあるのぉ」
まぁ、それがまた可愛いらしくて愛しいんじゃがと続けるヴェルに、少し照れてしまい、それを誤魔化すかのように首に下げてある鍵と左手に付けてある黒薔薇の腕輪からファルシオンとレディアを呼び出した。
「お呼びですか?和人様」
「お久し振りです和人様」
「よお、今回呼んだのは単純に一緒に街でも歩かないか?と思ってな」
現れた金髪碧眼のイケメンファルシオンと黒髪美少女のレディアに和人は二人に一緒に歩かないかと持ち掛ける。
「おお!それはありがたいです!僕、実は人間達の街に興味あったんです!」
「和人様から直々に誘われるなど光栄至極。是非ご一緒させて下さい」
ファルシオンはとても嬉しそうに、レディアはチラリとヴェルの方を見てそれぞれ返事をした。
因みに二人を呼び出した場所はブレイアルの街上空である。アクセサリーから人が現れる光景など、傍から見たら卒倒ものだからだ。これは路地裏とかでも良かったのだが、ゴロツキとかがいそうだったので、この空中を選択したのだ。
「なら、早速行くか。下に降りる時は人に見られるなよ?」
「了解じゃ」
「はい」
「勿論です」
和人達は人の目に見えない速度で地上に降り、何事も無かったかのように歩き出した。
次回はスミレ、ミセバの依頼です。
えー……報告ですが、テスト一週間前の期間に入ってしまったので、更新頻度が暫く落ちます。ですが、私は絶対この作品を完成させるので、皆様どうかお付き合い下さい。




